リハビリテーションの評価について見解 ── 定例会見で橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等

橋本康子会長_2022年12月8日の記者会見

 当会は12月8日、令和4年最後となる定例記者会見を開き、包括化の流れを踏まえたリハビリテーションの評価について見解を示した。会見で橋本康子会長は看護師や介護士らチームで取り組むリハビリの現状を説明し、「投入資源量に応じた点数制度」などを提言した。

 橋本会長は「今後、回復期リハ病棟が包括化されるなら」と前置きした上で、寝たきり防止へ向けてリハビリテーションの質を向上させる必要性を改めて強調。①必要なリハ単位数などの基準を設けるべき、②投入資源量に応じた点数制度とすべき──の2点を中心に見解を述べた。

 橋本会長の発言要旨は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。

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01_2022年12月8日の記者会見資料

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寝たきり防止へ向けた「質」と「意識」

[矢野諭副会長]
 定刻になったので、ただいまより令和4年12月の日本慢性期医療協会定例記者会見を開催する。今回のテーマは「リハビリテーションの評価はどうすべきか?」である。
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[橋本康子会長]
 本年最後の記者会見である。リハビリテーションの評価について見解を述べたい。診療報酬の包括評価が進む中で、回復期リハビリテーション病棟の診療報酬が包括化された場合にどうすべきか。
 
 まだ具体的な議論があるわけではないが、回復期リハビリ病棟の評価が包括化されたとして、まず必要なリハビリ単位数などの基準を設けるべきであること、そして投入資源量に応じた点数制度にすべきであることを提案したい。以下、具体的に述べる。

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02_2022年12月8日の記者会見資料

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 このスライドは以前の記者会見でもお示しした。寝たきり防止へ向けた慢性期医療の課題は、担い手の「質」「量」「意識(やる気)」の改善である。
 
 今回のテーマは、この中で「質」「意識(やる気)」に関わる。すなわち、リハビリテーションの質向上(時間報酬からアウトカム報酬)、質を高める教育と仕組み(投入資源量に応じた報酬制度)である。

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これまでの日慢協の提言

 
 当会はこれまでの会見などで、回復期リハ病棟の包括化について提言してきた。

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03_2022年12月8日の記者会見資料

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 まずリハビリの量については、「必要な時に必要な量を提供すべき」と主張している。患者の状態によっては1日9単位の上限を超えてリハビリを実施することが望ましい場合もある。1日に12単位、15単位実施できる時期もあるので必要なときに必要な量のリハビリを提供すべきである。
 
 また、疾患によって点数の差がある。脳血管は245点、運動器は185点など、同じ時間数でも差があるので検討が必要である。
 
 リハビリの提供者については、療法士などによるマンツーマンリハのみとなっているので、チームでリハビリを提供している現状を踏まえた評価に見直すべきである。

 ローカルルールの是正も課題である。都道府県国保により「運動器は6単位まで」「廃用症候群は6単位まで」という独自の査定がある。例えば骨折の患者さんに6単位を超えてリハビリをしても点数はもらえないなど、診療報酬点数表に記載のないローカルルールがあるので、これはいかがなものかと思っている。

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点数差の基準が異なる

 
 現在、回復期リハ病棟の点数制度はどのようになっているか。入院料とリハビリ料の2階建て構造だが、点数差の基準は異なる。

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04_2022年12月8日の記者会見資料

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 1階部分(包括)は体制やアウトカムによる点数差がある。2階部分(出来高)は疾患による点数差で、アウトカムによる点数差はない。

 では、回復期リハ病棟にはどのような患者さんが入院しているか。脳血管系、整形外科系(運動器)では、患者の状態、リハビリ単位数、在院日数に差があり、脳血管系に手厚いリハ医療が提供されている。

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05_2022年12月8日の記者会見資料

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疾患別で入院期間に差がある

 脳血管系は認知機能が低下している患者への対応が必要となる。さらに、PTに加えOT、STの実施により単位数は増加し、それらが改善につながっていると思われる。

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06_2022年12月8日の記者会見資料

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 脳血管疾患と運動器疾患についてFIMの推移を見てみると、両疾患ともほぼ同じ状態で退院しているが、入院期間には差がある。入院1カ月で顕著に改善し、重症の場合はそれ以降も改善している。

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07_2022年12月8日の記者会見資料

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 ここで見ていただきたいのは、6カ月後の脳血管の人と3カ月後の運動器の人がほぼ同じ60点以上から90点ぐらいまでのところまで到達している。リハビリの効果をきちんと出している。現在の回復期リハビリ病棟は効果が出る病棟であると思う。

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チームによるケア

 
 疾患別に見ると介助時間も異なる。看護、介護によるケアでは、脳血管系は運動器系に比べて1.5倍の時間の差が発生している。

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08_2022年12月8日の記者会見資料

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 毎日リハビリをしても、3時間ぐらいが限度である。それ以外の時間に看護師や介護士が少量頻回のリハビリをすることにより、ADLの改善につながっていく。食事介助、口腔ケア、入浴介助など、いろいろなケアがある。そういうケアを足すと、脳血管と運動器ではこれほど差がある。
 
 そうした中で、特に食事介助に時間を要する。入院時の脳血管系では1人につき30分程度が必要となる。こうしたケアについても配慮していただきたい。

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09_2022年12月8日の記者会見資料

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単位数、日数、投入資源量が異なる

 まとめると、脳血管と運動器では改善に必要なリハビリ単位数と期間が異なる。ケアにおいても疾患ごとの投入資源量に違いがある。

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10_2022年12月8日の記者会見資料

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 リハビリ単位数は15.7%の差がある。脳血管は各療法が必要なため、多くの単位数が必要となる。入院期間は33.8%の差がある。改善に要する期間は異なるが、両疾患とも入院初期は大きく改善する。ケア提供時間は33.2%の差がある。患者の状態によりケアの量が異なる。
 
 このように、疾患別にリハ単位数やリハ日数、投入資源量が異なるので、今後検討していただきたい。

 具体的には、リハ単位数などの基準を設けるべきであり、投入資源量に応じた点数制度とすべきである。

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11_2022年12月8日の記者会見資料

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 まだ半分も改善していないのに退院することになると、何のためのリハビリかということになる。どんどん寝たきりをつくってしまう。効果のあるリハビリをしていくには、1日のリハビリ単位数などの基準を設けるべきだと思う。

 また、リハビリやケアは療法士だけでなく、各専門職も提供している。脳血管や運動器など疾患別に必要なケア量は異なっているので、それに応じた点数制度とするべきではないかと考える。以上である。

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12_2022年12月8日の記者会見資料

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                          (取材・執筆=新井裕充) 

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