「第66回社会保障審議会介護保険部会」出席のご報告

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「第66回社会保障審議会介護保険部会」出席のご報告

 平成28年10月12日、「第66回社会保障審議会介護保険部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

1.軽度者への支援のあり方
2.福祉用具・住宅改修
3.その他

◇武久洋三会長の発言
武久洋三会長平成28年10月12日 介護保険は、スタート当初は要支援・要介護状態の改善に資するものであったと記憶している。要介護認定を受けて要介護2だった利用者が、今はどう見ても要支援1に改善したというような場合でも、変更申請をするケースはほとんどない。だが、要介護2だった利用者の状態が変化し、要介護4くらいになっていたら、必ず変更申請を行う。このように、状態が良くなった場合の報告がまったくなされないという土壌を変えていかなければいけない。

 私もヘルパーの現場を見ているが、ヘルパーは利用者の家に行ったら、掃除や風呂、食事の支度を行う。要介護度が軽度の利用者は、ヘルパーが仕事をしている中でテレビを観ながら、じっと待っている。本来なら、利用者はヘルパーと一緒に何度かやっていくうちに自分で出来るようになり、ヘルパーがいない時間帯でもある程度対応できるようになるのが本来のサービスのあり方である。そうしたことをヘルパーが言うと、利用者は、あのヘルパーは不親切だから自分にも手伝わそうとしているのだと考える。ここを変えなくては、利用者はいつまでたっても、ヘルパーに何でもやってもらわなくては損だと考えてしまう。これでは、状態改善への可能性を放棄しているようなものである。

 規模の小さい町村では経済状態に余裕がないため、地域支援事業(総合事業)への移行が進んだ場合、委託先の事業所に、現状よりも低い点数でサービス提供を抑えてもらうよう依頼することになりかねない。すると、小さい町村ではもともと利用者が多いわけでもないため、事業所は経営難となり撤退してしまう。そうなると、その土地からサービス自体が消えることになる。そういった状態になるまで町村を保険者にさせておくわけにはいかないので、国や都道府県が重層的に支えていかなければならない。過疎地に行くほど人口は少なくサービスを受ける人も少ない。だが、単価が高くないと事業所は成り立たない。こうした状態に改善がないまま総合事業に移行となれば、規模の小さな町村は非常に混乱する。やはり、利用者の状態が良くなったら要支援・要介護度を下げていけるようなインセンティブが必要だろう。

 例えば、訪問リハビリのスタッフがヘルパーと同じ時間帯に行き、ヘルパーが食事を作っている隣で、訪問リハビリスタッフが食器や調理器具の持ち方を教える。おそらく介護保険では、ヘルパーとリハビリスタッフが同じ時間帯に訪問するというのはできないのだろう。だがそうでもしないと、利用者にとってヘルパーはいつまで経っても料理と掃除をしてくれる人にとどまる。介護保険制度が開始して16年である。そろそろ、こうしたマインドを変えていく時期であると考える。

 「福祉用具・住宅改修」についてであるが、資料の論点はいずれも適切と考える。巷では要介護2までの利用者の福祉用具貸与が介護保険制度外になるといううわさがあったようだが、今回の資料を見ると、そうした議論は含まれていない。この点は大いに評価したい。単純に、ここを外したらどれだけ費用が浮くかといった安易な考え方をされては困る。そうした方向に流れなかったということは、評価されるべきである。

 というのも、要介護2以下の利用者について福祉用具を保険外にした場合にどうなるかということの検討がないまま、進めるわけにはいかない。介護保険を外すにしても、EBMは必要になる。
 一番簡単な福祉用具は杖であるが、これは転ばぬ先の杖という通り、歩くときに転ばないですむための用具である。また、杖で歩くには危ないが、歩行器を使えばかなり歩けるというケースもある。杖や歩行器を使っていても、歩くことで筋力を落とさずにすむ。ベッドも車椅子も同様である。
 IT機器、福祉用具、ロボットといった分野は、開発がどんどん進んでいる。一部、IT機器やロボットについて、多く導入したケースを評価することはぜひ進めていただきたいし、それによって要支援・要介護の重症化が抑えられるのなら、大変ありがたい。

 また、住宅改修についてであるが、やはりケアマネジャーは介護保険のコーディネーターである以上、様々な分野を広く把握しておく必要があり、それは住宅改修も例外ではないだろう。福祉用具も住宅改修も最初はまったく知らなくても、何度か経験して勉強していけばメルクマールはつかめるだろう。

 現状では、施設ごとに別のケアマネジャーの対応になっているが、居宅のケアマネジャーと利用者が親しくなった場合、その後利用者がどういう施設に入所しても、利用者や家族からしょっちゅう相談の電話がかかってくる、それこそがあるべきマイケアマネジャーの姿だと思う。また、そうでなければ介護保険はうまく回らないと思う。委員の中には、ケアマネジャーに住宅改修まで対応させるのは気の毒だという意見もあったが、やはりそこまでサポートしないといけないのではないか。医療も、そして薬についてもある程度知っておかないと、コーディネーターはできない。そこまでするとなると、居宅ケアマネジャーは今以上の大変な忙しさになってくると思うが、今以上に評価されてくるのではないか。

 そうした観点からいっても、福祉用具というのは今後いっそう重要になってくるはずである。介護職員の負担を福祉用具で補っていくことができるなら、職員数を減らしてもいいと思う。若者の人口は減っていく一方なので、将来的にはそうなっていく必要がある。そうした意味での期待もあり、福祉用具は非常に重要な事項だと考える。もちろん、住宅改修も非常に大切である。トイレまでのアクセスや、動く距離の問題等、利用者ができるだけ家で生活していけるようにすることが重要である。

○第66回社会保障審議会介護保険部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000139430.html

 

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