令和4年度改定、「後ろ倒しになるか」 ── 池端副会長が懸念

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01_2021年9月22日の医療保険部会

 令和4年度診療報酬改定の基本方針などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「令和2年度改定のスケジュールとほぼ同じように進められるのか、少し後ろ倒しになる可能性があるのか」と懸念した。厚労省の担当者は「日程が大きく変わることはない」と述べた。

 厚労省は9月22日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭部・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第145回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「令和4年度診療報酬改定の基本方針の検討について」と題する資料を提示。その中で、「改定に当たっての基本認識」の例として「新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築」を挙げ、次期改定の重点課題に位置付ける構えを見せた。

 一方、改定のスケジュールは前回改定を踏襲し、2月初旬に改定案を厚生労働大臣に答申する予定としている。
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02_2021年9月22日の医療保険部会
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全ての医療機関が影響を受けている

 質疑で、池端副会長は「基本的な視点については全体的に了解できる」としながらも、「医療提供体制についての視点が目につく」と指摘。「コロナの患者さんを診ている医療機関だけではなくて、全ての医療機関が何らかの影響を受けている」と強調した。

 その上で、令和2年度の医療費が過去最大の減少となったことに触れ、「日本の全ての医療機関に影響している。非常に苦しんでいる医療機関も多いことをご理解いただき、いろいろな施策について具体的な方向性を示していただきたい」と述べた。

 厚労省が示した「改定の基本的視点と具体的方向性」では、「医療計画の見直しを踏まえた新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取組」が例として挙げられている。
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プラスにはまだ戻っていない

 この日の医療保険部会では、医療費の動向に関する議論があった。厚労省は同部会に今年4~5月の医療費を暫定版として提示。それによると、コロナの影響がない令和元年の同月と比べて4月はマイナス1.9%、5月も2.5%と減少している。

 厚労省保険局調査課の西岡隆課長は「昨年4月、5月の状況に比べると医療費の水準は大きく回復しているように見えるが、まだコロナの影響を十分に受けている状況であり、対前々年同月比で見てプラスにはまだ戻っていない状況」と説明した。
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コロナ前を上回る水準に戻っている

 医療費に関する質疑で、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「4月、5月ともにマイナスという数字が示されているが、私どもの集計では1人当たり医療費は前々年度である令和元年度との比較においてはプラスで増えており、コロナ前の令和元年度をやや上回る水準にまで戻っていると認識している」と述べた。

 佐野委員は「コロナ禍によって令和2年度の医療費がもちろん大きく下がったが、一方で、令和3年度の医療費の動向はこれから先の医療費を見る上で大変重要で、しっかりと注視する必要がある」と指摘。「厚労省においても可能な限りの分析をお願いしたい」と求めた。

 安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「協会けんぽのデータでも対前年度比で4月は14.7%増、そして対前々年はマイナス0.1%、5月が17.7%増で対前々年が0.8%増というデータになっている」と補足した。
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あまりにも乱暴過ぎる議論

 これに対し、松原謙二委員(日本医師会副会長)が反論。「緊急事態宣言が出た中で医療機関が協力をして、受診しなくてもいいように対応した。つまり人為的に(増減時期を)ずらしたのであって、『戻っている』という論理はおかしい」と指摘した。

 松原委員は「その事実を見ないまま、『儲かっている』と、もし思っておられるのならば、それは間違いである。今、一生懸命努力している医療機関が痛みを負っていることをお忘れになっては困る」と述べた。

 池端副会長も同様に反論し、「4月と5月だけを見て、令和元年度と比べて戻ったという議論はあまりにも乱暴過ぎる。現場にいる医師として非常に腹立たしい。もう少し慎重な議論をしていただきたい」と語気を強めた。

 池端副会長の主な発言要旨は以下のとおり。
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03_2021年9月22日の医療保険部会

■ 改定の基本方針について
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 基本的な視点については全体的に了解できるものであると思っている。その中で、各委員がおっしゃったように新型コロナウイルス感染症に対する対応をどのように考えるのか、その影響をどう考えるかが課題である。どうしても医療提供体制についての視点が目につくかと思うが、今回のコロナの感染症はパンデミックと言われる事態であり、コロナの患者さんを診ている医療機関だけではなく、全ての医療機関が何らかの影響を受けている。医療機関に対する支援としては、補助金や診療報酬が考えられる。このバランスということになろうかと思う。
 今回のコロナ禍では、かかりつけ医の役割が改めて見直され、その重要性が国民の間で認識できた。これも重要な視点であろう。
 令和2年度の医療費は約1.4兆円の減で、過去最大の減少である。日本の全ての医療機関に影響していることをご理解いただきたい。コロナの患者を直接診療しているか否かにかかわらず、今、非常に苦しんでいる医療機関も多いことをご理解いただき、いろいろな施策について具体的な方向性を示していただきたい。
 持続可能な社会保障制度を貫くことは必要である。疾病構造の変化が生じていることも踏まえて十分に丁寧な議論をして、今後、令和4年度の改定に向けて検討を進めていただきたい。

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■ 改定のスケジュールについて
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 資料の5ページに令和2年度の診療報酬改定のスケジュールが示されているが、これを今年度に当てはめると、どうなるか。私の認識では、近く総選挙が行われて内閣が変わることになる。そのため、令和2年度改定のスケジュールとほぼ同じように進められるのか、少し後ろ倒しになる可能性があるのか、現時点での見通しがあれば教えていただきたい。
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【厚労省保険局総務課・榊原毅課長】
 現段階で確たるものはないが、いずれにしても年度内にある程度進めて、予算編成全体ということであろうと思うので、そういう意味では日程が大きく変わるということはないという前提で議論を進めていただければと思っている。
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■ 医療費の動向について
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 松原委員がおっしゃったことと繰り返しになるが、特にこの4月と5月だけを見て、令和元年度と比べて戻ったという議論はあまりにも乱暴過ぎると思う。
 現場の立場で考えると、コロナ禍で大変だった時期には、緊急を要しない手術等々を全て後回しにせざるを得なかった。耳鼻科や整形などの手術は1~2カ月、後回しにしてコロナ患者を受け入れた。そして、コロナが少し落ち着いた時にまた戻して、そこで手術などの急性期医療をして、やっと戻るかなと思った時にまたコロナが拡大するということがずっとこの1年半続いている。今までできなかったいろいろな治療をして、少しもとに戻った。おそらく(感染者が急拡大した)6~8月の数字は、また大きく落ち込むのではないか。
 先ほど松原委員がおっしゃったように、診療科によってずいぶん違う。4月、5月だけを見て「戻った」と言うのはあまりにも失礼である。現場にいる医師として非常に腹立たしい。もう少し慎重な議論をしていただきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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