第78回社会保障審議会医療保険部会 出席のご報告

会長メッセージ 審議会

第78回社会保障審議会医療保険部会 出席のご報告

 平成26年7月7日、「第78回社会保障審議会医療保険部会」が開催されました。当会からは委員として武久洋三会長が出席いたしました。
 
 今回は、主に療養の範囲の適正化と出産一時金について盛んな議論が行われました。
 

○療養の範囲の適正化について
 

・紹介状なしで大病院を受診する場合の負担のあり方について
 
 「個々の医療機関がもつ機能に応じた役割分担の推進」という観点から、紹介状なく大病院を受診する際に患者に自己負担を求める制度について議論が開始されました。これにより、大病院の高度な医療機能を重症患者に集中させる狙いです。対象となる医療機関や患者症例の範囲、負担額といった具体的な内容は今後継続して議論が行われる予定です。
 

・入院時の食事療養費、生活療養費について
 
 入院医療から在宅医療への転換が推し進められている状況下にあって、在宅療養との公平性の観点から、入院患者の給食について見直しが求められ、見直しのありかたについて議論が行われました。現在、入院患者には食材相当分の費用が自己負担として求められていますが、これを調理費も含めるかといった点について意見交換が行われました。
 
 武久会長は、現行の仕組みでは一般病床では入院時生活療養費、療養病床では食事療養費というように算定が区分けされている点に触れ「回復期リハ病棟や、地域包括ケア病棟へは一般病床からも療養病床からも参入できる。現行の制度では、療養病床から参入した場合に一般病床からの参入より負担金が上がり、同様の機能をもった病床であるにも関わらず由来の違いで負担額に差が生じてしまう可能性がある」との問題提起をされました。また「医療機能を積極的に充実させている療養病床もあれば、急性期病院として十分な機能をもたない一般病床も存在する。療養病床には入院期間の定めはないが、在宅復帰の推進という日本の医療全体の大指針が出来た現在にあって、制定から10年経つこのような病床区分が適切であるかどうかについても考えていただきたい」と意見を述べられました。

 
・国保保険料の賦課限度額及び被用者保険における標準報酬月額上限について
 
 これは、持続可能な社会保障制度の実現にあたっては世代間の公平のみならず、世代内の公平も必要であるとして、負担能力に応じて保険料の上限額を調整するという仕組みです。同じ問題が被用者保険でも生じており、被用者保険についても標準報酬月額の上限の引き上げが検討されています。委員からは政策の効果についてデータの堤出が求められました。
 

・国保への国庫補助について
 
 現在、国民健康保険へは被保険者の所得水準によらず定率の補助が行われています。国民負担の公平を図る観点から、所得の高い国民健康保険組合に対しては国庫からの定率補助の廃止が検討されており、部会での議論は廃止を求める声が多く上がりました。
 
 武久会長はこれらの4項目の議論に関連して「療養病床においても厚労省からは在宅復帰を要請されており、慢性期医療の現場でも退院を推し進めている。患者のしかるべき施設への移動や在宅復帰を目指し現場は努力しているが、特養・老健の自己負担金額は療養病床に比べて高額なため、なかなか退院してもらえない現状がある。スムーズな退院、在宅復帰のために、こうした現状についても勘案していただきたい」と意見を述べられました。
 

○出産一時金について
 
 また、中断されていた産科医療補償制度についての議論が再開されました。産科医療補償制度については以前の医療保険部会で検討が行われており、補償対象基準の見直し等が決定されています。今回は、出産時に支給される出産育児一時金の金額について議論が行われました。厚労省側は金額について現状維持の42万円を提案したものの、委員からは提示されたデータのばらつきや、物価がほぼ変動していないにも関わらず出産費用が向上していく点についての指摘などが行われ、慎重な議論を求める声が上がりました。最終的には厚労省の提案が受け入れられましたが、価格決定にあたってルールの策定が強く求められました。
 

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