賃上げの検証、「できるだけ細かく」 ── 中医協分科会で井川副会長

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20240104入院外来分科会

 医療従事者の賃上げに向けたシミュレーションが示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は「150区分にしても、今後しっかりと検証しなければ誤った方向に進んでいく可能性がある」と指摘し、「その検証はできるだけ細かく行う必要がある」と述べた。

 厚労省は1月4日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の令和5年度第12回会合を開き、当会から井川副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に「医療機関等における職員の賃上げについて(その2)」と題する資料を提示。前回の議論などを踏まえた再度のシミュレーション結果を示し、委員の意見を聴いた。

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シミュレーション賃上げ率は2.3%を想定

 今回のシミュレーションの賃上げ率は、「対象職種賃金の2.3%」という想定で実施している。
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01スライド_P28

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 賃上げ点数の設定の流れも示した。賃上げに必要な点数について、①初再診料等、②訪問診療料、③入院料──の順に設定する。

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02スライド_P29

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事務負担が同じであれば精緻に

 病院については、不足分を入院基本料等に上乗せすることを想定し、2つのパターン(①一律、②複数)で実施。論点を示した上で意見を求めた。
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03スライド_P50

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 委員の多くは②を支持した上で、賃上げ必要点数を5区分にするか(P48)、1点~150点に分けるか(P49)が議論になった。
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04スライド_P48

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 厚労省の担当者は「5つに分けても150に分けても事務負担としては変わらないと想定している」と説明した。
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05スライド_P49

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 委員からは「事務負担が同じであれば、きちんと収束した方向で点数設計をしたほうがいい」「より精緻なデータになるほうがいい」との意見が相次いだ。井川副会長もこうした意見に賛同した。

【井川誠一郎副会長の発言要旨】
 病院に関する全体的なシミュレーションについて、資料43ページ(一律の評価を設定)は比較的良い分布に見えるが、46ページ以降の病院類型別で見ると、施設数の少ない所や、小児入院医療管理料の届出病院や精神病棟のみの病院、療養病床のみの病院では、ばらつきが著しい。おそらく、n数を大幅に増やしても綺麗な分布にはならないだろう。そう考えると、一律の加算での対応は過不足のばらつきが非常にあって、かなり無理があると考える。
 一方、点数を複数に分けて病院ごとに評価をする設定する方法については、49ページにあるように、150区分に分けた場合は93%の病院、837施設が2.2から2.3%に収まる。非常に良好な結果が得られる。
 50ページの論点にあるように、事務負担を少しでも減らすためには、私は区分数を減らしたほうがいいかもしれないと考えていたのだが、先ほどの事務局の説明では、5区分でも150区分でも変わらないという。それならば、これは150区分1択しかないという印象を持っている。
 今回のシミュレーションを拝見した感想としては、例えば、同じ療養病棟で同じ点数を増点した場合に、賃金増率がほとんどない所から10%も上げられる所があること。今回、診療報酬で人件費の増額を施設間格差がないように補正するためには、いくつかの区分、おそらく150区分になると思うが、分けて対応しなければならないということは理解できるのだが、そもそも、なぜ、それほどの差が出てくるのかという点に関しては、まだまだ検証がされていないような気がする。 
 先ほど牧野委員がおっしゃられたが、透析などを頑張っていたり、内視鏡的なことをやっておられたりする病院では賃金増率が非常に低いということが、ある程度わかってはきているが、ほかの病院について、また、ほかの観点から見た場合にどうなるかという検証があまりなされずに、単に、その点数に応じて加算額というか、給与額のアップ率に応じただけで、そのまま増点していく。いくつかの区分、例えば、150種類に分けたとしても、それを増点していくというのは、今後、これをしっかりと検証していかなければ何か誤った方向に進んでいく可能性があると私は考えている。そういう意味で、その検証はできるだけ細かく行う必要があると考えている。

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