介護文書の負担軽減、医療分野と連携も ── 議論の取りまとめに向け、橋本会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

2022年9月29日の介護文書委員会

 介護分野の文書の標準化やICT化に関する最終報告に向けて議論した厚生労働の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長はこれまでの検討を振り返り「賞賛に値する」と評価した上で、「薬局やクリニックとの連携も必要」と指摘した。野口晴子委員長は「医療と介護の連携は非常に重要な指摘」とコメントした。

 厚労省は9月29日、社会保障審議会の介護保険部会の下に設置されている「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(委員長=野口晴子・早稲田大学政治経済学術院教授)の第12回会合をオンライン形式で開き、当会から橋本会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「介護分野の文書に係る負担軽減について」と題する資料を提示。これまでの議論や前回の関係団体ヒアリングで出された意見などを踏まえた「対応の方向性(案)」を示し、委員の意見を聴いた。

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次回は取りまとめの議論

 質疑で橋本会長は「介護分野のこうした取り組みは医療分野に比べて非常に進んでいる」と評価。電子カルテをめぐる問題など医療分野での遅れを指摘し、連携の必要性を語った。

 清原慶子委員(杏林大学客員教授、ルーテル学院大学客員教授)は「橋本委員がおっしゃったように、どの医療・福祉分野においても文書負担軽減は求められている。情報のシステム化も求められている」と賛同。「介護分野の文書負担軽減および電子申請・届出システムに係る取り組みの進捗はまさにこの分野の先行事例といえる」と述べた。

 その上で、清原委員は「引き続きさらなる進捗に向けて取りまとめていただくとともに、他の医療・福祉分野にも文書負担軽減および電子申請・届出システム等の普及が進むように発信していただくことが大切」と強調した。厚労省老健局・大西証史局長は「しっかり浸透していくように局長通知を心を込めて発出したい」と述べた。

 この日の議論を踏まえ、野口委員長は「次回は今回の議論をもとに、年内に社保審の介護保険部会に報告する取りまとめについて議論したい」とまとめた。

【橋本康子会長の発言要旨】
 介護分野の文書に係る負担軽減についてICT化や標準化などを令和元年から3年間にわたり熱心に細かく検討してきたのは賞賛に値する。介護分野のこうした取り組みは医療分野に比べて非常に進んでいると思う。
 一方、医療分野では、電子カルテが多くの病院で導入されているが、それぞれの病院でさまざまな電子カルテが使われている。現状、病院間やクリニック、介護施設、薬局などと連携がほとんどできていない。自院の中だけで電子カルテを使っているので、情報共有に関して何のための電子カルテかと疑問があるような状態である。
 介護分野でICT化を進めるのはとても素晴らしいと思うが、介護施設で状態が悪くなると病院に行くこともある。調剤薬局に行ったり、外来でクリニックにかかったりする。そこの連携も必要で、そこで使えるような、例えばケアプラン、入居時の身体状況などの情報が連携できるように考える必要がある。診療情報提供書は全て紙で、ケアプランも全て紙という状態だと、ここまで努力して労力を使ってICT化している意味が半減するのではないかと感じる。こうした問題も今後は考えていくべきだと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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