高齢者施設等との連携、有床診について見解 ── 中医協総会で池端副会長

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2023年12月20日の総会

 当会の池端幸彦副会長は12月20日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第574回会合に診療側委員として出席し、医療機関と高齢者施設等との連携や有床診療所に関する論点について見解を示した。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 医療機関と高齢者施設等との連携について
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 73ページの論点を踏まえ、コメントと質問をさせていただく。論点の2番目「介護保険施設及び障害者支援施設において医療保険から給付できる医療サービス」について、介護保険施設・障害者支援施設において対応が困難な医療行為等について医療保険からの給付を可能にする方針については概ね賛同したい。
 続いて、「血友病患者に係る医薬品の費用については、 血友病患者の療養の場を拡大する観点から、介護保険施設入所者における医療保険からの給付の取扱いと同様に地域包括ケア病棟や療養病棟等における包括薬剤の対象から除外する」との方針も賛成する。地域包括ケア病棟や療養病床等の包括範囲から除外していただくことに感謝したい。
 包括払いになっている医薬品等が出来高払いであれば受け入れてもらえるのに、包括範囲のために急性期病棟から受け入れてくれないという課題がある。例えば、神経難病、抗がん剤のほか、心不全の急性増悪の薬は非常に有効だが非常に高額の薬剤であるため、療養病床等や介護施設に入ると不採算になってしまうことがあって受け入れないケースもある。
 一方で、出来高払いを広く認めてしまうと、医療保険財政に大きな影響があるため、今後、高額な医薬品が新規収載されたときには、どのように整合性を図るか検討が必要であろう。何らかのルールづくりを考える時期に来ているのではないか。個別の薬剤ごとに単発で包括から外すかどうかを「点」で決めていては、なかなかルール化できない。この問題は今日、結論が出るものではないと思うが、そういうことも今後は考えていきながら、いかに病病連携を進めていくか、あるいは医療施設から介護施設への移行を進めていくかを考える。そして、できるだけ効率よく医療・介護の連携が図れるようにしていくこと。そうした視点も、医療・介護連携のという大きな流れの中では必要だろう。そこで事務局に質問したい。今回、「血友病患者の出血傾向の抑制の効能又は効果を有する医薬品の費用」について、「包括薬剤の対象から除外する」とした理由、または一定のルールがあれば教えてほしい。

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【厚労省保険局医療課・眞鍋馨課長】
 介護保険施設等に関する入所者に対し、医療保険から給付できる医療サービスについては、資料36ページにあるとおり、これまで医療技術の発展などに伴い徐々にその範囲を拡大してきた。例えば新しく承認された新薬や治療法がDestination Therapyに選ばれるなど、そういった環境を踏まえ、医療保険からの給付が適当ではないかと提案している。提案前のプロセスには当然、老健局とさまざまな調整、また実態の把握等を行わせていただいており、私どもとしては細かく実態を把握し、そして医療技術の進展も踏まえて、このように提案する。こういうプロセスを繰り返させていただくことになると考えている。
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【飯塚敏晃委員(東京大学大学院経済学研究科教授)】
 今、池端委員から、包括払いであれば受け入れられないが、包括外であれば受け入れるかもしれないという意見があった。これは保険給付の話だが、受け入れ側の老健等で、例えば技術的な受け入れが可能かどうかという点では問題はないのだろうか。
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【池端副会長】
 状態は安定しているが、ある薬剤を継続しないとADL等を保てない場合もある。薬剤費が入院料に包括されている病棟や介護施設などに移ると、その薬剤をどうするかという問題がある。つまり、医療的な対応はできるが、この薬剤を外したら難しいという場合がある。
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■ 有床診療所について
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 有床診療所の病床数が激減している。有床診は今や「絶滅危惧種ではないか」あるいは「世界遺産に登録したほうがいい」などという声もあるくらいに減少している。そうした中で、長島委員もおっしゃったように地域密着型で非常に頑張っている有床診がある。しかし、病床を持っているために、病院と同じように基準がかなり厳しくなって持ちこたえられない。少ない数の医師で支えている有床診では医師も高齢化し、閉院せざるを得ない有床診がどんどん増えているのは事実。有床診は地域密着型で、医療的なショートステイ等を担える。医療的ケア児などは、顔なじみの先生方にお願いして、1週間ぐらい同じスタッフに預けられれば家族は安心する。そういう地域密着型の有床診を何とかして残したい。そういう地域の思いもあると思う。もう少し大胆に緩和していただく、あるいは基準を一定程度まで緩和をしていただいて歯止めをしないと、地域密着型の必要なサービスが提供できなくなる。
 資料45ページに「有床診療所の地域包括ケアモデル」が示されている。こうした役割を担う有床診が地域で活躍していただくことが大事。それを進める方向で検討してほしい。
 支払側の委員から、有床診に管理栄養士の指導や訪問リハビリの機能などを入れてはどうかという意見があった。総論として私もそう思うが、実態として、診療所に管理栄養士やリハ職を配置することを求めると、かなりハードルが高くなってしまうので、もう少し使いやすい方法で提供できる方法はないか。
 例えば、資料62ページに「栄養ケア・ステーションと診療所との連携」について示されている。契約締結の仕方が非常に難しい。契約締結の課題は「診療所からの相談そのものがほとんどない」、「医師へ依頼方法を説明するが、実際の契約に結びつかない」、「事務処理に手間がかかる」の順で多い。以前も指摘させていただいたが、もう少し簡便な契約で算定できることを考えないと、なかなか進まないと思う。簡素化する方法を合わせて検討し、有床診を生かしていただく方法を考える必要がある。リハスタッフについても、地域のリハビリテーション支援センターとの連携ができないか。または、リハスタッフが多い回復期病院からの派遣などができないか。そういうことも含め、合わせ技で進めるべきだ。
 医療的ケア児のショートステイは非常に重要である。病院でも医療的ケア児のショートステイは非常に大変。お母さん方の不安もあるし、受ける側としても大変。いろいろな医療機器がついた状態で受けることに対しては病院でも大変なのに、さらに有床診の少ないスタッフで診るのは非常にハードルが高い。かなり思い切った加点、加算などで評価しなければ進まないことも事実だと思うので、検討していただきたい。

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