第138回社会保障審議会介護給付費分科会 出席のご報告

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第138回社会保障審議会介護給付費分科会 出席のご報告

 平成29年5月12日、「第138回社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、清水紘副会長が参考人として出席いたしました。平成30年度介護報酬改定に向けて、今回の分科会では、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」「小規模多機能型居宅介護」「看護小規模多機能型居宅介護」の現状と課題について議論されました。

 議題となったサービス類型はいずれも、要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供される地域密着型サービスです。

 清水紘副会長は、厚生労働省から提示された論点について、次の意見を述べています。

〔清水紘副会長の発言〕

1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護について

清水紘副会長平成29年5月12日◇ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のオペレーターをはじめとした人員基準や資格要件の在り方については、訪問介護の頻度を日中と夜間に分けて把握するなど、実態に即した検討を要する。

◇ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスを地域全体に行き渡らせようとする場合、まだまだ事業所数が十分とは言えない。事業所数が思うように伸びていないのは、通所系サービスや短期入所系サービスを併用する際の区分支給限度基準額の管理が煩雑なため、ケアマネジャーの理解が追いついていないことが原因の一つになっているのではないか。 
 また、居宅介護支援事業所の特定事業所集中減算の影響もあると思われる。なぜなら、たとえ利用者からのニーズが多いサービスであっても、そのサービスを提供する事業所が地域において少なければ、適切にニーズに応えようとすると特定の事業所に集中することになってしまい、かえって中立公平なケアマネジメントを躊躇させてしまうからである。

2.小規模多機能型居宅介護(小多機)及び看護小規模多機能型居宅介護(看多機)について

◇ 新たなサービス類型を増やすことが妥当な方法とは限らない。サービス類型を増やせば制度はより複雑になり、利用者にとってわかりづらいものとなる。たしかに、サービス供給量を増やす観点からは、看多機にもサテライト型看多機事業所の仕組みを導入することが考えられ、人材の有効な活用にも資するとは思うが、慎重に検証する必要がある。

◇ 小多機における訪問体制強化加算の算定率が27.4%と低いことから、小多機では、服薬の促し、水分補給、排泄の確認や介助など短時間の訪問サービスは行われているが、買物や調理、自宅での入浴介助など時間を要する訪問サービスはあまり行われていないということがうかがわれる。家族と同居している高齢者にとっては利用するメリットがあるが、単身の高齢者にとってはそれほど利用するメリットがあるとは言えないのが実状である。訪問サービスのより一層の充実が急務である。

◇ 小多機内のケアマネジャーに加えて、いわゆる外マネを置けば、小多機のサービス供給量のアップにつながるのではないか。というのは、居宅ケアマネジャーが外マネとして利用者の支援を継続できるようになれば、利用者も居宅ケアマネジャーも小多機の利用をためらわなくなるであろうからである。支援全体のケアプランの作成とその実績管理を外マネである居宅ケアマネジャーが行い、小多機のケアマネジャーが個別援助計画として居宅サービス計画を作成すれば、サービスの柔軟性と同時にその質も担保される。

◇ 小多機及び看多機では、医療ニーズの高い利用者への対応やターミナル期の利用者への対応も期待されている。この点については、小多機、看多機、居宅サービスそれぞれにおける看護師のサービス提供量や医療ニーズを比較検討した議論が望まれる。

◇ 平成27年度の介護報酬改定では、さらなる整備促進を図るため、看多機における事業開始時支援加算が平成29年度末まで延長された。この加算が区分支給限度基準額から控除されたことは、利用者負担を軽減する見地から、とてもよい方策であったと思う。今後も看多機のサービス供給量を増やしていくのであれば、再延長を検討してもよいのではないか。例えば、登録定員の90%を満たすまでとし、かつ、事業の開始から1年以内とするなど、登録定員数や算定期間によって制限する方法が考えられる。

 他の委員からの主な意見としては、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護の運営で採算をとるためには、サ高住に併設し、軽度者も含めて居住者全員を利用者とせざるを得ない状況があり、これを是正すべき。小多機については、内部にケアマネジャーを置いているからこそサービスの柔軟な対応が保たれているのであり、外付けのケアマネジャーを認めるべきかどうかの議論はすでに決着済みのはず」(鈴木邦彦委員・日本医師会常任理事)、「サービスの普及ありきの議論をするのではく、まず、自宅で暮らす要介護者から本当に必要とされるサービスであるのか精査が不可欠」(東憲太郎委員・全国老人保健施設協会会長)、「ケアマネジメントは第三者として外付けであるのが原則であり、小多機内にケアマネジャーを置くことによって臨機応変な対応ができる反面、利用者との関係が近すぎたり法人の方針に左右されることによる問題点やジレンマも抱えている」(鷲見よしみ委員・日本介護支援専門員協会会長)、「サービスの必要性を把握するためには、そのサービスが本来の目的をどれだけ果たしているのかという切り口からデータを集積し、分析すべき」(松田晋哉委員・産業医科大学教授)などがありました。

 今回の意見交換では、前回の分科会で鈴木邦彦委員が言及した地域包括ケア推進研究会が提案する「新型多機能サービス」についても話題となりました。この提案は、小多機の一類型として「訪問」「通い」「泊り」をフレキシブルに提供するサービスを追加するというものですが、委員からは、「今から新たなサービス類型を制度化するのではなく、定着しつつある既存のサービスによる多機能化、複合化を推進すべき」(鈴木邦彦委員)、「現在あるサービスをいかに効率よく運用していくことを考えることが先決。これ以上制度を複雑にするのは甚だ疑問である」(東憲太郎委員)など、否定的な意見が相次ぎました。さらに、田部井康夫委員(認知症の人と家族の会理事)から地域包括ケア推進研究会と厚生労働省との関係性を問われ、三浦明・老健局振興課長が、直接の関係はない、と回答する一幕もありました。清水紘副会長は、「新型多機能サービス」の創設に反対する鈴木邦彦委員や東健太郎委員の考え方に賛意を表明しております。

○第138回社会保障審議会介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000164649.html
 

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