「第69回社会保障審議会介護保険部会」 出席のご報告
平成28年11月25日、「第69回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
1.とりまとめに向けた議論
2.その他
介護保険の費用負担について、厚生労働省から、医療保険の高額療養費の負担額の引き上げにそろえて、高額介護サービス費の負担の上限額を引き上げ、また、現役並み所得者については負担割合を3割にすることについて提案がなされ、議論がかわされました。
疾患が治ってしまえばそこでサービスが終了する医療とは異なり、治癒するものではなく暮らしの中で継続していく性質の介護に、医療保険と同じような仕組みを適用することへの反対や、今後の人口構成を考えると応能負担は止むをえないといった賛成の意見等、様々な発言がありました。
◇武久洋三会長の発言
厚生労働省の発表によると、日本の昨年の出生数は約100万人であり、9年後の出生数は78万人と予想されている。税金を納める人口は減少し続け、後期高齢者は2040年まで増え続ける。
この状態で、はたして介護保険制度はやっていけるのか。当然のことながら、現役並みの所得がある方は、高齢であっても払っていただく形になっていくだろう。年齢的に、子供も独立しているだろうし、現役世代より金銭的な負担は多少軽いかと思われる。
ただ、委員の意見でも出ていたように、医療保険の高額療養費は70歳以上の現役並み所得者の負担を、これまでの2割負担からさらに引き上げており、このままでは次は3割、4割とどんどん上げられていくのではないかという不安が生まれる。これでは、計画性がないと言われても仕方がないだろう。
本日の議題では、高額介護サービス費の上限額を引き上げ、現役並み所得者については負担を3割に引き上げるということであるが、10年、20年先を見据えた介護保険の永続性を考えるとなると、ここである程度きちんとしておかねばならない。そもそもなぜ、負担割合が徐々に引き上げられていくようなことが起こるのか。結局は、介護保険制度そのものが、仕組みを変えなければならない時期に差し掛かっているということだと思う。このまま同じスキームでずるずると続け、収支が合わなくなってきたから負担を多くするというやり方は限界である。
また、介護保険制度において見落とされているのは、要介護が改善された時の評価である。要介護度が良くなると、皆嫌がる。受けられるサービスが減ったり、自己負担が増えるからである。状態が良くなったら、喜ぶのが普通である。ここの仕組みは考え直していただきたい。
制度のすき間に埋もれる利用者がないようにという観点から、二点要望したい。一つ目は、高額療養費制度と高額介護サービス費制度のどちらも支給限度額いっぱいまで利用している利用者は、合算した場合に負担額を低くしてもらえるよう、検討していただきたい。二つ目は、一人っ子同士が結婚した場合、夫婦それぞれの両親が同時に、要介護、要医療の状態になったケースについてである。共働きで対応しても、高齢者を4人世話するというのは大変である。このような状況を救済できるシステムを整備していく必要がある。介護保険がこれからも永続的に運用され、国民にとってより安心できる拠り所となるようにお願いしたい。
○第69回介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000143913.html
2016年11月26日