医療と介護、「いろいろな連携がある」 ── 外来の議論で池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

2023年11月10日の総会

 令和6年度の診療報酬改定に向けて、かかりつけ医機能の評価などについて論点が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は外来管理加算の廃止を求める意見に「全面的に反対」としたほか、サービス担当者会議への参加義務付けに対して「いろいろな連携があるので画一的ではいけない」と理解を求めた。

 厚労省は11月10日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第563回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「外来(その3)」と題する資料を提示。改正医療法の施行を視野に入れながら「書面を用いた説明」など、かかりつけ医機能の評価に関わる論点を挙げた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
.

01スライド_129_外来(その3)
02スライド_130_外来(その3)

【池端幸彦副会長の発言要旨】
 松本委員が主張する外来管理加算の廃止について、長年の経緯を踏まえ私はショックを受けた。これは本当に根幹に関わる問題であり、全面的に反対をさせていただきたい。
 さらに、主治医と介護支援専門員の連携に関しても、これまで述べてきた通り、また松本委員も指摘した通り、非常に重要だと考えている。今回は同時改定であるため、その重要性はさらに高まる。46ページの調査結果によると、介護支援専門員は、約4割の利用者について、主治医意見書を取得した医師に対しケアプランを提示している。逆に言うと、6割が提示していないことになる。さらに、提示された4割の中で、主治医に活用されていないと感じる割合がさらに4割であることから、全体の16%が主治医の対応に不満を抱いていることになる。この点について、逆に考えると、ケアマネジャーは、ケアプランをより積極的に作成し、全てのケアプランに対して主治医からの意見書を求めるべきであると考えている。
 私は以前、県のケアマネ協会の会長を務め、また県医師会の介護保険担当理事も務めた経験がある。医師会では「ケアマネが連携してくれない」との不満があり、「ケアマネ協会の会長を務めているなら、もっときちんと言うべきだ」との指摘を受けたことがある。一方で、ケアマネ協会からは「かかりつけの先生が対応してくれない」という声も上がっている。このように、お互いを責め合っている状況は一部に限られるが、連携しているところも多いため、歩み寄りが必要である。
 サービス担当者会議には私自身も参加しているが、その参加の義務化には絶対に反対である。主治医意見書に関しては、患者の状態が安定している場合には、電話1本で済むこともあり、「前のサービスでいい」と判断されることもある。しかし、初めて、あるいは入院後に介護プランを受ける場合は、担当者会議を開き、主治医、薬剤師、サービス担当者が全員集まって協議することが必要である。
 実際には文書、電話、ファクスなど多様な手段を駆使し、連携を図っている。しかし、これを全て義務化すると、医師は追いつかず、担当者会議の設定も大変である。私は自院の会議室を提供したり、訪問診療の場を活用して担当者会議を開催しているが、日程調整が難しい。したがって、様々なツールを使用しながら連携を深めることは否定しないが、義務化することには現場がついていけない状況であると考えている。
 文書に関する議論もあった。全ての文書を義務化すると、画一的な文書が作成され、単にサインをもらって終わるような状況になる可能性がある。重要なのは、外来での懇切丁寧な説明を通じて患者からの了解を得ることであり、必要に応じて書面を用いることである。文書を出すことが全てではないという理解を求める。
 地域包括診療料についても意見がある。これはかかりつけ医機能の重要な診療料であり、200床未満の病院もかかりつけ医機能を担うことにより算定できるようになっている。しかし、その要件として「院外処方を行う場合は24時間開局薬局であること」という要件で義務化されており、これが影響しているかもしれない。
 52ページによると、令和3年度時点で地域包括診療料を算定している病院は全国でわずか48病院である。これは24時間開局薬局が非常に少ないためではないか。そこで事務局に質問したい。全国にどれくらいの24時間開局薬局があるのか、その数字が把握されていれば教えてほしい。
 24時間連携が重要なのは理解しているが、かかりつけ医機能としても重要なことが十分に認識されるべきである。現在、私の在支病で行っている24時間連携は、実際には夜間や休日に対応する際、薬局に依存することは少ない。緊急時に必要な薬は院内で常備しており、実際に開局している薬局に依頼するケースは非常に少ない。
 前回の総会でも指摘したように、薬局が開局せずとも連携し、地域内のどこかの薬局と協力することで、在支病やかかりつけ医機能は十分に発揮できると考えている。訪問診療の場合も同様であり、緊急時の呼び出しや訪問看護に対応し、院内処方や事前の準備で対応することが多い。
 そのため、24時間開局がかかりつけ医機能に求められる条件としては、多少の齟齬があると感じている。より柔軟な対応が必要ではないか。そのような対応により、診療所と在支病が連携し、かかりつけ医機能を発揮することが可能になる。24時間開局薬局が少ない現状を鑑みれば、この点についての緩和もぜひ検討していただきたい。
 医師とケアマネジャーの連携方法に関して、支払側の委員から「どのような方法があるのか提案してほしい」との意見があったので、一例を挙げたい。ほかの都道府県も同様だと思うが、ケアマネ協会と医師会が合同で研修会を開催することがある。以前も指摘したが、実際にはお互いに一部で連携が取れていないと責め合っているが、大部分では連携が進んでいる。特に回復期の病院や診療所では介護との連携が不可欠であり、医療だけでは対応できないケースが多いため、進んできている。ただ、それが100%になっているかと言われれば、そうではない。もっと頑張りましょうという面がある。改善の余地がある。
 福井県の例を挙げると、ケアマネは自分の担当者が入院した場合、3日以内に病院に情報を提供することがほぼ義務化されている。このルールに基づき、現在約80%から90%のケアマネが全ての病院と連携し、それに対する返答も行われている。このような形で連携は進んできている。
 ただ、懸念していることがある。患者がかかりつけ医と思っている医師が、実は手術を行った主治医であり、その医師が退院時に主治医意見書を書く場合でも、その情報がなかなか伝わらない現状がある。本来であれば、地域の医師にバトンタッチし、そこでかかりつけ医としてケアマネジャーと連携するのが合理的だが、基幹病院や手術を行った病院の医師がかかりつけ医であると患者が認識している場合、その連携が難しくなっている。これが進展しない一因ではないかと感じており、この点を報告しておきたい。

.
【厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長】
 24時間開局という面で、これを厳密に規定した診療報酬項目はない。そのため、これが全国でいくつあるかという詳細な数を私どもは把握していない。今、池端委員がおっしゃったような、例えば薬局の報酬の中で24時間連携して対応していうような、報酬上の届出があるようなものであれば把握できるので今後、議論を深める中で提示させていただきたい。

.

入院時の食費、「一刻も早く手を打って」

 この日の総会では、入院時の食費に関する論点も示された。「食材費等の高騰を踏まえた対応を行う観点から、入院時の食費の見直しについてどのように考えるか」としている。
.

03スライド_009_食費

.

 池端副会長は「高齢者が増えている病院の実態を考え、一刻も早く手を打っていただきたい」と要望した。

【池端幸彦副会長の発言要旨】
 入院時の食費に関して、長島委員と同様の意見を病院団体として述べたい。長島委員が指摘した通り、食事療養費が30年近く上昇していないのは、これまでの取り組みに疑問を感じざるを得ない。昨日の医療保険部会でも同様の意見が出された。実は病院団体としても、これまでの改定ごとに、この点を訴えてきた。
 しかし、様々な理由から、この問題に対処していただけなかった。今回は、長年の要望を何とか実現してほしいと強く求める。
 資料にもある通り、食事は病院での治療の重要な一部であり、特に高齢者が増える中で、どれだけ食べてもらえるか、バランスの良い食事を提供できるかが重要だ。新鮮な卵、魚、野菜の使用が可能かどうかが大きな要素となる。現状では、冷凍食品への移行が進んでおり、食事を提供する企業も急に撤退するケースが見られる。このような状況下で、高齢者が増えている病院の実態を考え、一刻も早く手を打っていただきたい。もちろん診療報酬による手当ても重要だが、それまでのつなぎとして様々な対策を講じることも含め、速やかな対応を望む。これが病院側の現状であるので、ご理解をいただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


« »