「利益ある民間等は過疎地にサービス提供を」 ── 10月28日の介護保険部会で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)_20191028介護保険部会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は10月28日、将来に向けた介護サービスの基盤整備などを議論した厚生労働省の会議で「保険料を払っているのにサービスがないのは公的保険として適切か」と疑問を呈した上で、「莫大な利益を上げている民間事業者もある」と指摘し、「利益が出ている所は過疎地に一定程度のサービスを提供することを考えてもいいのではないか」と提案した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第84回会合を開き、介護サービス基盤と高齢者向け住まい、科学的介護の推進、制度の持続可能性の確保などについて論点を示し、委員の意見を聴いた。

 このうち介護サービスの基盤整備について厚労省は「施設サービスと在宅サービスや医療との連携など、関係サービスとの連携をより一層強化していくべきではないか」「生活面に困難を抱える高齢者に対しては、住まいの支援と生活支援を一体的に実施していく必要があるが、どのような支援の方法が考えられるか」などの論点を挙げた。
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厚労省老健局老人保健課_20191028介護保険部会
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過疎地における各施設の機能について検討を

 質疑で武久会長は、まず施設系サービスの在り方に言及し、「特養や老健など施設ごとに機能が決められているが、地方では施設が1つしかない場合がある」と指摘。特養については、「終の棲家だけの機能では済まない場合もある」とし、老健については「在宅復帰施設と言いながら終の棲家的な機能を果たしている所もある」と現状を説明した上で、「過疎地における各施設の機能について、ご検討いただけたらありがたい」と述べた。

 武久会長はまた、「過疎地では保険料を払っているのにサービスがない。これは公的保険として適切なのか。保険料を払ったら、近くにサービスがあってほしいと思うのが国民として当たり前」との認識を示し、「公的介護保険なので、ある程度の利益が出ている所は過疎地に一定程度サービスを提供することも考えていただいてもいいのではないか」と述べた。
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20191028介護保険部会
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【武久会長の発言要旨】
  「資料1」(介護サービス基盤と高齢者向け住まい)について意見を述べる。特養や老健など、いろいろな施設がある。それぞれ、「終の棲家」や「在宅復帰施設」などの機能が決められている。しかし、実際に地方の現場では施設が1つしかないこともある。その場合、特養は「終の棲家」という機能だけでは済まない場合もある。老健は「在宅復帰施設」と言いながらも、終の棲家的な入所も受けないと仕方のない地域もある。そのため、過疎地における各施設の機能について、もう少しご検討していただけたらありがたい。
 また、過疎地では保険料を払っているのにサービスがない場合がある。これは公的保険として適切なのだろうか。保険料を払ったら、近くにサービスがあってほしいと思うのが国民として当たり前だと思う。
 一方、民間事業者の中には莫大な利益を上げている所もある。社会福祉士法人でも結構利益が出ている所もある。そこで提案だが、ある程度の利益が出ている所は過疎地に一定程度サービスを提供するということも少し考えていただいてもいいのではないか。公的介護保険であるのだから、そのような方法も考えるべきではないか。
 空き家の利用についても検討が必要である。一人暮らしの高齢者が増えており、空き家も全国で増えている。リバースモーゲージは現実には進んでいない。田舎で家がだんだん朽ちていく。日本の財産として、もう少しうまく使えないかという感じを持っている。
 資料3(制度の持続可能性の確保)については、被保険者がどれだけ要介護状態になるかということに関係する。フレイルなどで要介護者になる場合もあるが、病気をして病院に入ったあとで要介護者になるケースもある。身体拘束が非常に多くの医療現場で行われている。膀胱に管を入れるような「抑制」もある。要介護者に移行する要因を医療現場でなくすようにすることも非常に重要である。
 このほかの議論として、ケアプランを有料にした場合、そのお金を誰が払うか。家族が払ったら、家族の要望を聞かざるを得ないところがあるので、ここが1つのポイントだと思う。当然、要介護者の利益のために家族は動いてくれるとは思うが、一部にはそうではない場合もある。その辺についても、ぜひ対応していただきたい。
 最後に、介護医療院について医療の立場から述べる。介護医療院には医師や看護師がいて、医療機器がある。検査もすぐにできる。この介護医療院に介護療養型医療施設や医療療養病床からどんどんと転向している雰囲気かと言うと、必ずしもそうでないところがある。介護医療院を10万床以上にするという厚労省の計画に、われわれも大いに協力させていただきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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