モチベーションにつながるインセンティブを ── 外国人材の検討会で富家常任理事

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富家隆樹構成員(日本慢性期医療協会常任理事)_20240322外国人材検討会

 外国人材の訪問系サービスなどへの従事について議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の富家隆樹常任理事は、初任者研修などの負担を懸念した上で「日本に来てくれるモチベーションにつながる給与以外でのインセンティブについて考えはあるか」と質問した。厚労省の担当者は「外国人の方々の活躍を見える化し、モチベーションを持てるようにしたい」と答えた。

 厚労省は3月22日、外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会(座長=臼井正樹・神奈川県立保健福祉大名誉教授)の第6回会合を開き、当会から富家常任理事が構成員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「訪問系サービスなどへの従事について」と題する資料を提示。これまでの意見や前回会合で実施したヒアリングなどを踏まえた「検討の方向性」について構成員の意見を聴いた。

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日本人の穴埋めの労働力ではない

 訪問介護等に関する「検討の方向性」では、「有資格者である訪問介護員等の人材不足が深刻な状況であり、また、訪問介護員等の高齢化も進んでいる」とし、「必要なサービスを将来にわたって提供できるように対応していくといった視点も重要」との考え方を示した。

 ただし、「外国人介護人材を単なる日本人の穴埋めの労働力として受け入れることは適切ではなく、外国人介護人材のキャリアパス等にも十分留意しつつ、事業所によるきめ細かな支援が求められる」としている。

 その上で、外国人介護人材の訪問系サービスの従事について「日本人同様に介護職員初任者研修を修了した有資格者等であることを前提」とし、「事業者に対して一定の事項について遵守を求め、当該事項を適切に履行できる体制・計画等を有することを条件として従事を認めるべき」とした。

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コミュニケーションアプリなどICTを活用

 「事業者に求める措置」については、「下記①~⑤の事項を適切に履行できる体制・計画等を有することについて、事前に巡回訪問等実施機関に必要な書類の提出を求める」とし、5項目の遵守事項を挙げた。

 このうち⑤では、「介護ソフトやタブレット端末の活用による記録業務の支援、コミュニケーションアプリの導入」などICTを活用する環境整備を求めている。
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 一方、「国が行う取り組み」については、基金の活用による研修や資格取得の支援、好事例の収集などを挙げている。

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 質疑で富家常任理事は「日本人でもドロップアウトの懸念がされるような研修時間。日本語の研修を加えると、かなりハードなキャリアパス」と指摘し、今後の対応などを尋ねた。

【富家隆樹常任理事の発言要旨】
 訪問介護に外国人人材の活躍の場が広がるのは素晴らしいのではないかと考えている。ただ、キャリアアップに関して、初任者研修は130時間の研修で、1年間で修了しようとすると週3時間の研修が必要。実務者研修450時間を含めると週3時間の研修を実務をしながら3年間続けなければいけない。日本人でもドロップアウトが懸念されるような研修時間ではないかと考える。さらに、日本語の研修を加えると、かなりハードなキャリアパスになるのではないかと懸念する。その研修も日本語で受講するとなると、外国からの研修生自身のストレスも相当、上がるのではないかと懸念している。 
 これから育成修了まで考えを広げても、外国人の方々には自由意志で日本に来ていただくので、その外国人人材の方々が、このハードなキャリアパスを踏まえて日本に来てくれるようなモチベーションにつながる給与以外でのインセンティブについて、何か厚労省でお考えになられているならば教えていただきたい。給与面に関しては韓国のほうが上だという話も聞こえてくる中で、給与面以外でのインセンティブについての考えをお聞かせいただきたい。

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【厚労省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室・吉田昌司室長】
 ご指摘の点、大切な視点だと思う。6ページ目。「国が行う取り組み」として、初任者研修を受講しやすくしていくようなところを財政的な側面も含めてしっかりとやっていくことは必要だと思う。また、修了しやすい環境整備を整えていくということも大切だと思う。現時点でも都道府県の基金なども活用しながら、資格取得の支援の取り組みや、あわせて外国人の方々のストレスに対し、メンタルヘルス的な側面のサポートをするような事業について地域の実情に応じて取り組めるようなメニュー設定もさせていただいている。そういうものも有効に活用しながら、外国人の方々がご希望に応じて長く日本で就労していただける、訪問で活躍いただけるような形にしていくことが必要だと思っている。
 モチベーションになるようなことについては、なかなか直接的なお答えにはならないのだが、仮にこの方向性をお認めいただいて、実際に訪問をやっていただくという状況になってくれば、しっかりと好事例等の把握をして、その中で活躍されている外国人の方々がどのように取り組み、どのような活躍をされているかもしっかり見える化し、日本はもとより外国の方々にお知らせをして、日本に来て働けば訪問の中でこういうお仕事ができる、こういう活躍ができるというようなことを、しっかりと見えるようにしていくことも1つのアイデアとしてあるかなと思っている。いずれにしても、しっかりと現場の方々のご意見をいただきながら、外国人の方々がモチベーションをより持てるような形にしていきたいと思っている。

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魅力ある制度で「選ばれる国」へ

 この日の会合では、15日に閣議決定された育成就労制度の創設等に関する法案について報告があった。改正法は「公布の日から原則3年以内に施行」としている。

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 「制度見直しのイメージ図」も示した。育成期間は3年間。無期限の滞在などが可能な「特定技能2号」などキャリアアップの道筋を明確化し、「魅力ある制度で『選ばれる国』へ」としている。

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 富家常任理事は新法成立後のスケジュールについて質問。厚労省の担当者は「国会審議を踏まえ、詳細を3年間で詰めていく」と答えた。

【富家隆樹常任理事の発言要旨】
 育成就労について、今国会で法案が通ってから育成就労が施行されるまでのスケジュールを教えていただきたい。「原則3年以内」とされているが、前倒しになる可能性についてもお願いしたい。
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【厚労省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室・吉田昌司室長】
 改正法の概要に「公布の日から原則3年以内に施行」、「準備行為に係る規定は公布即施行」と書いてある。全体の中身のある部分については3年以内に施行していくと聞いている。
 これから国会審議もあるので、いろいろな論点等が出てくるとは思う。それを踏まえて、より詳細を、その3年の間で詰めていくというような方向かと思う。より詳細なスケジュールというものは、現時点では持ち合わせていないので、順次対応がなされていくということになる。
 いろいろなケースがあると思うが、3年以内ということなので、国会のご審議なども踏まえながらしっかりと関係者で検討していくということだと思う。われわれとしては一定の時間がかかるという理解で受け止めている。

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