嚥下リハの実態等の検討を ── 池端副会長、中医協総会で提案

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年9月22日の中医協総会

 中心静脈栄養の患者の約9割が入院中に嚥下リハビリを実施されていないとの指摘について、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「実態として、脳血管疾患等リハビリで実施されている場合がかなり多いという印象がある」と指摘し、嚥下リハビリの実態等に関する検討を提案した。

 厚生労働省は9月22日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第489回総会をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に、令和4年度改定に向けた入院医療の「中間とりまとめ」を示し、了承された。
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ST等が嚥下リハを実施

 「中間とりまとめ」では、療養病棟入院料について患者の状態を中心に記載。入院の理由について、「経過措置(注11)では『リハビリテーションのため』が最多であった」とした。

 医療区分・ADL区分の項目では、「医療区分3の1項目に該当している患者の該当項目は、中心静脈栄養を実施している状態が最も多かった」と指摘。嚥下リハビリについて、「約9割の患者で入院中に実施されたことがなかった」と問題視している。

 質疑で、池端副会長は嚥下リハビリの実施状況に言及。「脳血管障害でST等が嚥下リハビリを実施している実態が出るようなデータがあれば検討してほしい」と求めた。
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一部修正された「中間とりまとめ」

 「中間とりまとめ」は、中医協下部の「入院医療等の調査・評価分科会」で9月8日に審議されて今回の中医協に示されたが、一部修正があった。

 同分科会委員の井川誠一郎常任理事は同日の分科会で、病床種別の重症度、医療・看護必要度について「『療養病床のほうが基準を満たす患者割合が低い傾向にあった』とまとめられているが、この数字には有意差が全くないので、このように書かれるのは困る」と訂正を求めた。

 今回示された「中間とりまとめ」の資料では、療養病床のほうが低い傾向にあったとの記載が削除されている。
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169_【診-1-2】【別添】資料編_2021年9月22日の中医協基本問題小委員会

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 このほか、地域包括ケア病棟の3つの役割に関する記載も修正され、「病床種別等も含めて、(中略)さらに分析」とした。修正前は、「病床種別等での分析結果も踏まえつつ」としていた。
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09-2_【診-1-1】中間とりまとめ_2021年9月22日の中医協基本問題小委員会

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 井川常任理事は「地域包括ケア病棟の3つの役割についてバランスが崩れる要因を検討すべきという意見であって、ベースに『病床種別』があるというニュアンスではなかった」と指摘していた。
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改定前の状況と大きく異なっている

 厚労省は9月8日の分科会での意見などを踏まえ、今回の基本問題小委員会に修正版を提示。同分科会の尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)が概要を説明し、「今後、必要な技術的課題について、引き続き最終とりまとめに向けて分析等を実施したいと考えている」と述べた。

 質疑で、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「前回改定後、医療現場は改定前の状況と大きく異なっている。コロナ禍に合わせて手直しすることが今回改定の重要なミッション」とし、「決して医療現場に大きな影響を与える改定を実施してはならない」と述べた。

 一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「コロナの状況だが、やはりやるべきことはやる。ポストコロナ、ウィズコロナをいずれ迎えるので、ここで足踏みをするのではなく、やるべきことをやることが重要なスタート地点になる」と強調した。
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嚥下リハ、「引き続き検討を」

 幸野委員は、入院医療全般について約15分間にわたって発言。その中で、療養病棟の経過措置(注11)について、「短期間にリハビリを多く実施して、減算されている入院料をなんとか埋めているという実態」とし、「介護分野に速やかに移行していただくような措置を検討すべき」と述べた。

 医療区分・ADL区分については、「医療区分3で1項目に該当している場合は中心静脈栄養が最も多い。前回改定でも問題視されて見直しされたにもかかわらず、嚥下リハが9割の患者に実施されていない実態が分かった」とし、「医療区分における中心静脈栄養の取扱いと、嚥下リハの推進について、引き続き検討していただきたい」と述べた。

 続いて開かれた総会で、池端副会長は嚥下リハの実施状況について検討するよう求めた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。
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2021年9月22日の中医協総会

 「中間とりまとめ」の11ページから12ページ、療養病棟入院基本料の「医療区分・ADL区分」について確認したい。
 11ページで、「医療区分3の1項目に該当している患者の該当項目は、中心静脈栄養を実施している状態が最も多かった」としている。そして、嚥下リハビリが少ないのではないかという指摘がある。
 一方、12ページで「嚥下リハビリについては、脳血管疾患等リハビリテーションにおいて実施されている場合も考慮するべきではないか、との指摘があった」としている。 
 実態として、脳血管疾患等リハビリテーションにおいて実施されている場合がかなり多いという印象を持っているので、今後、もし可能であれば、脳血管障害でST等が嚥下リハビリを実施している実態が出るようなデータがあれば、ご検討いただきたいと思う。以上、要望である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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