主任ケアマネの要件、「5年に根拠はあるか」 ── 介護給付費分科会で田中常任理事

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介護給付費分科会_20230724

 令和6年度の介護報酬改定に向けて審議している厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会田中志子常任理事は「居宅介護支援事業所が減っている」と指摘した上で、「主任ケアマネになるための経験が5年も必要なのか。その根拠はあるのか」とただした。厚労省の担当者は「要件の設定根拠に立ち戻り、少し検討したい」と答えた。

 厚労省は7月24日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第220回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 この日のテーマは、訪問系サービスを中心に7項目。厚労省は同日の分科会に資料1~7を示し、それぞれのテーマについて論点を挙げ、委員の意見を聴いた。

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01スライド_資料一覧

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著しい人手不足や高齢化が深刻

 最初の議題「訪問介護」については、訪問介護員の人手不足の現状などを紹介した上で高齢化が進んでいる状況も課題に挙げた。

 論点では、「介護サービスの需要が増加する一方で、訪問介護員の不足感が強い状況」とした上で、「利用者の状態に応じて必要となるサービスを安定的に提供するために、どのような方策が考えられるか」と意見を求めた。

 田中常任理事は「著しい人手不足や高齢化が深刻」と指摘した上で、独居高齢者らを支える必要性を語った。

 3番目の議題「訪問看護」では、自院の取り組みなどを紹介した上で、医療・介護連携のための「ハイブリッド職」の育成などを提案した。田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。

■ 訪問介護について
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 資料34ページから37ページにあるように、著しい人手不足と現在勤務している方々の高齢化が深刻である。山間部では、高齢のために訪問時の運転に支障があったり、本人が自信がなくて遠い居宅は訪問しにくいケースも増えている。通勤災害のみならず職員の腰痛や疾患への配慮も必須である。そうした現状も踏まえて、報酬のみならず今後の対策を考える必要がある。 
 一方で、利用料負担を考え、入所までの期間を延伸するため、何とか在宅で生活したいという高齢者も増えており、特に老々世帯や独居の初期認知症の患者さんの在宅生活を継続するためには家事援助を含めた訪問介護の支援は欠かせず、一概に取り上げるようなことになってはならないと思う。

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■ 訪問看護について
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 以前から申し上げているように医療依存度の高い人への訪問看護が増えているため、特定行為のできる看護師など専門看護師の配置に配慮していただきたい。
 また、療養通所や看護多機能などの看護師、管理者等の兼務による人員不足への対応をご検討いただきたい。 
 私どもの経験ではあるが、医療と在宅の連携目的で病棟看護師やリハ職の訪問との兼務を進め、いわゆるハイブリッド型の看護師、リハビリ職を育成している。病棟において、より在宅生活のイメージがつきやすいと思っている。こうした医療と介護の連携のためのハイブリッド職の育成も検討の一助ではないかと考えている。

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ケアマネの現場はもたない

 6番目の議題「居宅介護支援・介護予防支援」では、適切なケアマネジメントの推進に向けた前回改定の内容などを紹介した上で、ケアマネジャーの配置や情報連携の状況などを説明した。

 論点では、高齢化や担い手不足を指摘した上で、「多様な利用者のニーズへの対応が求められる中、業務効率化等の取組による働く環境の改善等を図るとともに、ケアマネジメントの質を向上させていくために、どのような方策が考えられるか」と意見を求めた。

 田中常任理事は「主任ケアマネが配置できないために立ち上げができない、あるいは継続ができない事業所も増えている」とし、「規制緩和や効率化を推進しないとケアマネの現場はもたない」と危機感を表した。

■ 居宅介護支援・介護予防支援について
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 在宅支援を推奨している中で、6ページにあるように居宅介護支援事業所が減っている。 
 3ページに居宅介護支援の人員基準が示されている。「管理者を主任ケアマネジャーとする要件の適用を令和9年3月31日まで猶予する」との経過措置はあるが、「令和3年4月1日以降に新たに管理者となる者に対しては、更なる経過措置は適用されない」としており、主任ケアマネの要件が非常に厳しくなっている。主任ケアマネが配置できないために立ち上げができない、あるいは継続できない事業所も増えていると聞く。 
 32ページ(介護支援専門員実務研修受講試験の合格者数・合格率)に示されているが、合格率が2割以下である。試験の内容が難しすぎるのではないか、入口を閉めすぎているのではないかといった可能性について指摘したい。 
 しかも、主任ケアマネの受験資格までの期間が5年間も必要となる。ケアマネの実務を5年経験しなければ主任ケアマネになれない。育成までの期間が長すぎるのではないかということにも言及したい。 
 さらに、資格取得後の義務研修が他職種と比べて多すぎるように感じる。それに見合った報酬が出ていないために成り手が減っているのではないか。 
 主任ケアマネになるための現場の経験が5年も必要なのか。また、その根拠はあるのかどうか。この点について質問したい。 
 研修の見直しだけでなく、AIケアマネの積極的な活用も含めて、規制緩和や効率化を推進しないと本当にケアマネの現場はもたないと感じている。

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【厚労省老健局認知症施策・地域介護推進課・和田幸典課長】
 この要件の設定の根拠に立ち戻り、少し検討させていただきたいと考えている。
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■ 福祉用具・住宅改修について
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 使い手の気持ちを聴いた上での改定を希望する。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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