日病協「第144回代表者会議」 出席のご報告

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日病協「第144回代表者会議」 出席のご報告

 平成28年11月2日、日本病院団体協議会(日病協)の「第144回代表者会議」が開催され、中川翼副会長が委員として出席いたしました。社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」で検討されている新たなサービス提供類型の創設については、医療療養病床25対1との関係性についてとくに議論が集中しました。

 13の病院団体が集う代表者会議では毎回、中央社会保険医療協議会(中医協)等諸会議の構成員に就任している委員から、現在審議中の多岐にわたる議題が報告され、必要に応じて病院団体としての要望事項をとりまとめるなどの活動を行っています。

 当協会の武久洋三会長も委員として出席している「療養病床の在り方等に関する特別部会」では、平成29年度末に設置期限を迎える介護療養病床等に代わる新たなサービス提供類型の創設について検討が続けられています。今回の代表者会議は武久洋三会長が欠席のため、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)と加納繁照委員(日本医療法人協会会長)から以下の報告がありました。

(社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」の報告)
 介護療養病床等に代わる新たなサービス提供類型の創設は、療養病床27.4万床のうち、介護療養病床が6.1万床、医療療養病床25対1が7.6万床の計13.7万床なので、実に、療養病床の半数が対象となる議論である。療養病床の在り方については当初、「介護療養病床等の設置期限の再延長を第一選択肢として議論すべき」という意見と「法律上すでに廃止されていることを踏まえて議論する必要がある」という意見があったが、前者の意見については議論されないまま介護療養病床等の受け皿となる新たなサービス提供類型の創設が検討されることになったのは遺憾である。
 厚生労働省から「議論のたたき台」として提示された新たなサービス提供類型には、「医療機能を内包した施設系サービス」(医療内包型)と「医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設」(医療外付け型)とがある。
 「医療内包型」は、生活施設としての機能を重視する介護保険法を根拠とした「施設」で、「病床」ではなくなるが、医療を提供することから医療法上の医療提供施設としても位置付けられる。厚生労働省の提案では、対象となる主な利用者像によって、下記の「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分類され、「Ⅰ型」については、現行の介護療養病床とほぼ同じ機能とするとの説明があった。

 Ⅰ型:重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者 等
    (現行の療養機能強化型A・B相当)

 Ⅱ型:Ⅰ型と比べて、容体は比較的安定した者

 
 一方、「医療外付け型」は、有料老人ホーム等の住居スペースと医療機関の併設について特例や要件緩和等を設けるもので、その面積基準は、個室で13.0㎡/床とされている(現行の有料老人ホームの基準)。ただし、「既存の建築物を転用する場合、個室であれば面積基準なし」との注記があり、これをどのように解釈するかは今後の議論になるであろう。
 「議論のたたき台」の中に、医療法施行規則に基づく医療療養病床の人員配置標準の経過措置について、「平成29年度末で終了とする」との記述があり、6対1以上の看護人員配置でも可とする経過措置は平成29年度末をもって終了することがあたかも決定事項であるかのように扱われていた。この点について、まだ議論の余地はあるのかを確認したところ、あくまで「議論のたたき台」であって、医療療養病床25対1についても「療養病床の在り方等に関する特別部会」で議論しつつ、その診療報酬については中医協で検討されるように考えている、とのことであった。したがって、医療療養病床25対1についての経過措置の終了は、まだ決定事項ではない。
 現在のところ、介護療養病床等の療養病床からの転換がメインテーマとなっているが、地域医療構想全般を考えていく上で是非とも入り口を広げ、一般病床の13対1や15対1、さらには障害者病棟や特殊疾患病棟からも「新たな施設」に直接転換できるよう要望している。

 西澤寛俊委員と加納繁照委員の報告を受けて、中川翼副会長は、「医療療養病床25対1も新たなサービス提供類型の対象になると考えられているのか。介護療養病床については、平成23年に延長された廃止期限が平成29年度末に終了するということは承知しているが、医療療養病床25対1の看護人員配置の取扱いがわかりづらいように思う。最終的には中医協で検討されることになるというのはどういうことなのか」と質問し、新たなサービス提供類型と医療療養病床25対1との関係性について詳細な説明を求めました。

 中川翼副会長の質問については、まず西澤寛俊委員より、「『療養病床の在り方等に関する特別部会』では、介護療養病床だけでなく、医療療養病床25対1も新たなサービス提供類型の対象になると想定して議論されている。医療療養病床の看護人員配置は、平成18年に介護療養病床が平成23年度末で廃止するとされたのと同時に6対1以上から4対1以上に引き上げられ、介護療養病床の廃止期限が6年間延長された平成23年に、医療療養病床の看護人員配置についても同様の延長が行われたという経過を辿っている」との説明がありました。

 次に、猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)より、中医協で医療療養病床25対1の診療報酬が検討されることについて、「療養病床の看護人員配置は、医療法の本則上、4対1以上とされているが、医療法施行規則に基づき、経過措置として平成29年度末までは6対1以上でよいこととされている。また、医療法施行規則に基づく人員配置標準は、他の病棟や外来を合わせて病院全体で満たすこととされている。そのため、平成30年4月以降も医療療養病床25対1の病棟を残していたとしても、それが一般病床とのケアミックスであったり、医療病床20対1で加配した病棟を併せ持っている場合であれば違法ではないことになる。もともと人員配置標準は『最低基準』ではなく『標準』であるので、人員配置標準を満たさない場合であっても直ちに違法になるわけではない。例えば過疎地域では、より緩やかな医師配置標準を設定できることとされている。このような柔軟な対応を今後も認めていくのか否かは診療報酬に絡む問題であるため、中医協で議論されるという段取りになっている」と説明されました。

 「療養病床の在り方等に関する特別部会」における審議内容について、他の意見としては、「『医療内包型』の面積基準は老健施設相当の8㎡/床とされているが、療養病床等から転換した老健施設については、大規模修繕までは、床面積6.4㎡/人以上でよいこととされている。もし、一般病床からの転換が認められるようになった場合、6.4㎡/人の面積を満たすよう病床数を順次削減するとしても、当面は4.3㎡でも認められないだろうか。療養環境に配慮しなくてはならないのはもちろんであるが、一般病床の13対1や15対1にはいまだに4.3㎡の病院もある」、「医療内包型の『Ⅰ型』は現行の介護療養病床と機能がほとんど同じで、かつ、介護保険で財源が負担され、しかも、介護療養病床6.1万床のうちその半数が補足給付の対象になっていることを考えると、新たな施設を設けることにどれだけの財政的なメリットがあるのか」、「『医療外付け型』を選択せざるを得ない病院もあると考えられるので、できるだけ経費をかけずに有効利用が進むよう、『医療外付け型』の居住スペースも個室ではなく多床室で認められるようにしていきたい」などがありました。

 以上の議論を経て、日本病院団体協議会としては、介護療養病床等に代わる新たなサービス提供類型について、一般病床からの転換や面積基準の緩和を求めるとの意見が出されています。

 上記以外の議題では、「オプジーボだけではなく高価な医薬品については、『最適使用推進ガイドライン』を踏まえてから薬価が決められるであろうこと」、「年間100人の症例数を予定している東京大学医学部附属病院の患者申出療養の実施計画について、患者からの申出を起点として一例一例慎重に検討しているのか、という批判があったこと」、「『入院医療等の調査・評価分科会』で実施される平成28年度実態調査の調査項目に、『医師の診察の頻度』を問う調査項目が追加されたこと」、「医療計画の見直しについて、『協議の場』における議論が公的医療機関を中心に進められるようになっていた言い回しが民間病院も含むよう訂正されたこと」などが報告されました。また、高額療養費の見直しが議論されている医療保険部会について、高額療養費の実態に関する発言ができる大規模の急性期病院関係者を委員に加えるよう要望するべきではないか、という意見も出されました。

 次回の代表者会議は、11月25日(金)に開催される予定です。

 

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