費用対効果制度、「軌道に乗り始めた」 ── 中医協部会で池端副会長

審議会 役員メッセージ

2023年4月26日の費用対効果部会

 費用対効果評価制度の見直しに向けた議論が始まった厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「軌道に乗り始めた」と評価した。公的分析などに携わる人材育成の必要性も指摘した。

 厚労省は4月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)費用対効果評価専門部会(部会長=飯塚敏晃・東大大学院教授)の第61回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が出席した。

 同部会の開催は昨年1月に令和4年度の改正案をまとめて以来、約1年ぶり。厚労省はこの日の部会に「費用対効果評価制度の見直しに向けた今後の議論の進め方(案)」と題する資料を示し、今後のスケジュールや進め方について委員の意見を聴いた。

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事例を積み重ねている状況

 財政影響が大きい医薬品や医療機器を主な対象とする費用対効果評価制度は2016年4月に試行的導入、19年4月から本格運用を開始している。その後、品目数は増加傾向にある。

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01_P3_【費-2】今後の議論の進め方_2023年4月26日の費用対効果部会

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 質疑で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は19年4月以降の推移に触れながら「事例を積み重ねている状況」と指摘。「薬価制度などを補完する観点から活用するのが大原則」と改めて強調し、「保険償還の可否に用いない。いったん保険収載した上で価格調整に用いる」との方針を堅持するよう求めた。

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保険収載の判断での費用対効果も

 一方、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は政府の改革工程表に言及し、「引き続きの検討となっている保険収載の判断に当たっての費用対効果や財政影響など、経済性評価を活用することについても、人材育成の状況等にも十分留意しつつ進めていただきたい」と述べた。

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02_P15_【費-2】今後の議論の進め方_2023年4月26日の費用対効果部会

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 改革工程表では、「保険対象外の医薬品等に係る保険外併用療養を柔軟に活用・拡大することについて、2022年度診療報酬改定での対応も踏まえ、引き続き検討」とされている。

 会議終了後の記者ブリーフィングで厚労省の担当者は「保険収載可否への活用を検討すべきという指摘ではなかった」との認識を示した上で、「今後の人材がどれくらい費用対効果として活用できるのか、人材との兼ね合いという話だったので、全体の体制をまずはしっかり進めていく」と述べた。

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人材育成、「計画的に進める」

 令和4年度の制度改革では、「今後の安定的な制度の運用に向けて、人材育成プログラムの拡充等、評価分析体制の充実に向けた取組を計画的に進める」としている。

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03_P9抜粋令和4年度診療報酬改定の概要 費用対効果評価制度_ページ_09

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 見直し案をまとめた2022年1月19日の同部会で厚労省の担当者は「こちらは具体的な改正事項はないが、われわれ担当としては長期的に取り組みを進めるよう、しっかりと進めてまいる所存」と強調している。

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関係者の意見を踏まえて

 厚労省は今回の部会に、令和4年度の「主な見直しの概要」を提示。その中で「分析体制の在り方」を取り上げている。

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04_P5_【費-2】今後の議論の進め方_2023年4月26日の費用対効果部会

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 質疑で池端副会長は人材不足の問題を指摘した上で、人材育成プログラムなどの進捗状況を質問。厚労省の担当者は「関係者の意見を踏まえ、改めて示したい」と答えた。

 この日の会合で示されたスケジュールによると、8月と11月に業界ヒアリングを実施する予定。

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05_P9【費-2】今後の議論の進め方_2023年4月26日の費用対効果部会

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 今後の議論の進め方については、「関係業界や費用対効果評価専門組織からの意見聴取も行いつつ、検討項目を整理」としている。

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06_P7【費-2】今後の議論の進め方_2023年4月26日の費用対効果部会

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【池端幸彦副会長の発言要旨】
 資料3ページ(品目指定数の推移)に示されているように、費用対効果評価の対象となる医薬品等が順調に増えている。費用対効果評価の制度が軌道に乗り始めたという印象を持っている。ただ一方で、以前から人材不足の問題がある。この会議の場でも事務局からお聞きしていた。人材育成プログラム等も進行中であると聞いているが、それについて今後の進捗や見込みがあれば、分かる範囲で示していただきたい。
 長島委員も言及したように、5年、10年経った後、ある程度の時期に来たときに、費用対効果の制度そのものの費用対効果という視点は絶対必要であると私も考えているので、いずれかの時期に検討を始めていただきたい。私も長島委員の意見に賛成である。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・中田勝己室長】
 人材育成については、非常に長期的な視点で計画的に進めていかなければならない課題と認識している。20ページ目(分析体制の在り方への対応状況)に、これまでの経緯を示している。近年、人材育成プログラムの成果も得られつつあり、公的分析に参加する人数も徐々にではあるが増えている傾向がある。
 限られた人材をより広い分野で担っていただくために、産・官・学のシンポジウムを開催するなど、広い分野の方々の理解や参加を得られるように努めてきたところである。今後の育成状況については、関係者の意見を踏まえて、改めて示させていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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