要介護者をつくらない制度を ── 医療介護の総合会議で武久名誉会長

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武久洋三名誉会長_2022年9月30日の医療介護総合会議2

 医療計画や介護保険事業計画の総合的な方針を検討する会議で、日本慢性期医療協会の武久名誉会長は「医療の現場に介護やリハビリの人をあらかじめ配置することによって要介護者が生まれるのを減らしていくという根本的なことを皆さんで一回、考えてみてくれないだろうか」と訴えた。

 厚労省は9月30日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第17回会合を一部オンライン形式で開催し、当会から武久名誉会長が構成員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「総合確保方針の改定に向けた論点及び主な意見について」と題する資料を提示。前回7月29日の会合で出された意見を紹介した。

 その中で、武久名誉会長の意見は資料5ページ「論点②:『地域完結型』の医療・介護提供体制の構築」に掲載され、「現状、慢性期・回復期医療には急性期病院から要介護者がたくさん紹介されている。急性期医療で要介護者になりかける人を減らすため、予防的な措置・仕組みが重要」と記された。

 この日の会合でも武久名誉会長は「要介護者をつくらないようにする制度が非常に重要」と改めて強調した。

【武久洋三名誉会長の発言要旨】
 私が前回の会議で述べた意見を資料1の5ページに載せていただいた。要介護の高齢者がどんどん増えている。このまま放置したらどうなるのか。私は日本慢性期医療協会の名誉会長をしており、急性期から回復期、慢性期の病院、そして特養や老健等も運営している現場の立場として述べたい。
 要介護者はどこから来るのか。2006年度の診療報酬改定で7対1の基準看護や慢性期病院の医療区分が入った。この時から既に16年経っている。入院患者の高齢化率は倍近くになっている。ものすごい勢いで急性期病院での入院患者の高齢化が進んでいる。 
 しかし、この16年間、一度も看護師の配置基準は変わっていない。現実問題として、急性期病院の現場の看護師は非常に困っている。40人の入院患者のうち30数人が高齢者である。夜中にトイレ行く。認知症の方もいる。とてもではないが対応できない。そうなってくると抑制することもありうるし、膀胱にバルーンを入れるようなことも起こりうる。急性期病院の看護師にとって非常に気の毒な状況になっている。
 ところがこの16年間、全然変わっていない。そのため、どういうことになっているか。元気なお年寄りがいきなり要介護者になるわけではない。何らかの病気になって医療の治療を受ける最中に要介護者になる例が非常に多い。臭いは元から断たねば駄目だ。急性期病院での高齢者の医療・介護等について、より改善していく必要があるのではないかと私は強く述べたい。 
 残念ながら、急性期の病棟には介護職員が十分にいない。リハビリをする職員もほとんどいない。介護職員やリハビリ職員が病院に勤めても、処遇改善のための交付金などの補助がほとんどない。
 こうした問題について検討する場として介護保険部会や中医協もあるが、この会議は医療と介護の総合確保の会議であるから、ここでしか言えない。ということで私は強く言いたい。何とかして、医療の現場に介護やリハの人をあらかじめ配置していただくことによって、要介護者が生まれるのを減らしていくという根本的なことを皆さんで考えてみていただけないだろうか。 
 いろいろな立場の方がおられるが、残念ながら私と同じようなことを言っていただける医療系の方はおられないので、ここで強くお話をしたい。要介護者をつくらないようにする制度、やり方というのが非常に重要である。このままいくと、どんどん介護保険は拡大していって果てしなくなる。急性期医療の病院でも現実に高齢者がどんどん増えてきて、現場にいる看護師はもうパンクしてしまう。こういう状況をなんとか変えていただくのがこの会議であると思うので、ぜひ検討していただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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