コロナの重症化検査、入院時の判断にも ── 池端副会長、中医協総会で

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年2月3日の中医協総会

 コロナ患者の重症化リスクを判断する検査について日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「地域で入院コーディネートに携わっている者として、この検査を使いたいという印象を持った」と評価した上で、「入院扱いにするかを判断するような使い方は可能か」と尋ねた。厚労省の担当者は「受け入れの判断は各医療機関の裁量によると考えるので、そうした判断の際の一助になる」と答えた。

 厚生労働省は2月3日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第474回会合をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の主な議題は、①臨床検査の保険適用について(審議事項)、②再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて(審議事項)、③公知申請とされた適応外薬の保険適用について(報告事項)──の3項目。

 このうち、①②の審議事項はいずれも了承されたが、①については、対象患者の範囲について議論があった。

 保険者の代表は、検査の対象患者を限定的にする方向で主張を展開したが、診療側は、軽症や無症状の陽性者にも広く検査すべきと強調。厚労省の担当者は「医師の判断に委ねる」とし、緩やかな解釈を示した。
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予測販売金額は年7.8億円

 今回、保険適用が承認されたのは、シスメックス社の「HISCL IFN-λ3試薬」で、読み方は「ヒスクル・インターフェロン・ラムダ・スリー」。

 この検査は、血清中のインターフェロン-ラムダ3を測定し、新型コロナウイルス感染症患者の重症化リスクの判定を補助する。

 保険点数は、肝炎ウイルス関連の検査を参考に340点とした。企業側から提示された市場規模予測によると、使用患者数は年間11.5万人、販売金額は年7.8億円となっている。
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「医師の判断で実施していただく」

 本検査の対象者について厚労省医療技術評価推進室の岡田就将室長は「入院が決定している患者、また総合病院の外来に来院している患者で、重症化と関連する基礎疾患を有する場合など、COVID-19の診断が付いており、重症化リスクの評価が必要な場合」と説明した。

 また、本検査が血液を用いた検査であるため、「血液検査が実施可能な状況において実施されることが想定される」と補足した。

 その上で、岡田室長は「基本的には医師の判断で、その他の情報等を加味して実施していただく」との認識を示した。
 
 同日の総会に示された「留意事項通知案」では、「COVID-19 と診断された患者」とし、「呼吸不全管理を要する中等症以上の患者」を除外している。
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01スライド_P2抜粋【総-1】臨床検査の保険適用_20210203中医協総会_ページ_2

              2021年2月3日の中医協総会資料「総-1」P2から抜粋
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「医師の判断に委ねるのは納得できない」

 質疑で、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「『呼吸不全管理を要する中等症以上の患者を除く』という書き方しかされていない」と不満を表し、「軽症や無症状の患者も対象になるようにとられるので、もっと明確に細かく記載すべきではないか」と指摘した。

 岡田室長は「現時点においては、先ほど申し上げた患者が想定されるが、こうした患者に絞るほどの科学的エビデンスは存在しないので、基本的には医師が必要と判断した患者に実施された場合には算定できる」と緩やかな解釈を示した。

 幸野委員は「対象患者を医師の判断に委ねるのは納得できない」などと反論し、客観的な基準を明示する必要性を指摘。「診療の手引き」の重症度分類に言及した上で、「酸素濃度 SpO2 の値によって酸素投与を行うかが決められるべきではないか。酸素投与の判断はあくまで SpO2」などと主張した。

 岡田室長は「SpO2 も含めて、医師が必要と判断した患者に酸素は投与される」と説明し、医師の裁量に広く委ねる方針であることを重ねて強調した。
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02スライド_診療の手引き_ページ_23

                    「診療の手引き・第4.1版」P29から抜粋
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入院の受け入れ判断の一助になる

 診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「COVID-19が陽性になった患者で無症状、または軽症の患者にとって非常に役に立つ。軽症以下の方にとって非常に朗報になる検査」と評価した。

 支払側からも同様の声があった。松浦満晴委員(全日本海員組合組合長代行)は「陽性の判断をされた後に重症化リスクがどうなるのか、患者としてはすごく心配でたまらないので、ぜひ積極的に検査していただきたい」とコメントした。

 池端副会長は「COVID-19の陽性が出た段階で入院扱いにするのか、自宅療養やホテル療養でいいのかという判断基準になる。早期退院にもつながる」と評価し、「入院扱いにするかを判断するような使い方が可能なのか」と質問した。

 岡田室長は「臨床情報の1つであるので、こういった情報も含めて医師において判断され、受け入れの判断は各医療機関の裁量によると考えている」とし、「そうした判断の際の一助になる」と答えた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 対象患者の範囲等について
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 今の幸野委員の発言にも関係する点だが、岡田室長の説明について再確認したい。
 地域で入院コーディネートに携わっている者として、この検査を使いたいという印象を持った。すなわち、COVID-19の陽性が出た段階で入院扱いにするのか、自宅療養やホテル療養でいいのかという判断基準になる。早期退院にもつながる。
 軽症と思っていても突然、重症化することがある。インターロイキン6はサイトカインストームに対しては有効かもしれないが、それ以外の重症化も把握できるような何らかの重症化マーカーが必要だった。そこで質問だが、入院扱いにするかを判断するような使い方が可能なのかどうかをお尋ねしたい。
 また、ホテルや自宅などで療養していて症状が変化してきた場合に、例えば医師が自宅やホテルなどを訪問して、そこで検体を採ることは保険適用になるのか。あるいは、それは行政検査として実施されるべきなのかもお聞きしたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長】
 まず医療機関への入院等の対応についての参考となり得るかということについては、臨床情報の1つであるので、こういった情報も含めて医師において判断され、受け入れの判断は各医療機関の裁量によると考えているので、そうした判断の際の一助になるものと認識している。
 また、訪問診療などで算定できるかについては、通常の検査であるので算定できる。

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■ エビデンスの集積について
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 本検査の「臨床上の有用性」に関する資料によれば、コロナ患者32例のうち、初回採血時に既に重症化していた患者10例を除外した22例について有用性を検証しており、検査結果と最終的な重症度の全体一致率は「感度」「特異度」とも非常に高く、90%近い値が出ている。
 先ほどから委員の方々が指摘しているように、本検査をいわゆる「トリアージ的」に使うと、相当多くの検査数になると思う。
 そのため、収載直後のできるだけ早い時点で本検査の結果を検討し、このプラス・マイナスの閾値が正しいのか、有用性がどの程度まで確保できているのかを検証をしてほしい。そして、その検証結果を中医協に示していただきたい。
 今後、そのような検証を重ねることで入院時のトリアージにも有用性が出てくると思う。そのため、できるだけ早い段階で、本検査に関する結果を教えていただくことは可能かどうか、お尋ねしたい。

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【厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長】
 現在、本検査を含めたコロナの重症化マーカーについては、国立国際医療研究センターで前向き研究がなされている最中であるので、その研究結果がまとまり、ご報告できるようになった段階で、中医協の先生方にお示しをさせていただきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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