リハビリ職に認知症対応力の研修を ── 団体ヒアリングで田中常任理事

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20231002介護給付費分科会

 令和6年度介護報酬改定に向けた第2回ヒアリングで、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「リハビリテーションの職員に対する認知症対応力の研修が他職種とは別に必要ではないか」との考えを示した上で、リハビリ関係団体に取り組み状況などを質問した。

 厚生労働省は10月2日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第226回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 今回のヒアリングも前回9月27日と同様に2部構成で実施。第1部では、四病院団体協議会など9団体の代表者らが意見を述べ、質疑に入った。後半の第2部ではリハビリ関係団体の意見陳述と質疑があった。
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参加団体一覧

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 第1部で田中常任理事は日本訪問看護財団に質問。第2部ではリハビリ関係団体に認知症研修に関する取り組み状況などを尋ねた。詳しくは以下のとおり。

■ 日本訪問看護財団への質問と回答
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【田中志子常任理事】
 療養通所介護は非常にいいサービスだと思うが、資料に示していただいたように、包括報酬であるため回数が少ないと割高になってしまう。また、ケアプランに組み込むときに単価が高いことで、なかなか利用できない。それでもさらに費用を付けていただかないと逆ザヤになってしまって赤字になるという状況があると思う。
 そのことに関して、貴団体では何か提案というか、利用者さんの思いを埋める、また提供事業者側の報酬の穴を埋めるようなプランがあれば教えていただきたい。

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【日本訪問看護財団・佐藤美穂子常務理事】
 包括報酬になってから、利用者の数次第で収入が決まってしまうので、どうやって利用者を確保するかを私どもも考えている。その1つには、「要望2」で提案した「スポットでの利用に対する報酬の新設」がある。ショートステイの間に1週間、在宅にいる間でも、利用者のニーズに合わせて提供可能な仕組みをお願いしたい。
 また、地域のニーズに合わせることから考えると、児童発達支援等とセットで、一体的に運営するという方向性がとても重要な地域共生社会に向けたサービスになるのではないかと思う。障害福祉、あるいは児童発達を扱っている、こども家庭庁などとの連携がとても重要であり、国にはぜひ、そういう連携をお願いしたい。
 私たちもどうやって利用者を確保するかを考えているが、地域のケアマネジャーと連携したり、ほかの通所サービスで医療ニーズの高い方を受けたり、さまざまな工夫をしながら頑張っている。

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■ 日本病院会への質問と回答
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【田中志子常任理事】
 日本病院会の松本先生にお伺いしたい。かねてから私がこの場で発言させていただいているように、人材不足の件に関して、介護施設と医療機関の介護職員が同じような仕事をしていても報酬が違う、処遇改善が違うというところについて、病院団体としても大きな問題として捉えておられるだろうか。
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【日本病院会・松本隆利理事】
 介護施設を併設している病院は非常に多い。病院も含めて介護人材の採用はかなり多いが、その確保に非常に難渋している施設がかなり多いと思う。そのため、介護人材を紹介する業者が増えている。昔はハローワーク等があったが、現在はハローワークを経由して来られる職員はほとんどいない。病院が自ら募集して来ていただくか、または業者にお願いすることになるが、業者から極めて高い報酬を要求されており、経営上、大変大きな問題になっている。
 そして、病院と介護施設間における人材の支援、応援が難しくなっている。この点について、もう少し融通がきくような状況になればいい。今回のようなパンデミックのほか、職員がノロウイルス、インフルエンザなどの感染症にかかって、ある病棟だけ看護・介護人材が不足することもある。そういう場合に融通がきくようにセットしていただければ、その不足に対して有用ではないかと考えている。

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■ リハビリ関連の3協会への質問と回答
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【田中志子常任理事】
 OT・ST・PT協会の皆さまからのご報告のとおり、私も認知症の方々に対してリハビリテーションをしっかり行うことで認知症の方々の状態が非常に良い状態で維持できることは経験済みである。とはいえ、私どもの所でも感じるのだが、リハビリテーションの職員が介護保険制度を熟知していないとか、認知症の方々の認知症の度合いをしっかりと把握できていないことを感じている。
 看護師に対しては、認知症対応力向上研修という病院における加算要件の研修が制度化されているが、リハビリテーションの職員に関しては、ほかの職種とはまた別に独特の認知症対応力向上研修が必要ではないかと考えている。私が把握しているのは、日本リハビリテーション病院・施設協会の研修で、「リハ職のための認知症ケア講座」を始めたところであるが、それぞれの協会において、認知症対応力や介護保険の制度に対しての研修はこれまで行われてきているのか、あるいは、これから行う予定があるのか教えていただきたい。

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【日本作業療法士協会・山本伸一会長】
 認知症に関する知識・技術など、人材育成に関しては日本作業療法士協会と各都道府県作業療法士会の連携の中でも進んできた経緯がある。特に生涯学習制度の中においては、老年期分野、そして、その中に認知症というセクションがあり、それで対応されているということで、ご理解いただきたい。
 また、認定・専門という制度もある。認知症の基礎知識として、認知症の理解について誰もが受けられる e-ラーニングも始めた。これは専門作業療法士のためのものではあるが、どなたでも受けられる。eラーニングを通して認知症の知識と理解を深めていく取り組みを2019年度より始めている。研究事業として、認知症リハビリテーションに関する事業も昨年度から始めているので、これもしっかり進めたい。

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【日本言語聴覚士協会・深浦順一会長】
 介護保険に関する研修は3協会で進めてきている。地域ケア会議に資する人材育成を進めている。認知症に対しては、全国研修会等で実施している。高次脳機能障害や失語症の進行性のものは認知症との関連があるので、一体化したかたちでの講座等は行っている。今、山本会長も言われていたが、本協会でも生涯学習を整理しており、そこで系統的にやっていこうと考えている。
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【日本理学療法士協会・佐々木嘉光副会長】
 当協会も生涯学習制度があり、5年間の登録理学療法士、その後の認定理学療法士、それから専門の理学療法士、こういった多様な機会を通じて研修を行っている。特に理学療法士に関連するところ、軽度認知症のMCIの段階でしっかり運動して、その後の認知症の進行を予防するというところ。それから、要介護の状態になった段階で特に転倒の課題が大きいと承知している。転倒を繰り返すことをしっかり予防するといったところを特に力を入れて研修を行っていきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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