第3回中医協・合同部会 出席のご報告

協会の活動等 審議会

2023年11月8日の合同部会

 厚生労働省は11月8日、中央社会保険医療協議会(中医協)費用対効果評価専門部会・薬価専門部会合同部会の第3回会合を開催し、当会から池端幸彦副会長が費用対効果評価専門部会の委員として出席した。

 この日の議題は「関係業界からの意見聴取について」。日本製薬団体連合会(日薬連)の上野裕明副会長が「高額医薬品(認知症薬)に対する対応」に係る意見と題する約10ページの資料を説明。診療側と支払側の質問に答えた。

 焦点の1つとなっている介護費用の取り扱いについて前回10月27日の会合では、介護費用の軽減効果などをNDB・介護DBの活用によって可能かどうかを研究者が発表。難色を示しながらも、わずかに残る可能性として「認知症高齢者の日常生活自立度」を挙げた。
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01スライド_P12_加藤源太

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 参考人として研究状況を報告した加藤源太氏(京大医学部附属病院診療報酬センター)は「認知症の治療薬の使用状況、あるいは、それに基づく認知症の程度の度合いの推移と絡めて分析することで介護費用にどう影響が出たかを評価することは、種々、調整が必要かと思われるが可能性としてはある」と説明した。
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02スライド_P13_日常生活自立度

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「介護者への影響が大きい」と業界代表

 今回の業界ヒアリングで日薬連の上野副会長は「レケンビ」という特定の医薬品の名称を使用せず、「アルツハイマー病治療薬」という言葉を使って説明。その開発の難しさを伝えた上で、イノベーション促進や創薬支援の必要性などを訴えた。

 その中で、介護費用の取り扱いについて上野副会長は、「アルツハイマー病は当事者だけでなく介護者への影響が大きいといった特性がある」と強調。「家族や介護者に関わる介護費用などを含む分析結果を用いた評価の実施を積極的に検討していただくようお願いしたい」と要望した。
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03スライド_09-1_業界資料

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薬より関わり方や環境で改善する

 質疑で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「これまでの検討において、介護費用等を含めた費用対効果分析には多くの課題があることが示されている」との認識を示した上で、「業界として、介護費用等を含めた分析は、どのようなデータを用いて実施することを想定しているのか。どの程度、分析が可能と考えられているのか」と尋ねた。

 上野副会長は「業界団体として具体的になっているものは、特に現在は持ち合わせていない」としながらも、「例えば、これまで10月27日の当該部会で加藤先生が指摘されたような介護レセプトデータに含まれる日常生活自立度を健康状態の代替指標とすることで費用対効果評価の1つになるのではないかという意見もある」と回答。「1つの可能性として考えていただきたい」と求めた。

 これに対し、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「認知症高齢者の日常生活自立度は認知機能を評価するものではなくて、BPSDとか日常生活に支障をきたすような状態を示すもの」と指摘。「臨床の現場の立場で申し上げると、どちらかと言うと薬よりは介護とか、人の関わり方、あるいは環境的な要因で結構、改善するものが多い。今、新たな生活機能にも着目した認知症の評価尺度も検討されている」と述べた。

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基金など、「幅広く検討することも」

 一方、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価することは最終的には薬価に転嫁することになる」との認識を改めて強調。「保険者の立場からは薬剤費の適正化をさらに検討せざるを得ないが、これを業界全体としてどのようにお考えなのか」と質問した。

 上野副会長は「認知症対策が社会保障とは別の国家施策として位置づけられるのであれば、これまでと同様に保険の中だけではなくて、例えば基金を設けて、そこに国家予算から保険とは別に手当てするなど、そういった方策もあるのではないか」と回答した。業界資料では、「幅広く検討することも考えられる」としている。

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04スライド_P5業界資料

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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