個別指導への名称変更、「違和感がある」 ── 橋本副会長

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橋本康子委員(日本慢性期医療協会副会長)_2022年1月20日の介護文書委員会

 介護報酬の届出書類などの簡素化や標準化、ICT化などを検討している厚生労働省の会合で、「実地指導」をめぐる議論があった。日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は「実施指導の名称を個別指導に変更することには違和感がある」と述べた。

 厚労省は1月20日、社会保障審議会・介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(委員長=野口晴子・早稲田大学政治経済学術院教授)の第9回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に、介護施設などへの「実地指導」という名称を「個別指導」に変更し、その内容を①介護サービスの実施状況指導、②最低基準等運営体制指導、③報酬請求指導──の3つに明確化することを提案した。

 その上で、②③については、「オンライン会議システム等を活用することが可能である旨を明記し、メリハリをつけた個別指導の実施を可能とする」との方針を示した。

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01スライドP29_【資料】介護分野の文書に係る負担軽減について_2022年1月20日の介護文書委員会

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「個別指導」はネガティブなイメージ

 質疑で、清原慶子委員(杏林大学客員教授)は「コロナ禍の実情を把握することが大事」と強調した上で、オンラインの活用を評価。「実地指導という言葉は、とにかく現場に行かなければならないと受け止められる」と名称変更を歓迎した。

 これに対し、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「名称の変更は改めていただきたい」と反対した。江澤委員は「医療業界において(個別指導は)ネガティブなイメージなので、今回の実地指導とは意味合いが違う」と指摘した。橋本副会長もこの考え方に賛同した。

 こうした意見に対し、厚労省の担当者は「コロナの関係でオンラインなど、いろいろな方法を検討する中で、名称を『実地』とするのは実態に合わない」とし、「集団(指導)と個別(指導)を切り分けるということで変更を提案した」と理解を求めた。

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オンライン、「効率化に資するのか」

 オンライン化に伴う負担をめぐる議論もあった。「オンラインの活用は自治体や事業者の負担を軽減する」と評価する意見がある一方で、「真に効率化に資するのか」と疑問を呈する声もあった。

 自治体の担当者は「例えば勤怠記録、タイムカードなど事業所に備え付けの書類の確認などをすることを考えると、現地に行くのと比較して『これは別な方法で』などと複雑になる可能性もある」と指摘した。

 江澤委員は「①の実地指導、②③のオンライン指導と2回に分けると二度手間になって負担になることが想定される」と指摘し、「従来のやり方と、今回の①から③の新たな提案について、全てどちらかを採用するのではなく、事業所が柔軟に選択できるようにすべきではないか」と提案した。

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事業者は真面目にやっている

 介護文書の負担軽減をめぐっては、事前規制と事後規制のバランスも問題になっており、この日の会合でも議論があった。

 遠藤健委員(全国介護付きホーム協会顧問)は「これまで介護行政においては、事業者に対する事前規制を重視する流れが続いてきた」と見直しの必要性を改めて強調。「介護業界も事業者自身が規律性を向上させて、行政は実地指導などによって事後規制する制度へ、そして違反に対してしっかり対処していく制度に徐々に転換すべき」と述べた。

 山際淳委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、細かい事前規制の事例を紹介した上で「これはさすがにやり過ぎではないか。事業者は真面目にやっているので信頼していただくことを前提に考えていただき、個別の指導や監査等でチェック機能を働かせればいい」と主張した。

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転ばぬ先の杖でリスク管理を

 簡素化やICT化をさらに進めるべきとの声がある一方で、自治体の負担も問題になった。浅野尚志委員(栃木県保健福祉部高齢対策課長)は「あとで大きな問題が生じるリスクを考えると、転ばぬ先の杖で、一定のリスク管理をしたほうがいい」とし、事前規制を弱めることで実地指導の負担が増えることを指摘した。

 厚労省は今回、「不備が少ない加算については添付書類の簡素化を進めること等を検討してはどうか」との対応案を示している。

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02スライドP17_【資料】介護分野の文書に係る負担軽減について_2022年1月20日の介護文書委員会

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市町村では「限界を感じている」

 山本千恵委員(神奈川県福祉子どもみらい局福祉部高齢福祉課長)は「加算の申出の際の添付資料を簡素化すると、実地指導の際に確認すべき項目が増えることも想定される」と懸念。「ともすれば実地指導の効率化と逆行しかねない。実地指導の負担が増える状況になると、都道府県等の組織体制の問題にもつながってくる」と危惧した。

 石川貴美子委員(秦野市福祉部高齢介護課参事兼高齢者支援担当課長)は「市町村レベルになると、職員が短期間で実地指導のノウハウを身に付けなければならないので限界を感じている」と明かし、実地指導を民間法人に委託しながら進めている現状を伝えた。

【橋本副会長の発言要旨】
 簡素化や標準化について非常に膨大なお仕事の量で、とてもご苦労されていらっしゃると思う。
 その中で、先ほど江澤委員もお話になっていたが、現行の実施指導の名称を個別指導に変更することには、私も違和感がある。医療分野では、個別指導と集団指導があるが、そういった分け方をするのか。名称を個別指導にする意味をお聞きかせいただきたい。

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〇厚労省老健局介護保険指導室・稲葉好晴室長
 集団指導は一定の場所に集めて講習等を行うもので、実地指導は面談方式という形で指針等についてお示しをさせていただいている。今回、コロナ感染症の関係もあり、オンラインなど、いろいろな方法も検討する中で、名称を「実地」とするのは少し実態に合わないので、「集団」に対し「個別」と切り分けるということで、個別指導への変更を提案させていただいた。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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