かかりつけ医の機能を幅広く、面で支える ── 外来医療の議論で池端副会長

審議会 役員メッセージ

第547回中医協総会(2023年6月21日)

 令和6年度の診療報酬改定に向けて外来医療について議論した厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「1人医師の診療所だけで、かかりつけ医機能を担うのは難しい地域もある」と指摘した上で「中小病院と連携して展開できるように、かかりつけ医の機能を幅広く、地域密着型の病院の機能も使いながら面で支えられるように検討すべき」と提案した。

 厚労省は6月21日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第547回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「外来(その1)」と題する資料を提示。最終ページに論点を挙げ、「どのように考えるか」と意見を求めた。池端副会長は、かかりつけ医機能やオンライン診療について見解を述べた。
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131_【総-8】外来について(その1)_2023年6月21日の中医協総会

【池端幸彦副会長の発言要旨】
 かかりつけ医機能を含めた外来の機能分化の点とオンライン診療を含めた医療DXについて意見を述べる。今回は概要の説明だったので全体を通じた大きな視点で述べたい。 
 まず、かかりつけ医機能については、骨太の方針でも示されているように非常に重要な観点だとは思うが、地域差もある。本日、かかりつけ医機能に関する診療報酬項目が紹介されたが、これらを1人医師の診療所だけで全て担うのは難しい地域も多いと思う。
 そのため、地域包括ケア病棟を有する中小病院や在宅療養支援病院などと連携し、多職種ともコラボレーションできるような機能を展開することが現実に適しているのではないか。診療所と病院の機能は決してバッティングするものではない。例えば、週末の土日だけ病院にお願いする方法もあるし、そうすることで病院勤務医の働き方改革にも寄与すると思う。すなわち、中小病院と連携してかかりつけ医機能が展開できるように、かかりつけ医の機能を幅広く、地域密着型の病院の機能も使いながら面で支えられるような観点で診療報酬上の対応を検討していただきたい。
 一方で、外来の機能分化に関しては、地域医療構想上の資料等にも示されているように、今後2040年に向けて、入院はそれぞれ地域、医療圏ごとに多少の増減は見られると思うが、外来は多くの医療圏で減少するという推計が出ている。
 しかし、患者さんが減っていくときこそチャンスだと私は思っている。基幹病院等の外来患者はまだまだ多い。大学病院等で受診することがステータスのように感じている人がいる。そこでどうするか。本当に機能にあった分化ができるかを考えるチャンスである。今後、紹介受診重点医療機関等をさらに広げていくことも必要である。紹介患者をさらに増やす。
 現在、診療所の外来も減っている。「自分たちもしっかり診ていこう」「特長を出していこう」と考える機会である。黙っていたら患者さんが減っていく時代。お互いに連携し、協力し合う関係をつくる必要がある。そういう意味で、私はチャンスととらえ、ぜひ外来の機能分化をさらに進める方向性を打ち出していただければいいと思っている。
 続いてオンライン診療について述べる。私はオンライン診療を決して否定するつもりはない。今回のコロナ禍で一定の機能を果たしたと評価している。
 ただし、オンライン診療はあくまでも診療の選択肢の幅を広げる1つだ。ここに全てを持っていくことで医療費を削減すべきだという考えでオンライン診療を進めると、少し違った方向に歪んでしまうのではないか。もちろん、オンライン診療を便利だと感じる方々に対しては提供する。一方、やはり対面がいいと思う方々に対しては、しっかりとした対面の診療もできる体制を維持していくことが必要ではないかと思っている。 
 医療DXの良さは、安心・安全な医療の推進や効率化、そして働き方改革にもつながる点である。こういう医療DXの利点は非常に重要だと思うので、そこは大きく広げていかなければいけない。
 ただし、繰り返しになるが、医療費削減に直結するということだけを考えて医療DXを進めていこうとすると歪んでくる。結果として医療費が削減することはやぶさかではないが、医療DXの目的を間違ってしまうと変な方向性に進んでしまう気がするので、その辺はしっかり考慮した上で今後の議論を進めてほしい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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