介護施設等との連携などで見解 ── 中医協分科会で井川副会長

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20231005入院外来分科会

 令和6年度の診療報酬改定に向けて調査結果などを踏まえて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は、急性期病棟等における人員体制の在り方や介護施設等との連携などについて見解を示した。

 厚労省は10月5日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和5年度第9回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。

 今回のテーマは、作業班の最終報告のほか、令和5年度調査結果(速報)の報告など5項目。急性期入院医療(その4)では、重症度、医療・看護必要度や急性期病棟等における人員体制などが課題に挙がった。
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議事次第

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 井川副会長は、議題3「急性期入院医療(その4)」と議題5「令和5年度調査結果(速報)概要」について意見を述べた。詳しくは以下のとおり。

■ 急性期入院医療(その4)について
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 急性期病棟における入院体制の在り方に関する点で述べる。現状、高齢者がどんどん増えている。入院患者の要介護度が少しずつ上がっている観点から、介護をすることと看護をすることは、ある程度分けて考えるべきだろう考えている。
 例えば、同じ患者の体位交換をするにしても、看護師2人でするよりも介護士と看護師の2人ですれば残りの看護師は効率的に看護の仕事がしっかりできるので、そういう体制を構築する必要がある。50対1や75対1などでなく、25対1程度の看護補助者の配置を加えていけば、看護師は看護師の仕事ができるのではないか。
 ところで、先ほど「認知症高齢者に身体抑制してまで回復期病棟でリハビリをするぐらいであれば、むしろ老健でゆっくりと生活リハを進めたほうが効果的」との発言があった。これについてコメントしたい。 
 回復期リハビリ病棟で身体的拘束を考えなければならない1つの大きな問題は、それが非可逆性と言うか、リバーシブルかどうかであることだと思う。例えば、回リハ病棟に来られる方々は急性期で非常にタイトな治療を受けられた後、回リハに移ってこられるので、せん妄などの症状がみられることも多い。そういう方に関して言えば、やはり回リハ病棟で、多少はそういう拘束があったとしても、短期間でリハビリをしてあげるほうが遥かにADLは上がる。その上で、在宅復帰を目指すことになる。こうした患者を介護施設等に移行させると、そこから歩行訓練までいけるのだろうか。なかなか厳しいのではないか。
 そう考えると、寝たきり患者が増えている中で、さらなる悪影響を及ぼす恐れがあるので、そうした問題についても考えておく必要があるだろう。

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■ 令和5年度調査結果(速報)概要について
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 令和5年度調査項目の3番目「地域包括ケア病棟入院料及び回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響(その2)」について意見を述べる。
 資料43ページ(介護保険施設等との連携に係る状況)によれば、緊急時の往診による対応は特に地域包括ケア病棟・病室2において対応できない施設が多かった。地域包括ケア病棟・病室を有する医療機関における介護保険施設等に関する連携の実施体制は、介護保険施設からの電話等による相談への対応はほとんどの病棟で可能とされているが、緊急時の往診には対応できない医療機関が非常に多い。往診となると、医師1名が出ていくことになるので、医師の追加配置が必要になる。今後、医師の働き方改革等が進むと、夜間の当直時間帯に「急に来てほしい」と言われても対応できず、さらに厳しい状況になるだろう。
 44ページに、在宅療養支援病院等における介護保険施設等に関する連携の実施体制が示されている。必須であるはずの機能強化型でも70%程度しか往診が実施できていない。これが現実だろう。往診のために1名の医師を加配するのは厳しい。
 軽症高齢者の救急搬送等の課題については、全てあわせて検討していくべき問題だと考えている。私たちのグループに所属する26病院のうち18病院、約7割が在支病をとっている。そのうち、地域包括ケア病棟を有するのが10病院、それ以外の病院は回復期リハビリ病棟や医療療養病棟である。ほとんどの医療療養病棟は同一法人内で、時には近隣の介護施設等に頼まれて、電話相談などを実施している。往診は無理だが、外来受診は受け付けている。入院患者のうちの5分の1程度は、そうしたところから入ってこられる。
 高齢者救急の問題には、マルチモビディティ、介護の側面、社会性などがある。一人暮らしだから帰れない。そういうことも含めると、一般急性期や地域包括ケア病棟というふうに、ある程度、限定した病棟で解決すべき問題ではなく、全ての医療機関が考えて積極的に取り組んでいかなければいけない。例えば、療養病床に、どの程度、各施設から直接入棟するのかなど、そういう調査をした上で評価を与えることも検討する必要がある。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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