費用対効果の品目を増やすには「専門委員が相当必要」 ── 池端副会長、中医協総会で
医薬品などの費用対効果を評価する体制の強化に向け、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は2月10日の会合で「高度な専門知識を要する専門委員の数がかなり少ない」との認識を示し、「対象品目を増やすために専門委員の数が相当必要」と指摘した。厚労省の担当者は「人材育成にもしっかり取り組みたい」と述べた。
厚生労働省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第475回会合をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。
総会の議題は医療機器の保険適用や新薬の収載など10項目にわたり、その中で費用対効果評価制度が議題に挙がった。同制度の具体的な運用について議論するのは、昨年10月28日の総会に続いて2回目となる。
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「スピード感が必要」との声も
昨年10月の議論で支払側委員は、現在の制度を拡大する必要性を改めて強調した上で「スピード感を持って進めていくことが必要」と主張。厚労省の担当者は、分析作業を担当する機関などの体制強化を進めていることを説明した。
同制度は2019年4月から本格的に稼働し、今年4月で2年を迎える。同制度の対象となっているのは現在14品目あるが、分析結果はまだ1件も報告されていない。
同制度の対象品目に指定されてから分析結果が出るまでの「標準的な期間」は最大1年半とされている。
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「現時点では遅延はない」と厚労省
2月10日の総会で支払側委員は、対象となってから既に1年半が経過している品目があることを指摘し、「標準的な期間の基準に当てはまっているのか」などと追及した。
厚労省の担当者は「専門組織での検討や、専門組織での検討結果に対する企業の不服等に一定の期間を要する」と説明し、「現時点では遅延はない」とした。
支払側委員は「医薬品によっては高度な専門知識や期間が必要かもしれない」と一定の理解を示した上で、「専門組織で必要とするガイド的な期間を事前に設定しておくべき」と求めた。
厚労省の担当者は「専門組織における検討の期間をどのように考えるのか、資料を整理して中医協にお諮りしたい」と応じた。
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人材育成にもしっかり取り組む
こうした議論を踏まえ、池端副会長が発言。昨年10月の議論を振り返りながら、「対象品目を増やして制度を成熟させていくためには専門委員の数が相当必要」と指摘し、「専門委員の養成は順調に進んでいるか」と現状を尋ねた。
厚労省の担当者は「費用対効果評価の専門家を育成していくという観点から新規の教育プログラムを開始している」とし、受講生の半数近くが今年3月に修了見込みであることを伝え、「人材育成にもしっかり取り組んでまいりたい」と述べた。
池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
【池端幸彦副会長】
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今の吉森委員の発言内容にも関係するが、1つ質問したい。過去の経緯は詳しく存じあげないが、前回の議論の時、費用対効果評価について高度な専門知識を要する専門委員の数がかなり少ないという印象を受けた。
その養成について、ロードマップを示していただいたが、費用対効果評価の対象となる品目を増やして、この制度を成熟させていくためには専門委員の数が相当必要になってくるのではないか。そこで、専門委員の養成が順調に進んでいるのかどうか、もしお分かりになれば教えていただきたい。
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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長】
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池端委員のご指摘のとおり、費用対効果評価に係る専門家の確保が非常に厳しい状況にあることは事実だと認識している。
費用対効果評価の専門家を育成していくという観点から、昨年4月から新規の教育プログラムを開始している。初年度の受講生は49名だったと聞いており、このうち21名は今年3月に修了の見込みとなっている。
今後、費用対効果に係る研究に取り組んでいきたいとおっしゃられた人は、受講生の約4分の3程度おり、6割は公的分析への参加も希望しているという状況であるので、個別品目の評価を進めるとともに、人材育成にもしっかり取り組んでまいりたいと考えている。
(取材・執筆=新井裕充)
2021年2月11日