外国人技能実習生が安心できる共生社会を ── 制度の見直しで富家常任理事

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富家隆樹構成員(日本慢性期医療協会常任理事)

 外国人技能実習制度の見直しに向けた政府会議の提言などを踏まえて今後の方向性などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の富家隆樹常任理事は、技能実習生の子どもが在留資格の関係で不安定な立場にある現状を指摘し、「外国人が安心して技能実習を続けられるよう、安全・安心な共生社会を目指すべきだ」と述べた。

 厚労省は12月4日、外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会(座長=臼井正樹・神奈川県立保健福祉大名誉教授)の第3回会合を開き、当会から富家常任理事が構成員として出席した。

 厚労省は同日の検討会に「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の議論の状況を報告。新たな制度における転籍の在り方など10項目の提言内容を紹介した上で、構成員の意見を聴いた。
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01スライド_提言

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 富家常任理事は、提言の最終報告書に示された視点に「安全安心・共生社会」が掲げられていることに言及。自院で受け入れた技能実習生から家族の在留資格について相談を受けた内容を伝えた上で、「技能実習生の子どもに対する配慮についても検討すべき」と指摘した。
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02スライド_提言見直しに当たっての三つの視点(ビジョン)

【富家隆樹常任理事の発言要旨】
 令和5年度補正予算では、外国人介護人材確保の関連で、多くのご配慮をいただいた。感謝を申し上げる。
 有識者会議における議論の状況については、最終報告書などをご紹介いただいた。「見直しに当たっての三つの視点(ビジョン)」では、「安全安心・共生社会」が掲げられている。これに関連して意見を申し上げたい。
 先般、私どもの病院に勤務している技能実習生が結婚して、出産をされた。しかし、お子さんの在留資格がまだないそうで、6カ月間の特定活動ビザを取得している。技能実習の間は確約されているそうだが、6カ月ごとに更新しなければいけないという。通常であれば、家族滞在というかたちで子どもの在留資格が得られるのだが、技能実習生と特定技能1号に関しては現在、当てはまるものがない状況だと聞いた。
 有識者会議の最終報告書には「全ての人が安全安心に暮らすことができる外国人との共生社会の実現に資するものとする」との記載がある。この視点を踏まえると、技能実習生の子どもに対する配慮、在留資格等について検討していただければありがたい。外国人が安心して技能実習を続けて日本で生活できるようにと思う。5年間いうと、0歳の子どもが5歳になるまでの年月である。その間、在留資格が不安定である状況は精神安定上もあまり良くないだろう。ぜひ、ご検討をお願いしたい。

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3年要件を満たさない場合でも

 この日の会合では、技能実習生を受け入れるために必要な事業所の要件を中心に議論した。厚労省は同検討会に「事業所開設後3年要件について」と題する資料を提示。その中で、「検討の方向性」として①と②の要件を示した。会合では「①と②はアンドかオアか」という議論が展開された。

 厚労省は「事業所開設後3年要件を満たさない場合においても、以下の①又は②のいずれかを満たす場合には、介護職種の技能実習生の受入れを認めてはどうか」とした上で、①法人設立要件、②サポート体制がある場合──を挙げた。
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03スライド_P10検討の方向性

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サポート体制はチェックされている

 
 「事業所開設後3年要件」の見直しについて、出席した構成員からは「赤字の特養を見ればわかるように、法人設立後3年が経過しても経営が安定しているわけではない」として、「3年要件」を疑問視する声が相次いだ。

 一方、事業所開設後3年の要件を満たさない場合に救済される①と②については、②のサポート要件を重視する意見が多く、「①に加えて②も必要」との声や「②を満たせば①は不要ではないか」との意見もあった。

 技能実習生の受け入れ監理団体である埼玉県慢性期医療協会の会長も務めている富家常任理事は「入国後に受け入れる段階で、事業所のサポート体制はチェックされている」と指摘し、要件の緩和または廃止を主張した。
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20231204_第3回外国人材検討会

【富家隆樹常任理事の発言要旨】
 今回のご提案の内容に異存はない。ただし、経営の安定性の懸念の排除とは別の意味で、 技能実習生に安定した指導を実施するという観点では、サポート体制の要件は必要であると思うが、技能実習生を受け入れる多くの施設では、既にこのような体制があるように思う。あえて、さらに要件化するのは緩和ではなく、むしろ重くなってしまうのではないか。
 埼玉県慢性期医療協会は監理団体を務めている。監理団体の資料には、入国後の講習実施予定表があり、今回お示しのようなサポート体制は監理団体として既にチェックしているという実態があるように感じる。
 一方、「3年要件」については、経営の安定性への懸念が排除できないからという理由で設定されたようだが、改めて資料を見ると、EPA介護福祉士・EPA介護福祉士候補者、在留資格「介護」、特定技能のいずれも事業所開設後要件について「定めていない」としている。
 3年後でも経営の安定性が担保できない場合もあることを踏まえ、EPAなどにも要件が定められていないのであれば、この「3年要件」は不要としてもいいのではないか。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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