電子処方箋の二重取得防止、「技術は確定しているか」と池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

2020年7月9日の医療保険部会

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は7月9日、データヘルスの集中改革プランなどを議論した厚生労働省の会議で、「電子処方箋を二重に受け取ることができないことは技術的に現時点で確定しているのか」と質問した。厚労省の担当者は「同じ処方箋に基づいて2回調剤することはない」と答えた。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第129回会合をオンライン形式で開催した。

 池端副会長は、厚労省職員や遠藤部会長らと共に会場で出席した。報道関係者は別室での同時中継を閲覧し、YouTube でのライブ配信はなかった。

 この日の議題は3項目。①医療保険制度改革に向けた議論の進め方、②匿名レセプト情報等の提供に関する専門委員会(案)の立ち上げ、③データヘルスの検討状況──について、委員の意見を聴いた。

 このうち③では、電子処方箋の二重取得防止など、セキュリティ確保策に関する議論もあった。
.
2020年7月9日の医療保険部会2
.

心配するのは処方箋が本物かどうか

 質疑で池端副会長は、新型コロナウイルスの影響による処方箋の運用状況に触れながら、「一番、心配するのは処方箋が本物かどうか」と指摘。2022年夏からスタートする電子処方箋について「1枚の原本だということを確認して、二重に受け取ることはできないことが技術的に現時点で確定しているのか」と質問した。

 厚労省の担当者は、電子処方箋の仕組みを紹介した上で「調剤したという情報をオンライン資格確認等システムのサーバーの中に入れるので、そこに登録された中身をほかの薬局が見たとしても、それを改めて調剤することはできない」と説明。「そういう意味で、同じ処方箋に基づいて2回調剤することはない」と答えた。

 その上で、「詳しくどんな形にするかということに関しては、今後、要件整理をしっかりさせていただく」と述べた。
.

09_【資料3】データヘルスの検討状況について_20200709医療保険部会

.

マイナンバーと免許証の一体化に期待

 池端副会長はまた、マイナンバーカードの普及策に言及し、「発行数はずいぶん伸びているが、マイナンバーカードを持ち歩くことにまだ抵抗がある方が多いと思う」との認識を改めて示した。

 その上で池端副会長は、マイナンバーカードと運転免許証の一体化について質問。「進捗状況等について、分かっている範囲で教えていただきたい」と求めた。

 厚労省の担当者は「やれるかどうかを、これから検討する」と回答。マイナンバーカードと運転免許証が一体化されれば、「マイナンバーカードの普及がさらに進むと期待している。ぜひマイナンバーカードの普及に資するような形で進めていくように頑張っていきたい」と述べた。

 質疑応答の要旨は以下のとおり。

〇池端幸彦副会長
 2点、お伺いしたい。まず、「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プラン」のACTION2の電子処方箋について。ITにさほど詳しくないので確認したい。
 私が一番、心配するのは処方箋が本物かどうかということ。現在の運用では、最終的に実物を持参して確認した上で、ファックス等での情報伝達が可能になっている。
 では、電子処方箋の場合はどうか。1枚の原本を確認して、二重に受け取ることはできないことが技術的に、現時点で確定しているのかどうか。それをお伺いしたい。
 もう1点は、前回の会合でも発言させていただいたマイナンバーカードの普及に関して。マイナンバーカードの発行はずいぶん伸びているが、それを持ち歩くということにはまだ抵抗がある方が多いと思う。
 そこで前回、スマートフォンに入れることはできないかという指摘をさせていただいた。
 その後、運転免許証とマイナンバーカードに同時に情報を入れるような形を検討するというような報道があった。その進捗状況等について、管轄が異なるかもしれないが、分かっている範囲で教えていただきたい。以上、2点である。

.
〇厚労省医薬・生活衛生局・吉屋拓之企画官
 処方箋については、今、ご説明があったとおり、現在のコロナ対策の場合では、ファックスで送った後に実物を送らなければいけない。それはおっしゃるとおりである。
 今回の電子処方箋については、これから要件整理を始めさせていただいて、どういう形にするかを決めていくことになるが、紙のものというのは基本的にないという形になる。
 資料3の9ページ(電子処方箋の仕組み)の③をご覧いただきたい。医療機関が電子処方箋の登録をオンライン資格確認等システムの中で行う。
 この登録をした後は⑤の薬局で電子処方箋を取得し、その処方箋情報に基づいて薬局で調剤して、かつ、その調剤をする際に、処方箋を取得したということをサーバーの中に入れるので、その登録された中身をほかの薬局が見たとしても、それを改めて調剤することはできないという形になる。そういう意味で、同じ処方箋に基づいて2回調剤することはない。
 これについて詳しくどんな形にするかということに関しては、先ほど申し上げたとおりで、今後、要件整理をしっかりさせていただくつもりでいる。以上である。

.
〇厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長
 続いて、運転免許証について。マイナンバーとの一体化をやれるかどうかということは、これから検討するところである。
 マイナンバーカードを健康保険証にするということも実際に決まってから着工までにこれだけの時間をかけて一生懸命、丁寧に準備をしているわけである。運転免許証との一体化については、まだ、これから検討をして、どうなのかというところだと思う。
 もちろん、そうなれば、マイナンバーカードの普及がさらに進むと期待している。そういった状況も見ながら、われわれとしては、ぜひともマイナンバーカードの普及にも資するような形で進めていくように頑張っていきたいと思っている。

.

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »