「病棟薬剤師にインセンティブが必要」 ── 次期改定に向け、池端副会長

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2021年7月14日の中医協総会

 令和4年度診療報酬改定に向け、薬局や薬剤師の役割などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「病棟薬剤師の業務が高度化・多様化しており、病棟薬剤師の配置を強く望んでいるが、採用がなかなか困難」と現状を説明し、「診療報酬上のインセンティブが必要」と述べた。

 厚労省は7月14日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第483回総会をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として参加した。

 厚労省は同日の総会に「調剤(その1)」と題する140ページの資料を提示。最終ページに3項目の論点を挙げ、委員の意見を聴いた。

 資料の構成は、①薬局、薬剤師を取り巻く状況(P2~29)、②調剤医療費(P30~34)、③調剤に係る診療報酬上の評価(P35~138)──となっており、このうち③では、対物業務や対人業務の評価、重複投薬やポリファーマシー等への対応、ICTの利活用などを挙げている。

 池端副会長は資料の中で、25ページ(病院の薬剤師の業務と役割)、76ページ(ポリファーマシー対策に関する指針等)に関連して意見を述べた。
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025_【総-5】調剤(その1)について_2021年7月14日の中医協総会

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076_【総-5】調剤(その1)について_2021年7月14日の中医協総会

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薬剤師が果たす役割は大きい

 この日の会合では、調剤報酬に関する140ページの資料を厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官が約30分にわたって説明した。

 質疑で、島弘志委員(日本病院会副会長)は「医療における薬剤師が果たす役割の大きさを事務局から十分に説明していただいた」と評価した上で、チーム医療における薬剤師の役割に着目。病棟薬剤師を診療報酬上で評価した「病棟薬剤業務実施加算」の拡大を求めた。

 島委員は「同加算の対象に療養、結核、精神病棟が追加されたが、地域包括ケア病棟、回復期病棟も入院患者の薬剤管理、服薬指導は非常に重要であり、この2つの病棟を対象病棟にぜひ加えていただきたい」と要望した。

 島委員はまた、「外来患者に対して手術前中止薬の説明、指導やハイリスク薬を使用している外来患者に対して薬剤師が薬の指導を行った際の新たな評価を希望する」と述べた。
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医薬品の適正使用を進める

 薬剤師を代表する立場の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「薬剤師、薬局が地域包括ケアシステムの中で多職種と連携を取りながら、地域住民、患者への安全・安心な医薬品提供のため、より積極的に取り組み、多くの国民が医薬分業のメリットを実感できるよう責務を果たしていくことは薬剤師、薬局の使命」と強調した。

 その上で、有澤委員は「薬剤師、薬局は全ての医薬品の使用状況を一元的・継続的に把握し、患者の安全・安心な薬物治療を担い、医薬品の適正使用を進めることによって薬剤師が期待される役割を全うすると理解している」と述べた。
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基本診療料に包括して評価を

 城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「今般の新型コロナウイルス感染症の流行を機に、たとえ近い将来コロナが終息しても、医療機関や薬局は今後も人的、物的、時間的費用を費やして感染対策を万全にしていかなければならない」との認識を示した。

 その上で、城守委員は「こうした基本的な診療行為の費用については当然ながら継続すべきであり、基本診療料に包括して評価することも検討すべき」と提案した。
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関係者同士の情報共有が必要

 城守委員はまた、ポリファーマシー対策にも言及。自身が委員として参加した厚労省医薬・生活衛生局の「高齢者医薬品適正使用検討会」での議論を振り返りながら、「処方する医療機関同士、また療養環境が変化するときの施設同士、関係者同士の情報共有が必要」とし、同検討会がまとめた指針を活用した取り組みに期待を込めた。

 こうした意見を踏まえ、池端副会長が発言。城守委員らの意見に賛意を示した上で、病棟薬剤業務実施加算やポリファーマシー対策について意見を述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 病棟薬剤師の評価について
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 これまで発言された有澤委員、城守委員、松本委員のご意見に、基本的に私も賛成である。私からは2点、意見を述べたいと思う。
 まず1点目は、今、島委員がおっしゃったことと全く同じ点である。25ページにあるように、病棟薬剤師の業務は非常に高度化・多様化しており、病院そのものとしては病棟薬剤師の配置を非常に強く望んでいるところだが、一方で、採用がなかなか困難なケースもよく見られる。正直なところ、給与面も含めて待遇の違いも一部あるのではないかという意見もある。
 もちろん、病院としての企業努力等々も必要かと思うが、市中の調剤薬局に勤務されている薬剤師の待遇とはあまりにも、特に給与面の対応が大きく違う。ケースによっては10万円以上違うという話もある。
 ここをなんとか少し改善していただかないと、なかなか病棟薬剤師の確保が難しいのではないかと思うので、ぜひ、その辺で病棟薬剤師業務の多様化へ、何らかの加算等を考えていただける等々、診療報酬上のインセンティブも必要ではないか。
 先ほど島委員もおっしゃったように、病棟薬剤業務実施加算がまだ取れない病棟種別があるので、ぜひ、お願いしたいと思っている。

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■ ポリファーマシー対策について
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 2点目は、これも城守委員が少し触れられたが、76ページにあるポリファーマシー対策について。これに関しては、1号側・2号側とも共通して希望される課題ではないかと思っている。
 これについて、76ページに示されている。これは医薬・生活衛生局のマターであるとは思うが、高齢者の医薬品適正使用の指針の「総論編」と「各論編」、そして「始め方と進め方」という非常にいいものが出来上がっている。
 この会議には城守委員も参加していただき、ちょっと手前味噌だが、私もこの「高齢者医薬品適正使用検討会」で約3年間にわたって議論した内容である。ポリファーマシー対策を進めるためにも非常にいいガイドラインになっいるのではないかと思う。
 これをぜひ利用できるような報酬上の何らかの条件付けなどもあると、もっとポリファーマシー対策が進むのではないか。
 そこで質問だが、これは医薬・生活衛生局の医薬安全対策課が担当であると思うが、同課と連携しながら、こうした指針をもっと利用できるようにするため、診療報酬上に何らかの条件を付けることを検討しているのかどうか。そして、連携等もとれているのかどうか。それについて、お考えがあれば、お答えいただければと思う。

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【厚労省保険局医療課・紀平哲也薬剤管理官】
 池端委員から、ポリファーマシー対策に関連して質問があった。「高齢者の医薬品適正使用の指針」が医薬・生活衛生局から出されており、それとの連携について、どのようにしているのかという質問を頂いた。
 本日、お示しした資料の80ページ(外来患者への重複投薬解消に対する取組の評価)を見ていただくと、例えば「服用薬剤調整支援料2」のように、薬局側から医療機関に対し、重複投薬等について、それを解消するための提案等を行う取り組みを評価した点数がある。この点数の算定において、ご指摘いただいたような高齢者の医薬品適正使用の指針を参考に、こういった提案を行うなど、現状の算定要件と言うか、その際の参考として、お示しはしている。今後も、医薬・生活衛生局と連携をしながら、活用について検討していきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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