介護DXの推進へ、「評価方法の統一を」 ── 介護保険部会で橋本会長

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橋本康子委員(日本慢性期医療協会会長)_2022年12月5日の介護保険部会

 介護保険制度の見直しに関する意見案が示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は介護DXの推進について「医療と介護で評価方法が違うのは致命的」と指摘し、「評価方法を医療・介護で統一することが必要ではないか」と提案した。

 厚労省は12月5日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)の第104回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」を提示。これまでの議論のうち「給付と負担」を除く項目について見直しの方向性を示し、委員の意見を聴いた。

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改めて議論して意見を取りまとめ

 取りまとめに向け、厚労省は11月14日の会合に「今後の進め方」を示し、地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について2回議論。その後、11月28日の前回会合で給付と負担について議論し、今回「意見案」が示された。

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02_【資料1】今後の進め方について_2022年11月14日の介護保険部会_ページ_2

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 12月5日の会合で厚労省老健局総務課の林俊宏課長は「これまで示した論点等について、投げかけ調であったものの語尾を『重要である』『必要である』など、具体的な方向性を示唆するかたちに変えている」と伝え、主な追加点などを中心に説明した。

 今回の意見案の最終ページは「給付と負担」のタイトルのみで、以下は空白となっている。林課長は「この意見案に給付と負担の内容、そして最後に『おわりに』という文章を付けて全体を意見書というかたちにしてはどうか」と説明。委員の発言は2時間に及んだ。

 この日の議論を踏まえ、菊池部会長は「本日、案をまだ示していない給付と負担を含めて、改めて本部会で議論して、さらに意見を取りまとめていきたい」とまとめた。同部会における橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

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2022年12月5日の介護保険部会_ページ_2

■ 介護DXの推進について
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 4ページ、介護DXの推進について。「医療機関や介護事業所が医療・介護情報等を共有・利活用できるようにする」としている。つまり医療と介護でDX化を進めていく方針だと思うが、医療と介護では身体状況などの評価方法が違う。医療・介護情報についてIT化を進めていくとなると、DX化の観点から、評価方法が違うのは致命的ではないのかと思う。 
 例えば、身体状況について医療ではFIMで評価している。そのまま介護でもFIMを入れればいいが、介護ではBarthel Indexを使っている。「この人は歩けるのか」という場合に、1つの項目を2つの評価から引っ張り出してこなければ整合性が取れない。歩けるかどうかわからない。食べられるかどうかもわからない。 
 看護やケアに関してもそうで、その量に関しても評価方法が違うので、まずは医療・介護で統一することが必要ではないか。

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■ 看護小規模多機能型居宅介護について
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 6ページ、看護小規模多機能型居宅介護について。看多機を進めていくのはとても重要であると思う。在宅の看護や介護で、中重度者への医療的な行為が多い人もいる。看取りもしなければいけない。そのため、特定看護師が活躍する場であると以前から思っているが、制度やコスト面などで、在宅看護等で活躍されている特定看護師は非常に少ないように思う。医師が現場にいなくても医療行為ができる看護師が必要であると思うので、そのあたりも考えていただきたい。
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■ かかりつけ医機能の強化について
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 9ページに「医療と介護の連携を強化するため、かかりつけ医機能の検討状況を踏まえて必要な対応を検討」とある。他の委員が指摘したように、かかりつけ医の定義をめぐる議論がある。一般の方々は「かかりつけ医」と聞くと、自宅近くのクリニックの医師をイメージすることが多いと思うが、実は中小病院の医師もかかりつけ医であるので、医療と介護の連携を強化するためには、そうした視点も必要ではないか。
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■ 住まいと生活の一体的支援について
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 10ページ。「介護保険制度における住まいと生活の一体的な支援の方策について、住宅分野や福祉分野などの介護分野以外の施策との連携や役割分担のあり方も含め、引き続き検討」とある。住まいと生活の一体的支援については、当部会で多床室の室料負担について議論があった。住まいと生活の一体的な支援を進める上では、室料負担との整合性を考えることも必要ではないか。
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■ 認知症施策の推進について
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 14ページ、認知症施策の推進について。「これまでの認知症に関する考え方の点検を行い、認知症に関する正しい知識の普及啓発に努める必要」との記載がある。ここで、「考え方の点検」とは具体的に何を意味するのか。
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【厚労省老健局認知症総合戦略企画官・和田幸典氏】
 この記載に関しては、これまでの介護保険部会での議論も踏まえたものと認識している。共生と予防を進める中で、全ての人が認知症になりうるという考えが広まってきているので、いまだ残っている古い考え方、すなわち「認知症の人には、できることが残っていない」というような考え方を転換していく必要があるということを書かせていただいた。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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