慢性期医療におけるチーム医療とは

役員メッセージ

 急性期から回復期、慢性期、在宅へと切れ目のない医療連携を目指すとき、多くの職種のチームワークが重要になってきます。
 
 特に、「入口」と「出口」をつなぐ中間地点ともいえる慢性期医療では、いかに医療スタッフが連携して、きめ細かなサービスを提供できるかがカギを握ります。

 社会福祉法人・平成福祉会理事長で、日本慢性期医療協会の医療保険委員会委員長を務める伊豆敦子氏は、「より質の高い慢性期医療を目指すには各人の専門性の向上が必要だ」と指摘した上で、こう述べています。

 「チーム医療を考えるときに、ジャズのコンボを想像する。いろいろな管楽器を演奏する中でも、一人ひとりのパートはきちんと聴き分けられる。そして時には前に出てソロを吹く。各職員がそれぞれの専門性を磨き、自分の役割を果たすとともに、全体のリズムは常に合わせて演奏は調和している」

 今年7月、札幌市内で開かれた「第19回日本慢性期医療学会」を振り返り、伊豆氏がJMC77号に寄稿した「慢性期医療におけるチーム医療(多職種連携)を考える」をご紹介します。
 

チーム医療はジャズコンボ。
各自専門性を磨き自分の役割を果たし、全体の調和を

 

 慢性期医療では、亜急性期、回復期、維持期、終末期、在宅医療と幅広い病態に適切に対処することが求められている。

 そのためには医療的治療だけでなく、リハビリテーション・看護・介護・薬剤・栄養などの多方面からのサポートが必要である。

 慢性期医療の総合的な力を高め、効率よくきめ細やかなサービスを提供するには多職種協働のチーム医療をどのように推進するかが極めて重要な課題といえる。

 本シンポジウムでは看護・薬剤・MSW・栄養それぞれの立場から、現場の第一線でご活躍の先生方の発表をいただいた。今後のさらなる超高齢化で「慢性期医療における患者中心のチーム医療」のあり方をより具体的に検討していきたい。
 

■ 講演
 

 1. 「患者様の思いを多職種につなげる」 服部紀美子氏(北海道・定山渓病院副院長)

 服部氏はこれまで、神戸・浜松・大阪大会にて看護・介護委員会による看護・介護の相互役割分担と連携について積極的に取り組まれてきた経緯がある。今年の4月からは定山渓病院の副院長となり、多職種を束ねる要として、さらにチーム医療に取り組まれている。今回の発表では、患者様の一番身近で働く看護・介護の立場からの貴重な意見を述べられている。

 慢性期医療では複数の疾患で日常生活支援が必要な患者様が多く、さらに急性期病院で生命危機を脱した後の継続治療を必要とする患者様に対して、医療と看護・介護が提供できる入院施設としてその役割は幅広い。そのためにまず、多職種間の緊密な連携の必要性を訴えた。

 連携を深めるためのツールは多職種が参加するカンファレンス(以下、カンファ)である。定山渓病院での入院から退院の流れは入院調整会議から始まる。入院当日の多職種(医師・看護師・介護職・リハ・MSW・栄養士・薬剤師)による入院時合同評価。入院10日前後に行う初回カンファ、中間カンファ、終末期の患者様へのターミナルケアカンファ、そして、残念ながら死亡された患者様に対しては退院後14日以内に死亡カンファを行っている。

 カンファでは各職種が参加し、報告のみに終わらずお互いの意見を確認し、話し合うことがチーム医療に必要であり、検討の場としての役割が最も重要であると強調された。

 次に最も患者様の身近にいる看護・介護職は患者様やご家族と信頼関係を築きやすく、そこから得られる患者様の情報は多い。多職種にもその情報を伝え、信頼関係の輪を広げてスタッフと患者様のパートナーシップ、看護・介護の質を向上させ、患者様に安心を提供することが必要であるという骨子であった。

 最後には、チームを構成する上で個々の専門性とチームとしての専門性を高めることが重要で、具体的な看護・介護の現場での実践的教育内容も紹介された。
 

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