医療との連携で「困り感はないか」 ── 団体ヒアリングで田中常任理事が質問

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20230927介護給付費分科会

 令和6年度介護報酬改定に向けた関係団体ヒアリングで、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は医療との連携について「困り感はないか」と質問した。団体の代表は「増悪期や看取りの時に医療的なサービスがあれば心強い」と答えた。

 厚生労働省は9月27日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第225回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 今回は団体ヒアリングの1回目。意見陳述と質疑が2部構成で実施され、前半では「全国ホームヘルパー協議会」など7団体、後半は「高齢者住まい事業者団体連合会」など5団体の代表者らが意見を述べ、委員からの質問に答えた。
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経営努力のみでは対応困難

 第1部の意見陳述で、日本認知症グループホーム協会の河﨑茂子会長は「要望事項」として、①基本報酬の充実、②認知症ケアの評価の充実、拠点化の推進、③入居者の重度化、看取りへの対応の充実、④介護人材の有効活用──の4項目を挙げた。

 このうち①では、「経営規模の小さなグループホームにおいては、収支差率にかかわらず、収支差額は小さな額であり、この程度の収支差額では経営環境の変化に対応することが極めて困難」とし、1ユニットの収支差額が月6万6,000円との調査結果などを提示。「現在の基本報酬の水準では、もはや経営努力のみでは対応することが困難な状況」と訴えた。

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どうして経営できるのか嘆かわしい

 質疑で、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「創設当初から比べると入居者の重度化、看取りへの対応と役割が変化する中で、また小規模で家庭的なサービスが基盤なので経営的に大変苦しいと思う」と理解を示した上で、「経営状況の実態について教えていただきたい」と尋ねた。

 河﨑会長は「1ユニットの収支差額が6万6,000円というこの額で、われわれがどうして経営できるのか、本当に嘆かわしい」と窮状を伝えた。

 その上で、河﨑会長は「1ユニットは本当にボランティア的な心意気で、グループホームが好きだから、認知症の人が好きだから共に、という思いで支えられているのが現状なので、ぜひご理解を賜りたい」と述べた。

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介護業界は壊滅的な打撃を受ける

 第2部では、全国有料老人ホーム協会・全国介護付きホーム協会・高齢者住宅協会の3団体で構成する「高齢者住まい事業者団体連合会」の市原俊男代表幹事らが意見を述べた。
 
 質疑で、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「介護現場における人材不足が非常に危機的な状況にあること、物価高騰等による影響が介護事業者の経営をかなり圧迫していることが多く語られた」とコメント。「このまま放置していては、介護業界は壊滅的な打撃を受けると思うので、ぜひ次期介護報酬改定では大幅なプラス改定となるように、しっかりと皆で声を上げていかなければいけない」と述べた。

 田中常任理事は「人材不足や物価高騰の話があったが、医療との連携での困り感みたいなものは特にないのだろうか」と質問した。詳しくは以下のとおり。

【田中志子常任理事】
 高齢者住まい事業者団体連合会の皆さまに質問する。今、審議会等でも医療と介護の連携について、うまく連携できていないという話が出ている。今回、皆さまのご発言の中で、おしなべて、どの団体からも人材不足や物価高騰の話があった。これは当然、私たちも実感しているところではあるが、医療との連携というところでの困り感みたいなものについては特にないのだろうか。その点について教えていただきたい。
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【市原俊男参考人(高齢者住まい事業者団体連合会代表幹事)】 
 医療との連携は大事だと思う。在宅療養支援診療所の先生に月2回定期的に訪問いただいて、入居者の健康管理や慢性疾患の管理等をしていただいている。増悪期、疼痛ケア、あるいは本当に看取りの最後のところでバイタルチェックが毎日必要という場合には医療的なサービスがもう少しあると、住まい事業者としては大変心強い。
 有料老人ホームでは看護師の配置が義務付けられているので、全面的に外部の訪問看護に依存するのではなく、住まいにおいては看護師が日常的に勤務していることは非常に心強い配置だと思うので、それはそれで大事にしながら、増悪期や看取りの最後のところにおいては、もう少し医療との連携を深めていく、あるいは介護側、住まい側から医師に情報提供していくことが必要だと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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