医療・介護等の意見交換会、「定期的に実施を」── 審議報告のまとめで田中常任理事

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

介護給付費分科会

 令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)を取りまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「双方の意見をバランスよくまとめていただいた」と謝意を示した上で連携の重要性を改めて強調。「医療・介護等の意見交換会を同時改定年に限らず定期的に実施してほしい」と提案した。

 厚労省は12月18日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第236回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」の概要版と本文を提示。前回会合の意見などを踏まえた修正点を中心に厚労省の担当者が説明。本文の修正箇所などについて委員の意見を聴いた。田中常任理事は次のように述べた。

【田中志子常任理事の発言】
 日本慢性期医療協会の田中でございます。まずは、これまでの分科会での審議を、それぞれ私たちが申し上げましたこと、双方の意見をバランスよくまとめていただき、ここまでにしてくださいました田辺分科会長、また事務局の皆さまに心より感謝を申し上げたいと思います。
 私からは2点ほどの提案と1つのお願いがございます。まず、1つ目の提案です。医療・介護連携において平時の連携なくして急変時、緊急時の連携は困難です。今後は複数疾患を持つ高齢者が激増する中で、利用者さんは双方のセッティングを行ったり来たりすることが増えると思われます。
 医療と介護の顔の見える連携は、地域ごとの連携のみならず、中央でも平時の連携が必須と考えます。そのためにも、医療・介護等の意見交換会を同時改定年に限らず定期的に実施することを提案いたします。
 また、高齢者特有の誤嚥、転倒・転落は、どれだけ私たち事業者が気をつけていても起こりうるものであって、それを防ごうとすることが身体拘束などの要因の1つになっていると考えます。認知症対策だけでなく、これら老年症候群について広く国民や法曹界へ周知し、全てをすぐに施設の責任にすることがないよう、新たな検討を加えてはどうかと提案いたします。
 最後に、お願いでございます。繰り返しになって大変恐縮ですが、現場の私たちは人材不足の中で想像以上に、高い質のケアを提供するための努力をしている事業所がほとんどです。
 介護業界のケアの楽しみや魅力について、さらには日本の介護業界は国の財産、そして産業の1つとして省庁を超えて国民に発信する仕掛けを考えてほしいと思います。
 事務局におかれましては、介護の崩壊を起こさないように利用者、ケア提供者、住民全てが「制度があってよかった」と思えるような具体的な介護の魅力を発信する方策、例えば、新たな老健事業の設定などを考えてほしいと思います。そのために、私たち事業所は、いかなる協力も惜しみません。どうぞ、よろしくお願いいたします。

.

施行時期等の対応、「猛省していただきたい」

 介護報酬改定の施行時期も明らかになった。資料は示されなかったが、審議報告の質疑で東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)が質問。「人材の流出も含め、介護現場では経営が大変厳しい」と現状を伝え、「現場では今回の改定の施行時期について大変心配している。施行時期について教えていただきたい」と尋ねた。

 厚労省老健局老人保健課・古元重和課長は「医療と介護の同時改定であること。また、先般の委員の皆さまからの意見も踏まえて検討を進めてきた」とした上で、「医療機関との密接な関係のある居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリテーション、そして通所リハビリテーションの4つのサービスについては6月の施行とし、それ以外のサービスについては4月の施行との方針で進めたいと考えている」と答えた。

 これに対し、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「8月2日に中医協で(診療報酬改定の6月施行が)承認されたのに、それから4カ月半も経過した年末時点まで決まらず、また議論を深める場もなく、自治体、現場、みんなが本当に困ってきた」と苦言。「この事態を招いたことに関しては、ぜひ猛省していただきたい」と語気を強めた。

.

事務局の意気込みを伺いたい

 江澤委員は「令和6年はトリプル改定であり、これだけ医療と介護と福祉の連携が叫ばれながら改定時期の足並みが揃わず、分断を生じる結果となったことは極めて残念。医療・介護・福祉の一体感が削がれる」と苦言を呈した上で、6月施行に伴う対応を次のように求めた。

 「プラス改定となれば、その増額分は当然、事業所にサービス対価として支払われるべきであるから、仮に6月のサービスの施行分であれば改定率の3年間、すなわち36カ月に対して、それを34カ月で吸収する必要があるので、報酬単価について、34分の36を乗じるというのは最低条件だと思っている。全てのサービスがそのような対応も技術的には十分可能。自治体と連携し、例えば相談窓口を設けるなど、医療・介護現場に支障のないよう、手厚く丁寧な対応を求めたい」

 その上で、江澤委員は「このような混乱を6年ごとに生じるべきではない。次回、6年後の同時改定では、医療・介護・福祉の改定時期の足並みが揃うよう、強く要望したい」と述べ、「この点に関して事務局の意気込みを伺いたい」と見解を求めた。

.

審議報告の意図を十分に反映したい

 厚労省老健局の間隆一郎局長は「お叱りは真摯に受け止めたい」とした上で、「保険者の実務、経営状況、あるいは現場のシステム改修等の業務負荷などを総合判断して、先ほど老人保健課長から説明を申し上げたような形にするという判断をした」と理解を求めた。

 その上で、間局長は「医療と同じではないにしても、大なり小なり業務負荷はあるので、効率的・合理的なシステムのあり方、現場への負荷が小さい方法を考えいかなければいけない」とし、次の同時改定に向けて「診療報酬DXなどの動きもきちんとと見ながら十分な準備をして、将来は6月に改定することも検討していきたい」と述べた。

 間局長はまた、審議報告の取りまとめを受け挨拶。「(地域包括ケアシステムの深化・推進など)4つの柱を軸に深い議論をいただき、おまとめいただいた」と謝意を示し、「改定率を踏まえつつ、これまでご議論いただいた審議報告の意図を十分に反映できるよう、私どもとして検討し、また来年、お示しをしたい」と締めくくった。

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »