新しい慢性期医療像をつくっていく

会長メッセージ

花咲く風景-122

 「重度の後遺症を持った患者さんを診るのは、われわれ慢性期医療の現場である」─。武久洋三会長が「第19回日本慢性期医療学会」で述べた開会の挨拶をご紹介します。

長期急性期と長期慢性期、
医療と介護のある介護病床の3つの機能を果たす

 「慢性期医療の近未来~北の大地からの提言~」をテーマに、第19回日本慢性期医療学会がこのように見事に整備された素晴らしい会場で開くことができますのは、ひとえに北海道の中川翼大会長、そして皆様のご努力の賜物であると感謝いたします。

 本日は、原中日本医師会長はじめ、梅村参議院議員、鈴木医療課長、宇都宮老健課長、各種医療団体の会長、副会長の皆さまにお集まりいただきました。また、地元の皆さまもご来賓としてたくさんお集まりいただき、本当にありがとうございます。

 慢性期医療という概念は、私が3年前に当協会を「日本療養病床協会」から「日本慢性期医療協会」へと変えたことも契機とはなりましたが、今新しい目標に入っています。

 すなわち、2025年に1.5倍の方が亡くなると予測されております。一人が1回病気をして亡くなるのであれば1.5倍になりますが、2回病気をした場合には患者さんの数は3倍になります。

 しかるに病院の数は増えないとなると、一人ひとりの病院にいる入院期間は3分の1にしないと治療できないのです。ということは、従来、急性期病院が担っていた3分の2の医療は慢性期医療が担わないといけないことになります。

 6月初めに、社会保障国民会議が昨年だした将来の介護体制に対する具体的な数字が発表されています。その中で高度急性期病院、一般急性期病院、回復期リハや亜急性期、その後を担う長期の慢性期医療をどうするかということがあります。

 結局、重度の後遺症を持った患者さんを診るのは、われわれ慢性期医療の現場であるということです。そういう意味で、長期ですが急性期的な機能を持った病床を持たないといけないのです。

 私は昨日の理事会でも、長期急性期病床という概念をわれわれの慢性期医療の範疇として取り組んでいこう、療養病床は安定した老人をいつまでも収容していく場ではないということ現場から発信して、長期急性期病床と従来まで取り組んでいる長期慢性期病床、さらには医療と介護のある介護病床、この3つの機能を果たしていこうということです。

 その上に最近はがんの再発やターミナルケアについても、われわれに仕事が回ってきています。また認知症、そして最大の懸案事項は在宅支援です。

 在宅療養支援病院制度が昨年から開始されました。すでに400を超える病院に参加していただいています。しかし、実態としてはなかなか在宅支援機能はできていません。このことは、われわれ慢性期医療の業務の重要な部分ではないかと思っております。

 そういうことを含めて、今後ますます皆様とともに新しい慢性期医療像をつくっていくためにも、この学会は非常に大切な学会です。ぜひ皆さん一生懸命勉強して、よい成果をもって地域にお帰りください。よろしくお願いします。

 ※ 以上、2011年10月のJMC77号より転載

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