高額薬などの引下げ範囲、「慎重に考えるべき」 ── 費用対効果部会で池端副会長

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第62回費用対効果評価専門部会

 高額な医薬品などの価格を引き下げる品目の範囲について、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は薬価算定の透明性を確保する必要性を指摘し、引下げ範囲の拡大に伴って「開示度がますます低くなってしまう可能性もあるので慎重に考えるべき」と述べた。

 厚生労働省は7月12日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の①費用対効果評価専門部会、②薬価専門部会、③総会──を開き、当会から池端副会長が①と③に診療側委員として出席した。

 最初に開かれた費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東大大学院経済学研究科教授)の第62回会合では、今後の議論につながる「専門組織意見書」について意見を交わした。この日の議論を踏まえ、次回は関係業界からのヒアリングを実施する予定。

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価格調整の範囲をめぐり議論

 次期改定に向けた主な検討項目を盛り込んだ専門組織の意見書は総論と各論で構成され、現状や課題などが4ページにわたって記載されている。

 このうち各論に示された「対応案」は大筋で了承されたが、「その他」の項目に「対応案」はなく、「以下の意見があった」としている。

 この日の会合では「その他」に関する意見が多く出され、その中で価格調整の範囲をめぐる議論があった。

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01スライド_(4)ポツ1_第62回費用対効果評価専門部会

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「加算部分」の範囲を拡大すべき

 高額な医薬品などによる保険財政への影響を抑制する「価格調整」について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「減算の対象範囲を有用性加算等だけでなく、適用される加算の範囲をもっと拡大すべき」と述べた。

 現行の規定では、価格調整に関する①~④のうち、「加算部分」があれば対象になる。

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①_第62回費用対効果評価専門部会

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③_第62回費用対効果評価専門部会

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 一方、「加算部分」がなければ、透明性の確保に資する「開示度」によって調整される。

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②_第62回費用対効果評価専門部会

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 薬価算定組織での開示が可能な部分の割合(開示度)が高ければ対象外となる。適用される加算の範囲を拡大しても、「営業利益」には調整がかからない。

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④_第62回費用対効果評価専門部会

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「加算部分」に限らず、より広い範囲を

 薬価算定組織の意見書では、価格調整について「当該品目の有用性加算等の範囲で実施しており、現状では、評価時点における分析対象と価格調整として反映する対象の範囲が異なる」と指摘している。

 その上で、「諸外国の事例も参考にしながら、価格調整の対象範囲のあり方について検討する必要がある」との考えを示した。

 質疑で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「費用対効果評価の積極的な活用の観点から、加算部分に限らず、より広い範囲を調整の対象とすべき」と主張した。

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開示度がますます低くなるのでは

 現行の規定では、「開示度」が低ければ「営業利益」も含めて調整される。

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①_第62回費用対効果評価専門部会

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②_第62回費用対効果評価専門部会

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 一方、「開示度」が高ければ「加算部分」に限られる。

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③_第62回費用対効果評価専門部会

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④_第62回費用対効果評価専門部会

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 類似薬がない場合の原価計算方式は原材料費や製造経費等を積み上げて計算されるが、透明性の観点から一部の支払側委員が問題視している。

 前回改定では、開示度50%未満の品目について「加算係数ゼロ」というペナルティが入った。

 質疑で池端副会長は、開示度が高い場合の③④に言及。「営業利益も含めて対象にする開示度がますます低くなってしまう」と懸念し、「そういう逆のバイアスがかかってしまう可能性もあるので慎重に考えるべき」と指摘した。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

【池端幸彦副会長】
 薬価算定組織の意見書では、「諸外国の事例も参考にしながら、価格調整の対象範囲のあり方について検討する必要がある」と指摘している。そこで、4ページの①~④について質問したい。
 これまでの費用対効果の報告をお聞きすると、特に外資の方々は開示度というものに対して、いろいろな理由を挙げて厳しいということをおっしゃっている。 
 そうした中で、価格調整の対象範囲を変えるとすれば、③④になると思うが、現在までに費用対効果評価が終了した品目のうち①②③④がどれくらいの割合なのか。③④がかなり多いのか少ないのか。その規模がわかれば教えていただきたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・木下栄作室長】
 4つの類型にどれが該当して、いくつぐらいかという質問があった。本日の参考資料には、終了した品目の一覧を挙げているが、どの類型に該当するかという情報は整理できていないので、次回以降に改めて回答させていただきたい。
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【池端幸彦副会長】
 よろしくお願い申し上げる。なぜこのような質問をしたかと言うと、開示度が低い場合には「営業利益」も含めて価格調整しているが、開示度が高い④も対象にして営業利益も含めると、開示度がますます低くなってしまうのではないかと思ったからだ。そういう逆のバイアスがかかってしまう可能性もあるので、この辺はちょっと慎重に考えるべきという感じがした。そのため、①から④の割合を教えてほしいと思った。次回、よろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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