「いずれも必要な加算に思えるのではないか」── 加算廃止の声に対し、武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

介護給付費分科会_20200930

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は9月30日、令和3年度の介護報酬改定に向けて審議した厚生労働省の会議で、算定率が低い加算について「いずれも必要な加算に思えるのではないか。利用者にとって非常に良い加算ではないか」と問いかけ、「算定要件の緩和など、いろんな工夫をしていただきたい」と理解を求めた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第186回会合を開き、前回に引き続き次期改定に向けた検討を進めた。

 この日の主なテーマは、社会保障費の削減に関連する「制度の安定性・持続可能性の確保」で、厚労省は「報酬体系の簡素化」に関する論点をセットで提示。「制度の安定性・持続可能性を確保する観点」から、「報酬体系の簡素化等について、どのような方策が考えられるか」と意見を求めた。
.

15_【資料2】制度の安定性・持続可能性の確保_20200930介護給付費分科会

.
 質疑では、取得率が低い加算について複数の委員から「廃止すべき」との意見が出たが、「算定されない背景をよく吟味した上で廃止するかを検討すべき」との意見もあった。
.

算定実績がない加算は廃止を

 質疑の冒頭で、河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)は「これほど加算が増えて複雑化している現状を考えれば、平均算定率が80%を超える加算はもう普及したものと考えられる」とし、「基本サービス費に要件を包み込むような形で評価して、報酬体系の簡素化を図るべき」と主張した。

 一方、算定率が著しく低い加算等については「その理由の精査が必要」としながらも、「基本的には廃止すべきだ」と述べた。

 河本委員は、増え続ける介護給付費の伸びを懸念し、「これ以上、現役世代の負担が増大することのないようなメリハリを付けた評価が不可欠」と改めて強調した。

 大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、高松市長)も同様に「給付費の適正化を図るという観点から報酬体系の整理が必要」と指摘。「9割以上の事業所が算定している加算は基本報酬に入れていい。算定率が1%未満、あるいは算定実績がない加算は廃止を検討していい」と述べた。
.

必要性が高い加算は再構築を

 齋藤訓子参考人(日本看護協会副会長)は「実績の少ないものについて、算定要件とサービスの実施状況に大きく乖離があるということであれば、廃止あるいは簡素化することには賛同する」としながらも、加算を取得できない理由に言及。「地域密着型の小規模施設でなかなか加算を取得できない理由として、夜間配置などの要件が厳しいのではないか」と指摘し、「算定されない背景をよく吟味した上で廃止するかを検討すべき」と述べた。

 東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「加算の算定率が高いものは本体報酬に包括し、加算の算定率が5、6年経過しても1、2%というものは廃止するような方向で検討すべき」としたが、「加算の対象自体が大変少ないものもあるので、そういう加算については、また別途、考慮が必要」と付け加えた。

 濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は「給付の増減が健全な生活の維持を困難にする場合があり、重度化につながるといけない」と指摘し、「こうしたことに十分配慮しつつ、できるだけ簡素化していくことを進めながら、必要性が高いものは再度見直して再構築を図ることなどを検討してはどうか」と提案した。
.

要介護状態を良くするための加算

 こうした議論を踏まえ武久会長が発言。「資料14ページ見ていただくと、いずれも必要な加算のように思えるのではないか」と問いかけ、「排泄や栄養、退院時の指導など、厚労省の老健課としてはぜひこれらの加算が取れるような方向で対応していただきたい」と求めた。

 厚労省の資料によると、過去1年間の平均算定率が1%未満(1月あたりの算定事業所数が平均9事業所以下であるものに限る)の加算は63種類(延べ222種類)で、在宅復帰や退院時支援関係の加算、リハビリや栄養、口腔関係の加算が挙げられている。
.

14_【資料2】制度の安定性・持続可能性の確保_20200930介護給付費分科会

.
 武久会長は「自分で排泄できて、自分で食事ができて栄養が十分とれれば、要介護の状態がだいぶ良くなる。そのための加算ではないか」と指摘し、「こういう加算のサービスは利用者にとって非常に大切。良い行為に対する加算は取りやすくしていただくことも必要だ」と述べた。

 武久会長の発言要旨は以下のとおり。

【武久会長の発言要旨】
 「資料2」の14ページについて、年間算定率が1%未満、あるいは算定実績がないならば加算をやめてはどうかという意見があった。
 しかし皆さん、このページを見ていただくと、いずれも必要な加算のように思えないだろうか? 排せつ支援加算、低栄養リスク改善加算、栄養スクリーニング加算、退院時指導の加算などがある。
 ご自分で排泄できて、ご自分で食事ができて栄養が十分とれれば、要介護の状態がだいぶ良くなる。そのための加算ではないか。従って、厚労省の老人保健課として、ぜひ、これらの加算が取れるような方向で対応していただきたいと思う。
 こうした加算を取るために1人雇うと、人件費がオーバーしてかえってマイナスになるような加算もある。加算の要件がやや厳しいような場合は少し緩めていただいて、取得率が10%ぐらいになったら要件を少し元に戻すなど、いろんな工夫をしていただきたい。こういう加算のサービスをするということは利用者にとっては非常に良いことだと私は理解している。
 診療報酬でも「加算ばやり」である。介護のほうも加算ばかりで、報酬体系を簡略化するという掛け声とは裏腹に複雑化しており、現場では苦労しているが、この辺のところがミソになると思うので、良い行為に対する加算はできるだけ取りやすくしていただくことも必要だ。
 居宅介護支援に対する加算が他に比べて非常に少ないように思う。よくやっているケアマネジャーは非常に大変である。例えば病院に付いていくのは、加算をいくらもらっても足りないぐらいで、加算をたくさんもらいたいのが現場の思いである。ケアマネジャーのいろいろな行為にもう少し加算を付けてはどうか。特に最近は医療との連携も進んでいる。ケアマネジャーは福祉系の方が多いので医療側からのさまざまな要望に応える必要もある。それに対して敢然と、しっかり頑張っているのであれば加算を付けてあげてはどうかと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »