介護の負担軽減、「同時進行で分析を」 ─── 認知症新薬の議論で池端副会長

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2023年9月27日の総会

 アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の薬価収載に向けて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「最終的に介護費用、介護負担がどれだけ減ったかが一番のアウトカム」との認識を示した上で、薬価収載後に「同時進行で分析ができないか」と提案した。

 厚労省は9月27日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第556回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「高額医薬品(認知症薬)に対する対応」と題する資料を提示。レカネマブの市場規模が年間1,500億円以上になる見通しなどを説明した上で「介護費用の分析の取扱い」などを部会で検討する方針を示し、了承を得た。
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017_高額医薬品(認知症薬)に対する対応_2023年9月27日の総会 のコピー

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エビデンスに近いものを持ちながら議論を

 費用対効果評価専門部会の委員を務める池端副会長は、部会での議論を振り返りながら「介護費用の分析は非常に難しいが、唯一、この薬に関しては介護費用の分析がとても重要なポイントになるのではないか」と指摘した。

 その上で、池端副会長は「レカネマブを使用した群と使えなかった群では介護費用がどのように変わるかをプロスペクティブにスタディができないか。そういうことが可能なのか」と尋ねた。厚労省の担当者は「いささか難しい」と慎重な姿勢を示した。

 そこで、公益委員である安川文朗委員(京都女子大学データサイエンス学部教授)が発言。「今、池端委員がおっしゃったプロスペクトなことができると一番いい。きちんとしたエビデンスに近いものをわれわれが持ちながら議論をしていければ、池端委員がおっしゃっているようなことにもつながる」と述べた。

 池端副会長の発言要旨等は以下のとおり。

【池端幸彦副会長】
 17ページの論点については特に異論はないので、この方向で進めていただきたい。その上で、費用対効果に関する意見と質問を述べる。
 前回の費用対効果部会でも議論になったが、介護費用の分析というのは非常に難しいが、唯一、この薬に関しては介護費用の分析がとても重要なポイントになるのではないかと思っている。
 特に、我が国は介護保険がこれだけ充実していて、いろいろな介護データもある。これから「よーいドン」でスタートするレカネマブの使用なので、できれば費用対効果も同時進行で分析できないか。レカネマブを使った群と、いろいろ事情で使えなかった群とを比較し、それらの介護費用がどのように変わるかをプロスペクティブにスタディができないか。そういうことが可能なのかどうか。
 高額な医療費になる。国民の理解を得る意味でも分析する必要がある。例えば、本人の記憶力が維持できたり、計算する能力が持続できたりするだけではなくて、最終的に介護費用、介護負担がどれだけ減ったかというのが一番のアウトカムだと思うので、ぜひ同時進行で分析できないか。そういうことが可能なのか、事務局にお伺いしたい。
 それができれば同時進行でやっていった上で、国民も理解した上で一定程度の費用を国民みんなで負担して使用範囲を広げていくことも可能になるのではないか。技術的に可能なのかどうかも含めて質問したい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・木下栄作室長】
 今いただいたご意見に関しては、まさに技術的と言うか、研究的要素が非常に強い部分かと思うので、研究者との相談になろうかと思うが、いかんせん、どうしても今から追っかけていって差が出るまでとなると、相当程度の時間を要するデザインになろうかと思う。すぐに、その差や影響が出るというものを技術的に分析可能かということに関しては、いささか難しいのではないかという感想を持っている。いずれにしても、国立保健医療科学院も含めて研究者とよく相談させていただきたいと思う。
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【池端幸彦副会長】
 おそらくそうだと思うが、後に検証するためのデータ取得の同意など、そういうところだけでも、やっておくとよいのではないかと思うので、ご検討いただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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