「新興感染症に対応した改革が必要」 ── 医療保険制度改革に向け、池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

医療保険部会_20200916

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は9月16日、医療保険制度改革の取りまとめに向けて議論した厚生労働省の会議で「新型コロナが終息したとしても、こうした新興感染症は今後いくつも出てくる可能性がある」と指摘し、「新興感染症の発生を踏まえた医療提供体制を中・長期的な視点で考え、新興感染症に対応した改革を進める必要があるのではないか」と問題提起した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)の第129回会合をオンライン形式で開催し、年内の取りまとめに向けた検討を進めた。

 前回7月9日の会合では、取りまとめの時期を年内に延期することを決定し、「次回以降、取りまとめに向けた具体的な議論を進めていく」とした。

 これを踏まえ今回の会合で厚労省は、これまでの議論を整理した上で、後期高齢者の窓口負担割合や大病院受診時の定額負担などの検討事項について論点を示し、委員の意見を聴いた。

 大病院受診時の定額負担については、「対象病院の拡大範囲」や「患者負担の増加額」などの論点を挙げている。
.

P14抜粋_【資料1】医療保険制度改革に向けたこれまでの議論等_20200916医療保険部会

.

受診抑制にならない配慮が必要

 質疑で、鳥取県知事の平井伸治委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長)は「新型コロナで高齢者の重症化が懸念される。高齢者に負担を求めることが受診抑制にならないような配慮が必要ではないか」と指摘した。

 大病院受診時の定額負担については、「一律に規模を単純化できるのか」と疑問を呈し、「地域特性や当地の病院の構成などの配慮も考えられるのではないか」との考えを示した。
.

一時的なものと考えずに対応を

 松原謙二委員(日本医師会副会長)は「必要なものは必要、変えるべきは変えていく。社会保障の医療保険は国民の幸福に資するものでなければならない。できる限り健康で長く生きていられる世界を目指すための保険である」と述べた。

 その上で、新型コロナへの対応策にも言及。「このウイルスも永久にいるわけではない。いつかはなくなってしまう。一時的な対応としてコロナウイルスに対して全国民が協力して闘っている」との認識を示し、「いろいろな費用や制度について、一時的なものとして考えずに対応していただきたい」と求めた。
.

十把一絡げでは医療体制が崩壊

 池端副会長は、新型コロナの影響について「医療提供体制の脆弱性が各地で露呈した」との認識を示し、松原委員の発言に触れながら「こうした新興感染症は今後いくつも出てくる可能性がある。中・長期的な視点で振興感染症に対応した改革が必要ではないか」と述べた。

 その上で「医療提供体制には地域差がある」とし、「民間病院と公的病院、入院医療と外来医療など、いろいろな要素による地域差もある」と強調。「十把一絡げでは大変な影響が出てしまい、医療提供体制が崩壊してしまう可能性がある」と懸念した。

 今後の議論の進め方については、「各地域ごとの影響度が分かるような資料も付けていただいて丁寧な議論をしてほしい」と求め、全世代型社会保障検討会議の中間報告に言及。「『大病院・中小病院』では、あまりにも抽象的。しっかりした定義づけをした上で議論しなければいけない」と述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

【池端副会長の発言要旨】
 新型コロナへの対応に絞って意見を述べたい。資料2ページの「議論の進め方」の中で、「全世代型社会保障検討会議では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い審議を一時中断した」との記載がある。今後の進め方について特に反対するものではないが、新型コロナウイルス感染症の影響は、決して議論が遅れただけではなく、「医療提供体制の脆弱性が各地で露呈した」という観点も踏まえる必要がある。
 松原委員がおっしゃったように、パンデミックとしては一時的かもしれないが、新型コロナが終息したとしても、こういう新興感染症というのは、これからいくつも出てくる可能性がある。新興感染症の発生を踏まえた医療提供体制を中・長期的な視点で考え、新興感染症に対応した改革を進める必要があるのではないか。
 受療行動が大きく変わってきている。大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について、私は全て反対するわけではないが、大きな地域差があることを踏まえて検討してほしい。
 平井委員がおっしゃるように、医療提供体制には地域差がある。今回のコロナ禍でも明らかである。例えば、民間病院と公的病院、かかりつけ医と病院、入院医療と外来医療など、いろいろな要素による地域差もある。
 十把一絡げでズバっと、「日本全国、これでいきましょう」とやってしまうと、かなり厳しい地域もある。大きな影響が出てしまい、医療提供体制が崩壊してしまう可能性があることを危惧する。
 ぜひ、新型コロナウイルス感染症に対する各地域ごとの影響度が分かるような資料も付けていただいて丁寧に議論していただけるとありがたい。
 例えば、資料11ページ(全世代型社会保障検討会議の中間報告抜粋)に「大病院・中小病院」とあるが、あまりにも抽象的すぎる。しっかりした定義づけをした上で議論して、定額負担はどうあるべきかということを考えなければいけない。そうした議論ができるような資料を事務局で準備いただきたいと思う。よろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »