「レカネマブはまさに試金石になる」── 費用対効果評価の部会で池端副会長

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2023年10月4日の費用対効果

 市場規模が1,500億円を超えると見込まれる高額な医薬品の取扱いについて審議した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は認知症の新薬による介護費用への影響の分析が難しいことに理解を示しながらも、「費用対効果がどう反映できるか、レカネマブはまさに試金石になる」と述べた。

 厚労省は10月4日、中央社会保険医療協議会(中医協)費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東京大学大学院経済学研究科教授)の第65回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「費用対効果評価制度の見直しに関する検討(その2)」と題する資料を提示。その中で、①価格調整の対象範囲のあり方、②介護費用の取扱い、③レカネマブに係る検討──の3項目について論点を挙げ、委員の意見を聴いた。

 このうち③については、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の薬価収載に向けて、まず中医協の部会等で検討する方針が決まったことを受け、「介護費用の軽減に係るデータの取扱い」などを論点に挙げた。

 池端副会長は介護費用の分析との関係を中心に意見を述べた。詳しくは以下のとおり。

【池端幸彦副会長】
 論点に沿って述べる。まず23ページ(価格調整の対象範囲のあり方に係る論点)については、費用対効果評価の「評価範囲」と「価格調整範囲」が一致していないことには私も違和感がある。評価を終了した28品目における価格調整率が示されているが、費用対効果が一定程度、評価されたとみなされれば当然、こういう方向で進めるべきではないか。
 今後、高額医薬品がどんどん上市されていく中で、費用対効果の制度は非常に重くなってきていると思う。費用対効果評価制度が十分な効果を発揮するためにも、価格調整範囲の見直しは必要ではないか。論点に示された方向性には賛同したい。
 次に、介護費用の分析の取扱いに係る論点について。介護費用の分析はなかなか難しいということは前回の部会で説明があった。確かに、まだ分析するにはデータ等が不足しているという意見もあるので、今後もさらなる検討が必要であると思う。
 そういう意味で、これから費用対効果がどう反映できるか、レカネマブはまさに試金石になるものではないかと思っている。先ほどご説明があったように、日本には介護DBという比較的、正確な評価対象になるデータもある。それを上手に使える方法があれば使っていただきながら、このレカネマブに対して、少し長期にわたるかもしれないが、費用対効果を追跡調査すべきである。これは費用対効果制度において介護費用に対する評価が可能かどうかを見定める意味でも非常に重要ではないか。少し実験的な評価になる可能性があるかもしれないが、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい。その意味で、薬価専門部会との合同部会はぜひ開いていただきたい。
 そこで、レカネマブの使用が開始されたときに、例えば最適使用推進ガイドラインを踏まえて使用した場合における介護のフォローアップデータが取れるように何かをリストアップすることなどは可能だろうか。これは前回も少しお尋ねしたと思うが、費用対効果評価専門部会としての取り組みとして、そうしたことが可能なのかをお聞かせいただきたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・木下栄作室長】
 現行の費用対効果の分析にあたっては、企業から提出された資料、データ等に基づいて行うということで、事務局でデータ等を先に用意して迎えるという枠組みになっていないという現状もあるので、今後、費用対効果を行うにあたって事務局側で研究なり調査なりを立てるということは現行の枠組みからすると相当程度、難しいと考えている。
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【池端幸彦副会長】
 例えば、レカネマブを使用する場合に、要介護度等の推移について公的機関から情報をいただくことを使用するための条件にするなど、そういうことは将来的に可能だろうか。
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【厚労省保険局医療課・安川孝志薬剤管理官】
 収載の際に、どういったところまで求めるかというところは限界があると思う。われわれとしても、この品目に関して全例調査などの話があるのは、あくまでも薬事のほうの視点、有効性・安全性の観点から、さまざまなことを調査しなさいということは義務付けられている。それは法律に基づく承認条件だが、あくまで有効性・安全性の観点なので、「別の切り口でこの調査も」という話は、さすがに難しいと思っている。
 ただ一方で、保険収載の中にどこまで求めるについては、おそらく、そういったところの実現可能性などもあるので、なかなか多くのものを求めるというところで難易度の高さはあると思う。ケースバイケースで判断するしかないと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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