2種類の患者票、「すみ分けをどう考えるのか」 ── オンライン診療の調査で井川副会長

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井川誠一郎委員(日本慢性期医療協会副会長)_2022年10月12日の入院外来分科会

 入院・外来医療の調査案が示された厚生労働省の会合でオンライン診療の調査が議論になった。委員から「オンライン診療が普及していない現状ではデータにするのが極めて難しい」との声もあった。日本慢性期医療協会の井川誠一郎副会長は2種類の患者票について「すみ分けをどう考えるのか」と指摘した。

 厚労省は10月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和4年度第5回会合を開催し、当会から井川副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に、入院・外来医療に関する令和4年度調査の内容を示した上で、調査項目や調査対象によって区別されたA~F票の内容を説明した。この中で、オンライン診療について患者を対象に調査するE票とF票が議論になった。

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P11_【入-1】令和4年度調査の内容について_2022年10月12日の入院外来分科会

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2種類の患者票、「比較可能な構造になっている」

 オンライン診療等に関する調査についてE票では、外来を受診した患者を対象に「オンライン診療を受けた際に感じたこと」「対面診療とオンライン診療どちらを希望するか」などを調べる。

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P331_【入-1参考】調査票_2022年10月12日の入院外来分科会

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 これに対し、F票は「一般の方へのWeb調査」とし、E票と同様の内容を調査する。E票は約2,300施設、F票は約1,000人を対象に実施する予定。

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P340_【入-1参考】調査票_2022年10月12日の入院外来分科会

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 F票について厚労省の担当者は「医療施設に対して送付するのではなく、一般の方に対してウェブを通じて、受診していない方に関してもオンライン診療にどのような印象を持たれているかという設問を設けている。患者票とほぼ同様の内容なので一定程度、比較可能な構造になっている」と説明した。

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答えられる人の数は限られる

 質疑の冒頭、池田俊也委員(国際医療福祉大医学部公衆衛生学教授)は「F票に関して一般の1,000人をどのように抽出するのか。オンラインや電話診療の経験のある人はせいぜい2割、それ以下かもしれない」と懸念した。

 その上で、池田委員は「無作為に1,000人の方に聞いても、(対面診療との)比較の形で答えられる人の数は限られるように思うので、せっかくの設問の結果が十分に生かせないように思う」と指摘した。

 厚労省の担当者は「かなり工夫した調査設計が必要になる」とし、「今後、調査会社と設計するにあたって、年代をどうするか、どのような調査対象にするのか、ご指摘を踏まえて反映していきたい」と理解を求めた。

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データにするのは極めて難しい

 一方、猪口雄二委員(日本医師会副会長)は外来患者を対象に実施するE票について「電話再診は多少あるかもしれないが、オンライン診療はまだまだ普及していない現状から考えると、これをデータにするのは極めて難しい」との認識を示した。

 その上で、猪口委員は「どれぐらいの外来患者に対して、この調査を行うのか」と質問。厚労省の担当者は「情報通信機器に関する届出を行っている医療機関を含めた調査対象にして、一定程度、オンライン診療をやっている方々にご回答いただけるような工夫を行っていく予定」と答えた。

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結果の解釈は相当慎重に

 菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)もE票の調査対象について指摘。「オンライン診療を実施している医療機関は少ない」とし、「意識調査をする対象を吟味したほうがいい」提案した。

 その上で、菅原委員は「オンライン診療をやっている所に調査票を配布するようにしないと、結局、戻ってきたものがほとんど空振りになりやしないかと懸念する。無作為に選ぶことは大事だが、意識調査なので、どのような意向を持たれているのか、サンプルの中に含まれるような配布の方法も考えるべき」と述べた。

 Web調査のF票については、「高齢者がこの対象に入ってくるのか、バランスよく全体の意見を集約できるのか非常に不安」とし、「相当なサンプリングバイアスがかかると思う。Web調査で回答できる高齢者は、ほかの高齢者とは全く違う嗜好を持っている。その結果の解釈は相当慎重にしなければいけない」と指摘した。

 こうした議論を踏まえ井川副会長が発言。「E票とF票のすみ分けというのをどのように考えるのか。E票とF票の分布がどのように変わるのか」との問題意識を示した。

【井川誠一郎副会長の発言要旨】
 私もF票について述べる。E票とF票のすみ分けをどうするのか。E票では外来を受診した高齢者の回答が多いと思われる。一方、Web調査のF票は、どこかを受診されておられる方々などもかなり混ざってくる可能性が高い。E票とF票では、どのように分布が変わるのだろうか。
 今回の調査票の対象施設数は前回調査とかなり変わっている。例えば、A票は増えているが、B票やC票は減っている。療養病棟入院基本料等に関するC票の回収率は残念ながら他に比べて前回は低く、30%台と落ち込んでいた。今回も、n数がかなり減ってしまうのではないと心配している。今回、このように対象施設数を変えた理由をお聞かせいただきたい。
 調査票の内容については、今改定で評価された内容が反映されているので、結果が出るのを楽しみにしている。われわれは以前から入院直後からの栄養やリハビリの重要性を訴えてきた。今回の改定では、早期栄養介入管理加算や早期離床・リハビリテーション加算などの拡充が図られており、非常に評価している。
 当協会では、特定行為研修に力を入れている。現在まで250名ほどの修了者を出している。全国で5000名弱の修了者がいると思うが、そのうち250名ぐらいは当協会の修了者である。ただ、特定行為研修の修了者に対する診療報酬上のインセンティブが十分に付かず残念に思っている。前回改定では、タスクシェアリングやタスクシフティングの観点から精神科リエゾンチーム加算や栄養サポートチーム加算、褥瘡ハイリスク患者ケア加算、呼吸ケアチーム加算などで特定行為研修修了者の活用の推進が図られている。こうした調査もお願いしたい。
 中心静脈栄養については、療養病床で抜去する際に摂食機能訓練でも嚥下機能訓練は非常に重要となる。その中で摂食機能療法といわれるものは30分以上30分以内というような形で点数がわかれているのに対し、STが行うリハビリテーションは20分単位で、脳血管リハなど、呼吸器等で組み入れて実施する。そうすると、改善しようとする行為そのものに何種類かの行為が入ってきてしまい、非常にわかりにくい。そのため、実際にどの程度の比率でそういうものが入っているのかを調査していただければありがたい。

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【厚労省保険局医療課・加藤琢真課長補佐】
 療養病棟において回収率があまりよろしくないというご指摘をいただいた。これに関しては例年、いろいろな団体にお願いして回収率を上げるような努力をさせていただいている。そのような努力を今後もどのように行っていくのか、さらに検討していきたい。 
 また、調査票の対象施設数が減っているのではないかというご指摘については、今回、外来の対象が加わっているので、A票からD票で一部減っている医療施設数がある。ご指摘を踏まえ、さらに精査した上で、今後これまでの調査との比較可能性なども踏まえながら、適切な医療機関数を設定していきたいと思っている。
 特定行為研修に関しては、今回、155ページ目に設問項目として加えさせていただいているが、一定程度、配置されている状況等に関しても把握していきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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