日病協「第145回代表者会議」 出席のご報告

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日病協「第145回代表者会議」 出席のご報告

 平成28年11月25日、日本病院団体協議会(日病協)の「第145回代表者会議」が開催され、武久洋三会長ならびに池端幸彦副会長が出席いたしました。今回は、中央社会保険医療協議会(中医協)等諸会議の報告の中から、武久洋三会長と池端幸彦副会長が言及した議題および論点をクローズアップしてお伝えいたします。
 

1.「中央社会保険医療協議会総会」および「中央社会保険医療協議会薬価専門部会」の報告
  ~毎年の薬価改定(経済財政諮問会議の方針)~

 
(猪口雄二・全日本病院協会副会長による報告)
○高額な抗がん剤である「オプジーボ点滴静注」の薬価が、平成29年2月から50%引き下げられることになった。今回の「オプジーボ点滴静注」の薬価引き下げについて国は、「期中改定」ではなく、「緊急的な対応」という言い回しを使用している。

○高額薬剤の適正な使用を進めるため、中医協では、「対象医薬品の使用が最適だと考えられる患者の選択基準」および「対象医薬品を適切に使用できる医師・医療機関等の要件」を盛り込んだガイドライン(最適使用推進GL)の策定を検討してきており、今年度は、「オプジーボ点滴静注」および「レパーサ皮下注」について試行的に作成される。

○内閣府の経済財政諮問会議では、状況の変化に応じて柔軟に見直すことができるよう、薬価を毎年改定するという方針を固めつつあるようだ。もし、薬価を毎年改定することになれば、スケジュール的に薬価調査を実施する余裕はないので、企業の予想年間販売額に基づいた判断をせざるを得ないことになろう。

(池端幸彦副会長の発言①)
 薬価が改定されれば、必然的に診療報酬に影響を及ぼすことになる。薬価だけが改定されても、診療報酬が改定されなければ実務は動いていかない。内閣府の主導ということもあり難しい面もあろうが、薬価改定を毎年実施するというのであれば、診療報酬の改定も毎年実施することができるのか、という論拠をもって、断固反対しなければならない。期中改定の例のように、引き下げられた財源が診療報酬本体に充てられることなく、社会保障費抑制にまわされるのが一般化してしまうのは、何としても避けなければならない。
 

2.「医療計画の見直し等に関する検討会」
~次期医療計画における基準病床数の算定式(案)、特定機能病院の在り方~

(池端幸彦副会長の発言②)
 療養病床の基準病床数について、現行の算定式では「介護施設対応可能数」をあてはめることになっているが、次期医療計画の算定式では「在宅医療等対応可能数」をあてはめるという案に変わっている。おそらく、「医療区分1の患者数の70%」を在宅医療等の患者数として推計するという地域医療構想の考え方をここに組み入れようということなのであろうが、これでは療養病床の基準病床数が大幅に下がり、必要とされる病床数は少ないという結果が出ることになってしまう。一体、どのような経過を経て変更に至ったのか。

 この池端幸彦副会長の質問については、西澤寛俊先生より、「地域医療構想における病床数は医療需要の変化に応じた2025年の必要病床数であるが、基準病床数はあくまで、現時点において必要とされる病床数がテーマとなっている。したがって、もし、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所における在宅医療への取り組みが今現在なければ、療養病床の基準病床数は上がることになる」との説明がありました。
 
 また、加納繁照先生(日本医療法人協会会長)からは、「『介護施設対応可能数』は特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを想定したものあるが、それに加えて、現在検討されている『新たな施設類型』も考慮することができるよう『在宅医療等対応可能数』に文言を変えたのだと理解している」との見解が述べられました。

 以上の意見交換を受けて、武久洋三会長は、以下の持論を述べています。

(武久洋三会長の発言①)
 2025年に向けた制度改革の全体を俯瞰すると、国は、急性期病院を含む一般病床を削減し、その削減した分を回復期リハビリテーション病床や慢性期病床あるいは在宅に移していきたいという構想を持っていることがわかる。急性期病床に90日も患者が入院しているのは不可解であることに、国もやっと気付いたのである。平成26年度に特定除外制度が廃止されたが、一般病床はすべて急性期病床で、療養病床はすべて慢性期病床である、とは一概に言えない。

 急性期病床が削減されれば当然、慢性期病床に患者が移ってくることになる。慢性期病床のうち、介護療養病床や4対1看護配置を満たさない医療療養病床25対1は施設または住居への転換策が採られ、慢性期病床については、きちんと治療を行っている慢性期治療病床だけが評価されるということになるであろう。

 「2025年の医療機能別必要病床数の推計結果」という内閣官房情報調査会の資料によると、高度急性期病床を19.1万床から13万床に、急性期病床を58.1万床から40.1万床に、回復期病床を11万床から37.5万床に、慢性期病床を35.2万床から24.2~28.5万床にシフトしていくという見とおしのようだ。ただし、推計はあくまで推計なので、「新たな施設類型」の動向も含めてよく注視していく必要がある。いずれにしても、一般病床と療養病床を単純に対比するのは止めにして、日本病院団体協議会としてフラットに議論し、中医協等の諸会議では、病院団体全体の立場から発言していくべき局面に来ている。

 武久洋三会長はまた、楠岡英雄先生(独立行政法人国立病院機構理事長)が「特定機能病院の在り方について、都道府県単位や地域医療構想調整会議ではなかなか有意義な議論ができない。特定機能病院の現状について、全体をまとめるかたちで議論できる場を設けることはできないだろうか。特定機能病院はかく在るべき、というご意見をいただくことができれば刺激になり、今後の方向性が見えてくるように思う」と発言したのに対し、次のように述べました。

(武久洋三会長の発言②)
 現在、9つの大学病院が地域包括ケア病棟の届出を行い、稼働している。今後さらに地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟を運営する特定機能病院が増えてくれば、それぞれの病棟にふさわしい医師の教育に向けた研修が企画されるのではないか、と期待している。特定機能病院における研修は現在、高度急性期を対象としたものに限られているのが実状であろう。しかし、特定機能病院が「高度の医療技術の開発及び医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院」であることからすれば、急性期から慢性期、そして在宅までをカバーできる医師を教育するのが本来の義務ではないか。大学病院にも後期高齢者の患者の割合が高くなってきている。特定機能病院が、臓器別専門医だけでなく、総合診療医的な医師の教育にも力を入れるのであれば、地域医療の現場にとってこれほど心強いことはない。
 

3.「社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会」の報告
~介護療養病床等の転換先となる新たな施設類型~

 
(武久洋三会長による報告)
○介護療養病床等を「新たな施設類型」に転換する方針について、大筋が決まってきている。最近の報道でもあったが、「新たな施設類型」の名称に病院という文言を使用しても構わない、と厚生労働省は考えているようだ。名称は病院だが病床はない、という不思議な施設類型になるが、病院という名称に思い入れがあるのであれば、過渡的に残してもよいということであろう。

○介護療養病床は現在も介護保険適用なので、介護保険法を根拠とする「新たな施設類型」に転換しても財源や費用は何も変わらない。人員配置も介護療養病床と同じような基準が想定されているので、一体何のための改革なのか、と問い続けている。私はむしろ、改革するのであれば思い切った改革をして欲しいと思う。医師の配置は介護老人保健施設と同じでよいとか、病院が併設されていれば医師は常駐しなくてもよいというのであれば、人件費が削減され、社会保障費の抑制にもつながる。

○「新たな施設類型」は、平成29年度末が設置期限となっている介護療養病床等の受け皿と考えられてきたが、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどからの新規参入も認められることになろう。

・「新たな施設類型」に関する意見としては、「介護療養病床には、その位置づけから廃止に至るまで、いわば“騙まし討ち”にあってきたような経緯がある。今回の改革には、たしかに機能の面では「新たな施設類型」と介護療養病床はほとんど同じもののようにも見えるが、ある程度話し合いに時間がかけられ、一応合意の上で決定される、という手続き的な面に意義があるように思う」(西澤寛俊・全日本病院協会会長)、「『医療内包型』のとくにⅠ型に転換できる療養病床は限られている。100分の95に相当する点数を算定している医療療養病床25対1のほとんどは、『医療外付け型』を選択することになるであろう。大規模改修までは多床室で6.4㎡/人の面積が認められるよう交渉したい」(猪口雄二・全日本病院協会副会長)などがありました。
 

4.「社会保障審議会 医療保険部会」の報告

・神野正博議長(日本社会医療法人協議会副会長)より、前回の会議で、武久洋三会長が委員として出席している医療保険部会に高額療養費に関する見解を述べることができる委員を別途追加したいという考えを示したことについて、撤回されました。
 武久洋三会長は、「当グループが運営する28の病院には救急指定の急性期病院もあり、医療保険部会の委員として出席するにあたっては、病院団体全体の利益に資する発言を心がけている。引き続き皆様からサジェスチョンをいただきたい」と述べています。

(武久洋三会長による報告)
○医療保険部会では、診療報酬や診療体制に関する問題よりも、健康保険などの財源に関する問題を多く取り扱っている。最近では、過剰な受診を減らして医療費の増大を防ごうという立案が多い。

○「子ども医療費助成に係る国保の減額調整措置の在り方」に関する議論は、地方自治体が少子化対策の一環として講じている子ども医療費の減免措置について、減免措置によって増える医療費は、国庫負担(国民健康保険制度)ではなく、地方自治体が負担すべきではないかという議論である。私は、子どもを安心して生むことができるようインセンティヴのある政策を立てていくのは良いことだと考えるが、自治体間の競争の激化や子どもの安易な受診を防ぐため、対象年齢や医療費の範囲について統一的な基準の設置が検討されている。

○「高額介護合算療養費制度」は、1年間における医療保険と介護保険の自己負担が著しく重くなった場合に負担を軽減する制度で、高額療養費制度の見直しを検討するにあたって高額介護合算療養費制度の限度額の見直しも行うかが論点となっている。

○過剰な受診を減らし、医療費の伸びを抑えるため、「かかりつけ医以外を受診した場合における定額負担の導入」が検討されている。しかし、「かかりつけ医」そのものの定義が定まっていないので、議論は入り口に留まっている。

○平成28年度の診療報酬改定で導入された「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」は、現在、特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院が対象となっている。患者が大病院ではなく、まず中小病院を受診するよう促すこの政策は、開業医にとってはメリットがあるようにも考えられる。日本病院団体協議会としては、今後どのようなスタンスをとっていくのか。
 
(「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」については、猪口雄二先生より、「『対象が200床以上に引き下げられ、拡大される方向だ』という、根拠が非常に曖昧な記事が日本経済新聞に載っていた(平成28年11月20日朝刊)。これはおそらく、第100回医療保険部会(平成28年11月18日開催)の資料にある『紹介状のない患者が、200床以上の病院を受診した場合、選定療養として特別の料金を徴収することができる』との記載を類推して記事にしたのであろう」とのコメントがありました。)
 

5.日本専門医機構理事会報告 ~専門医制度整備指針(改定)~
 
(池端幸彦副会長の発言③)
 新しい専門医制度がプログラム制となるか、カリキュラム制になるかはまだ決まっていないとのことであるが、研修医自身の立場に立って、できる限りカリキュラム制が採用されるべきである。専門医取得までの道のりは、初期研修と後期研修を合わせて10年近くにもわたり、履修が少しでも欠けると認定が認められないというかなり険しいものとなっている。是非、日本医師会が平成28年11月18日付けで日本専門医機構理事会に提出した要望書にあるように、「研修期間については、妊娠、出産、育児等の理由により中断することができ、かつ、6ヶ月までの中断であれば、残りの期間に必要な症例等を埋め合わせることで、研修を延長しないですむこと。また、6ヶ月以上の中断の後研修に復帰した場合でも、中断前の研修実績は、引き続き有効とされること」が実現されるようを強く希望したい。

 次回の代表者会議は、12月16日(金)に開催される予定です。

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