「医療・介護が一体となった患者像を」 ── 次期介護報酬改定に向け、武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)_20200625介護給付費分科会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は6月25日、令和3年度の介護報酬改定に向けて議論した厚生労働省の会議で、介護関連データの活用について提案した上で「医療と介護が一体となった患者像というものが浮かび上がってくる」との認識を示した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第178回会合をオンライン形式で開催し、次期介護報酬改定に向けて審議した。

 今回は、「介護報酬改定における主な論点(案)」に掲げられた4項目のうち、「自立支援・重度化防止の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」について議論した。

 このうち、「自立支援・重度化防止の推進」については、「介護関連データを活用しながら取組を進めていくことが重要」とした上で、科学的裏付けに基づく介護を推進する仕組みなどについて委員の意見を聴いた。
.

医療・介護データをドッキングさせる

 意見交換で、神奈川県知事の黒岩祐治委員(全国知事会社会保障常任委員会委員)は、個人の未病状態を見える化して行動変容を促す「未病指標」を改めて示し、最終的に15項目に絞り込んだことを報告した。

 武久会長は、黒岩委員が示した測定項目の候補に血液検査の結果などが挙げられたことに着目。「急性期での治療を経過した後のフォローのために医療的な要素がもう少し必要ではないかと思っていたところ、黒岩知事がご提案された」と評価した。

 武久会長は「このような項目をCHASEに加えることにより、医療と介護が一体となった患者像が浮かび上がってくる」との認識を示した上で、「医療データと介護データをドッキングさせて要介護の判定をやりやすいようにすべき」と述べた。

 武久会長の発言要旨は以下のとおり。

【武久会長の発言要旨】
 高齢化が急速に進む社会になっている。要介護者の増加が予測されている。さらに言えば、医療的に重症者であり要介護状態が悪い人も増えている。医療と介護の両方の度合いが悪い人が増えているように思う。
 しかし、現在の要介護認定の調査用紙の状況だけでは、要介護者の全体像がなかなか見えない。そこで、介護保険の総合データベースのほかにVISIT、そしてCHASEなどが入る。
 急性期病院は介護力が少ないために、要介護者が病気になることによって要介護度が上がってしまうということもある。介護保険の認定はともかくとして、急性期での治療を経過した後のフォローのために、医療的な要素がもう少し必要ではないかと思っていたところ、本日の会合で黒岩知事が提案された。
 提出資料によれば、「総合的指標の算出のための測定項目」の4つの領域の1つに「生活習慣」があり、その22項目には血液検査の結果が挙げられている。
 今や、われわれ医師は聴診器1つで診察する時代ではない。血液検査をして、その患者さんの身体状況を把握して診断する。血液検査は一般的である。医療機関に行けば、まず血液を調べる。非常に細かく臓器の状況が分かる。その経過によって、われわれは診断して治療している。
 黒岩知事のご提案はとても重要である。このような項目をCHASEに加えたほうがいいのではないか。そうすることによって、医療と介護が一体となった患者像というものが浮かび上がってくる。介護と医療をより近づけることによって医療データと介護データをドッキングさせ、管理がしやすいようにして、また要介護の判定をやりやすいようにすべきである。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »