認知症グループホーム、「要件が厳しい」 ── 介護給付費分科会で田中常任理事

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田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)

 令和6年度の介護報酬改定に向けて、認知症や要介護高齢者らが利用する地域密着型サービスなどを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は認知症グループホームについて「緊急入所の要件が厳しい」と指摘したほか、「デイサービスの要件を緩和してはどうか」と提案した。

 厚労省は6月28日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第218回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に、定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能、グループホームなどの現状や課題を示した上で論点を挙げ、委員の意見を聴いた。田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。

■ 小規模多機能型居宅介護について
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 ケアマネジャーについて、山岸参考人がおっしゃったように私も本人の意向や希望で、もともとのケアマネジャーを小多機の利用時に担当として選べるようにしてはどうかと提言する。
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■ 看護小規模多機能型居宅介護について
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 資料38ページのスライドにあるように人材不足は明らかである。その中で、あらゆる事業所の効率的な運営のために、例えば既存の訪問看護ステーション、つまり訪問のみを専門とする部隊を同居させて管理者を兼務させるなど柔軟な運用を提案する。
 また、専門的看護師の評価について田母神委員の意見に賛同する。訪問看護ステーションでは専門的看護師の診療報酬上の評価が付いていることから、介護報酬における看護多機能の拠点にも同様に特定行為のできる看護師配置に対して評価をしていただけるように求めたい。

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■ 認知症対応型共同生活介護について
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 現場としての意見を申し上げると、緊急入所の要件が厳しいと考える。例えば、喧嘩をしてしまい警察が介入した認知症のご夫婦を夜間に受け入れた経験があるが、地域密着という性質上、隣町での案件を受け入れられないなどの状況がある。
 また、受け皿として制度は用意されているものの併設のデイサービスも非常に使いにくいところがある。認知症の人はリロケーションダメージに弱いことから、もっと活用しやすくして、デイサービスで練習し、泊まりに移行できるなど、そうした対応ができる利用者の枠があってもよいのではないかと思う。したがって、認知症グループホームにおいてデイサービスの要件を緩和してはどうかと提案する。
 さらに、認知症のグループホームの稼働状況については把握されていないように思うので、一度、稼働状況の全数調査をしてはどうかと考えるので、これも提案したい。

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介護医療院の数字が伸び悩んでいる

 この日の会合では、令和4年度介護従事者処遇状況等調査の結果も示された。それによると、介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している施設等における介護職員の基本給等について同加算の取得前後を比較すると10,060円の増(+4.4%)だった。

 また、介護職員処遇改善支援補助金を交付されている施設等における介護職員の基本給等について同補助金の交付前後を比較すると9,210円の増(+4.0%)となっている。

 田中常任理事は「一定の効果は見て取れた」と評価しながらも、加算等の取得状況について「介護医療院の数字が伸び悩んでいる」と指摘し、今後の検討を求めた。田中常任理事の発言要旨は以下のとおり。

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20230628介護給付費分科会

■ 令和4年度介護従事者処遇状況等調査の結果について
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 介護職員処遇改善支援補助金や介護職員等ベースアップ等支援加算について、ある一定の効果は見て取れたと評価する。感謝を申し上げる。
 一方で、介護医療院に関する数字を見ると伸び悩んでいるように見受けられる。これについては、同一法人内の診療報酬下における病棟と職員間の差がつけられないなどの理由から仕方なく算定していない事業所も多いと聞く。病棟における介護福祉士は国家資格である。彼らの処遇を見直すことで解消できる可能性もあることを指摘する。
 今回、同時改定であるので、中医協等とも連携するなど、この数字を中医協にお知らせいただき、検討に入っていただければと思っている。また、伊藤委員がおっしゃったように、これら非常に煩雑な加算に関しては一本化に賛同する。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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