「紹介会社への支払いに関する調査を」 ── 介護給付費分科会で田中常任理事
令和6年度介護報酬改定の基礎資料となる調査案などを審議した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「人材紹介会社への支払いに関する調査を検討できないか」と提案した。厚労省の担当者は「例えば調査研究なども含めて検討したい」と答えた。
厚労省は2月20日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第214回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
厚労省は同日の会合に「令和4年度介護事業経営概況調査の結果」を示した上で、次期改定に向けた「令和5年度介護事業経営実態調査の実施案」などを説明し、委員の意見を聴いた。田中常任理事は人材紹介会社への支払いについて調査の必要性を指摘した。
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国からの指示が十分に機能しているか
この日の会合では、「電子申請・届出システム」の使用の基本原則化などに係る諮問や、福祉用具貸与等のあり方検討会からの報告があった。
【議題】
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「電子申請・届出システム」の使用の基本原則化について委員からはシステムエラーへの対応策を求める意見などがあった。
田中常任理事は「割り印などを求められ、かつ薄れているという理由で戻される」と伝えた上で、「国からの指示が十分に機能しているかについても調査をお願いしたい」と求めた。
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本人の意見を広く聴取できる仕組みを
福祉用具貸与等のあり方検討会については、昨年9月にまとめた「議論の整理」の概要が報告された。その中で、福祉用具の選定の判断基準の見直しに関する意見や今後の方向性などが示されている。
今後の検討の進め方については、「データの不足があるため、きめ細かな調査や研究事業等を引き続き行い、把握したデータ等を具体的に示していく必要がある」としている。
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質疑で、鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)は「当事者本人や家族の声もきちんと入れたかたちでマネジメントして用具を選定するようにしてほしい」と求めた。
石田路子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事)は「この検討会に当事者や本人の立場を代弁できる人の参加をお願いしたい」と要望した。
田中常任理事は「利用者の意向調査が不足している」と指摘し、「本人の意見を広く聴取できる仕組みをお願いしたい」と提案した。田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。
■「電子申請・届出システム」の原則化などについて
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電子化に伴って電子押印を求められることはないか。文書負担の軽減は賛成で進めていただきたいが、現状はまだ文書が減っていない。例えば、割り印などを求められ、かつ薄れているという理由で戻ってきて再び押し直すなど、かなり厳密な書類の整備が求められている。本当に軽減されているのだろうか。
「電子申請・届出システム」の使用の基本原則化は重要だが、その後、国からの指示が十分に機能しているかについても調査をお願いしたい。
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【厚労省老健局老人保健課・占部亮企画官】
電子押印の必要がないかという質問について。今回の様式の見直しに当たり押印欄を廃止しているので、その必要はない。
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■ 介護事業経営概況調査について
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今回の概況調査において職員の給与が上昇していることは嬉しい。私たちの努力の結果であると考えている。
一方で、人材派遣については大変苦慮している。紹介会社を利用せざるを得ない状況がある。介護報酬から紹介会社にどのくらいの支払われているのか、今後の調査で見ていく必要がある。利用者から集めた介護保険金から使っていいのか。私は甚だ疑問に思うので、人材紹介会社への支払いに関する調査を検討できないか。
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【厚労省老健局老人保健課・古元重和課長】
詳細について、どのような形でできるのか、例えば調査研究なども含めて検討したい。
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■ 福祉用具の選定の判断基準の見直しについて
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利用者の意向調査が不足していると感じる。借りたいものが借りられたのか、必要がなくなったときにきちんと返せたのか。また、借りるプロセスについて満足できたのか、借りているものについての満足度はどうなのかなど、使っているご本人の意見が見えない。
福祉用具にあたるかどうかという議論ばかりが目立っていると思うので、今後は本人の意見を広く聴取できる仕組みをお願いしたい。
(取材・執筆=新井裕充)
2023年2月21日