トリプル改定に向け、障害部門と意見交換を ── 介護給付費分科会で田中常任理事

審議会 役員メッセージ

2023年5月24日の介護給付費分科会

 令和6年度の介護報酬改定に向けて「分野横断的なテーマ」が示された厚生労働省の会合で、医療と介護の連携強化を盛り込むよう求める意見があった。日本慢性期医療協会の田中志子常任理事はトリプル改定に着目し、「障害部門も含めた意見交換の場を継続的に設けてほしい」と提案した。

 厚労省は5月24日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第217回会合をオンライン形式で開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。

 この日の主な議題は「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」の1項目。厚労省はこの資料の中で、「例えば以下のような分野横断的なテーマを念頭に置き、議論してはどうか」と4項目を挙げ、意見を聴いた。

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検討項目【資料3】今後の検討の進め方_2023年5月24日の介護給付費分科会

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「医療・介護の連携強化」を明示すべき

 質疑で吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、同時改定に向けた意見交換会で医療・介護等の連携もテーマに挙がったことを指摘した上で、「分野横断的なテーマに『医療・介護の連携強化』を取り上げていただきたい」と要望。「医療・介護の連携強化は今後の介護政策に欠かすことのできない視点」と強調した。

 田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)は「4つのテーマに異存はない」としながらも、「今回は同時改定なので、医療と介護の連携強化も明示してはどうか」と提案。「医療と介護の複合的なニーズを持つ高齢者の増加が見込まれる中、医療ニーズを有する高齢者や看取り期のケアに関する体制整備が急務」と指摘した。

 東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)も「医療・介護連携について、介護で担う医療はどうあるべきかをしっかり議論すべき」とし、「医療・介護の連携ができる共通情報ツールの足がかりとなるような改定ができることを望んでいる」と述べた。

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医療・福祉分野も横断して見ていく

 こうした議論を踏まえ、田中常任理事は障害福祉サービス等報酬も含めた「トリプル改定」であると指摘。障害部門も含めた意見交換の場を設けて検討すべきと提案した。

 堀田聰子委員(慶応義塾大大学院教授)は「先ほど田中委員から『トリプル改定』という話があった」とし、「資格を持つ介護職が介護・医療・福祉それぞれの領域でどのように働いているのか、処遇などの実態が横断的に見られない」との課題を挙げた。

 その上で、堀田委員は「今後、介護のみならず医療・福祉分野も横断したかたちで、経営の観点だけではなく、人の観点でも横断して見ていけるデータを整えていくことも必要ではないか。中期的な話だが、伝えておきたい」と述べた。

 この日の会合で、田中常任理事は自立支援や介護人材の確保についても見解を示した。詳しくは以下のとおり。

■ 自立支援について
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 資料3「今後の検討の進め方」の方向性に異論はない。その上で、「分野横断的なテーマ」に挙げられた「自立支援」について提案したい。介護保険は自立支援を目的とするが、本人が移動して買い物に行く場合などの議論が不足しているように思う。本人の移動手段をどのように支援すべきか。当分科会における議論からは離れるかもしれないが、関係機関等と連携して検討することも非常に重要ではないか。意見として申し上げたい。
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■ 介護人材の確保について
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 介護や介助を担う「ケア者」の高齢化も非常に深刻である。訪問介護や通所介護におけるケアの質を上げたり、業務の改善を図ったりする必要性は言うまでもないが、問題は移動時間である。ケア者の移動時間も議論する必要がある。移動のために非常に大きな労力や時間をかけていることを忘れてはいけない。
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■ 今後の検討の進め方について
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 令和6年度の改定はトリプル改定である。現在、医療・介護のみならず、障害部門にもサービスが大きく振り分けられているので、障害部門も含めた意見交換の場を継続的に設けていただくよう、お願い申し上げる。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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