外国人の介護人材の制度改正へ初会合、 富家常任理事が出席

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富家隆樹構成員(日本慢性期医療協会常任理事)

 厚生労働省は7月24日、「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」の初会合を開き、当会から富家隆樹常任理事が構成員として出席し、今後の検討課題について意見を述べた。

 冒頭、厚労省社会・援護局の朝川知昭局長が挨拶し、本検討会の開催趣旨を伝えた。その後、各構成員の自己紹介があり、富家常任理事は「慢性期医療の現場から実情を踏まえた意見を届けたい」と挨拶した。

 座長には、神奈川県立保健福祉大学の臼井正樹名誉教授が就任した。続いて厚労省の担当者がこれまでの経緯を説明。「主な検討事項(案)」①~③や今後のスケジュールなどを示し、委員の意見を聴いた。
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01_資料4検討会スケジュール(案)

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「より良い方向に推進させる」と朝川局長

 開会の挨拶で朝川局長は、今秋を目途に最終報告書を取りまとめる方針を伝えた上で、「外国人の介護人材関係施策をより良い方向に推進させるため、本検討会を通して構成員の皆さまや現場の皆さまのご意見をよく伺いながら、制度改正などに向けて取り組んでまいりたい」と述べた。朝川局長の発言要旨は以下のとおり。
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外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会

【厚労省社会・援護局・朝川知昭局長】
 技能実習制度は、前回の法律改正の附帯決議等において、技能実習制度の対象職種への介護の追加後3年を目途として、その実施状況を勘案して、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされている。 
 また、令和4年11月22日に設置された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が令和5年5月11日にとりまとめた中間報告書では、技能実習制度と特定技能制度が直面する様々な課題を解決した上で、国際的にも理解が得られる制度を目指すとされ、中間報告書で示した検討の方向性に沿って具体的な制度設計について議論を行った上、令和5年秋を目途に最終報告書を取りまとめるとされている。
 このような状況を踏まえ、有識者会議の中間報告書に示された検討の方向性にも留意しつつ、技能実習「介護」および特定技能「介護」における固有要件等について課題や論点を明らかにした上で検討し、結論を得ていく必要があると考えている。 
 われわれとしては、外国人の介護人材関係施策をより良い方向に推進させるため、本検討会を通して、構成員の皆さまや現場の皆さまのご意見をよくお伺いしながら、制度改正などに向けて取り組んでまいりたいと考えている。 
 構成員の皆さまの活発なご議論をお願いして、私からのご挨拶とさせていただく。どうぞよろしくお願い申し上げる。

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介護人材の確保は重要な課題

 厚労省は同日の会合に「検討に当たっての考え方・検討事項(案)」と題する資料を提示。この中で、「基本的考え方」として介護人材不足を挙げ、「介護人材を確保することは重要な課題」とした。

 その上で、「外国人介護人材については、介護が対人サービスであること等、業務の特性を踏まえた要件を設定しているところ、介護現場からは外国人介護人材の業務拡大を望む意見がある」とし、中間報告書のポイントを紹介した上で検討事項を示した。
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02_資料3検討に当たっての考え方・検討事項(案)_ページ_2

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ハードルを上げると来ていただけない

 質疑で、斉藤正行構成員(全国介護事業者連盟理事長)は「単純に人が足りないから緩和ということではなくて、介護の状況をしっかりとこれまでの議論や調査を踏まえて判断していくことが大前提」とした上で、「今、日本になかなか人が来なくなっている」と指摘した。

 その上で、「介護は特に要件を他産業やサービス以上に高くしているので、より一層、介護の人材が外国からなかなか集まってこないという背景がある」とし、「時代、環境に応じた見直しをぜひ検討いただきたい」と求めた。

 続く検討事項に関する質疑の中で、富家常任理事はベトナムの状況などを紹介しながら「外国人人材が非常に取り合いになっている」と指摘。「ハードルを上げれば上げるほど来ていただけなくなるので、その点を踏まえた議論をしていく必要がある」と述べた。富家常任理事の発言要旨は以下のとおり。

【富家隆樹常任理事】
 先日、当院の技能実習生の結婚式に招待されてハノイを訪れた。日本でいうと東京の隣の埼玉県のような地方都市だ。新婦はご実家が農家を営んでいる。今までベトナムの米農家は二毛作だったが、最近は一毛作のみという。理由を尋ねると、中国の工場が多く建ち、働き手がそちらのほうに流れているらしい。そのため、農業をする時間がなくなり、一方で収入も上がったので一毛作にしたという。 
 5年ぶりのハノイだった。5年前はバイクがすごく多かったが自動車が増えた。急速な経済発展を遂げている。 
 外国人人材については、先ほど斉藤構成員が指摘したように、諸外国と競争して取り合いになっていることを私どもは念頭に置く必要があり、そうした議論をすべきである。
 例えば、韓国や台湾とは外国人人材の取り合いが激しくなっている。日本は給与面で競争力が落ちているので来ていただけない。日本が選ばれる必要がある。しかし、ハードルを上げれば上げるほど来ていただけなくなる。そうした視点を持った議論をこれからもしていく必要がある。

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入職後すぐに算定可能でもいい

 今回示された検討事項は、①訪問系サービスなどへの従事、②事業所開設後3年要件、③技能実習「介護」等の人員配置基準──の3項目。

 このうち①について富家常任理事は「有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も対象施設に含めて問題ない」との認識を示した。

 ②については、「事業所単位ではなく法人単位で考えるべき」とし、③については、「入職後すぐに算定可能でもいい」との考えを示した。

■ 検討事項①について
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 日本慢性期医療協会は、支部の埼玉県慢性期医療協会が技能実習の管理団体を運営しており、現在30名の外国人の管理を行っている。 
 私自身、人材確保としての外国人の受入れを行う以上、来ていただく外国人人材に対しても技能移転という建前の技能実習の廃止は大賛成である。 
 「検討事項①」の対象施設については、一般在宅と比べて施設在宅とされる有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、施設に何人も介護士がいて、介護保険施設とあまり労働環境が変わらずに一対一の介護にはならないので、施設在宅のサービス付き高齢者向け住宅などは対象施設として含めて問題ないのではないかと考えている。

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■ 検討事項②について
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 技能実習「介護」では、経営が一定程度安定している事業所として設立後3年を経過している事業所が対象となっているが、複数の事業所を持つ医療法人や株式会社であれば、たとえ、その事業所が新規であっても、経営の安定や教育体制を確保・確認することは可能なので、事業所単位の要件ではなく、法人単位と考えていくのがいいのではないかと思う。
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■ 検討事項③について
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 技能実習生の配置基準上の取扱いについて「技能実習を行わせる事業所において実習を開始した日から6月を経過した者」としているが、そもそも技能実習は2号までで3年間、36カ月しかない中で、そのうち来日して2カ月は缶詰になって講習があり、その後、雇用契約を結んでから6カ月後にようやく人員配置基準として算定が可能になる。その間、外国人への給与は発生しているので6カ月は長すぎる。給与が発生している以上、入職後すぐに算定可能でもいいと考えている。
 特定技能の2号について、現在は介護福祉士とされているが、そのためには460時間の講習を受ける必要があり、外国人にとって非現実的である。優秀な外国人人材に長く日本にいていただくための検討が必要である。 
 外国人人材には、管理費として給与以外に技能実習で月約4万円、特定技能には月2.5万円ぐらい平均的にかかっている。 
 さらに、介護保険施設には介護職員処遇改善加算があり、外国人にも適用されるが、病院の看護補助者には処遇改善加算はない。そのため、介護保険施設を併設している病院の看護補助者には、その処遇改善の加算分を病院が介護施設の介護士と同等になるべく補填している状況がある。その上で、さらに管理費がかかってくることを周知していただきたい。 
 日本語の要件については、自院の外国人と話してみると、N4でもN1でも個人差が大きいのが実情で、現場ではその人の能力によって間接介護や直接介護のバランスを変えている。介護分野への人材の確保のためには、ストリクトな日本語要件は逆に足かせになるのではないかと考えている。 
 安い人材確保策としての外国人人材とは全く考えていない。優秀な外国人人材に私どもの施設や介護を助けていただくというようなスタンスで外国人に来ていただきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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