平成28年度「第2回入院医療等の調査・評価分科会」出席のご報告
平成28年10月12日、「平成28年度第2回入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。今回の分科会で池端幸彦副会長は、「入院医療等における実態調査」について、「『医師による医療提供の頻度』を知るためには、医師の判断・処置等を含む『診察の頻度』を問うべきである」と主張し、調査項目の修正を強く求めました。
厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)には、診療報酬調査専門組織として、「DPC評価分科会」「医療技術評価分科会」「医療機関のコスト調査分科会」「医療機関等における消費税負担に関する分科会」「入院医療等の調査・評価分科会」の5つの分科会が置かれており、中医協・診療報酬基本問題小委員会の聴取に応じて意見を述べる役割を担っています。
「入院医療等の調査・評価分科会」では、平成28年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見のうち、急性期、回復期、慢性期等の入院医療について改定の影響を調査・検証するため、「入院医療等における実態調査」を平成28年度及び平成29年度の2か年で実施する予定です。
平成28年度調査の調査票には、「施設調査票」「病棟調査票」「患者票」「レセプト調査票」があり、「患者票」は、「入院患者票」「退棟患者票」「補助票」で構成されています。「療養病棟入院基本料等」を対象とした調査票については、その特性を考慮し、「療養病棟の今後の届出の意向」「入棟前の居場所」「医療区分別の該当状況」「要介護度・認知症高齢者の日常生活自立度の該当状況」を問う調査項目が設けられ、また、改定で見直された医療区分の処置等の該当の変化や、患者が受けた医療行為・処置等については、調査基準日の過去30日間の状況もデータとして得ることができるよう工夫されています。
池端幸彦副会長は、実態調査の実施によって患者の重症度、医療必要度を適切に把握できるよう以下の意見を述べ、調査項目の文言の修正を提案いたしました。
(池端幸彦副会長の発言)
私はかねてより、「医師による直接の医療提供の頻度」を「医師による指示の見直しの頻度」によって判断しようとする考え方に強い疑問を抱いている。「看護提供の頻度」については「観察および管理の頻度」を問うているのに、なぜ、「医療提供の頻度」については「医師による指示の見直しの頻度」を問うのか。設問としても非常にアンバランスである。「医師による直接の医療提供」には診察、処置、処方などがあり、具体的には、呼吸器の設定の変更や動脈系採血、中心静脈カテーテルの挿入など様々な処置や手技が想定される。このような診断や処置を「医師による指示の見直しの頻度」に置き換えてしまうのではなく、「診察」に判断・処置等を含むとして、「診察の頻度」を尋ねるべきではないか。平成26年度に実施された同様の実態調査でも、「指示の見直し」という表現のために、高度急性期病院から、「医師の指示の見直しが1週間なかった」という実態とかけ離れた回答があったことは周知のことと思う。「指示の見直し」という表現では、例えばある処置について、「1週間継続して必要だ」という医師の判断、指示があった場合、その間については「医師による指示の見直しはなかった」という誤解を生じさせてしまう。調査の継続性の維持という観点から調査項目の変更に躊躇する気持ちもわかるが、どこかで決断をしなければ不可解なデータが一人歩きすることになり、調査そのものの信憑性が疑われることにもなりかねない。
「医師による指示の見直しの頻度」が診療報酬改定の根拠とされることを疑問視していた当協会では、平成27年5月に「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」を実施した中で「医師による指示管理(回診含む)」の頻度を会員病院に尋ね、厚生労働省の平成26年度調査結果と比較したことがある。その結果に大きな落差があったことは、すでに当時の記者会見でも報告しているとおりである(日慢協「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」の結果報告についてはこちら)。
当初予定されていなかった療養病床についても平成29年度調査の調査対象となるよう再考されたことについては、大変感謝している。これを機に是非とも、データ提出加算の対象の拡大により療養病床からもかなりのDPCデータが提出されていると思うので、療養病床で行われている医療行為の内容を国として精査していただきたい。医療区分という仕組みを今後も継続していくべきなのかについて、真剣に議論しなければならない時期に来ていると思う。
「医師による指示の見直しの頻度」を問う調査項目について、他の委員からは、「前回の診療報酬改定は、『医師による指示の見直しの頻度』によってICU(集中治療室)から療養病床までの施策が決められたが、平成27年10月から『特定行為に係る看護師の研修制度』がはじまり、医師の包括的指示で現場が動くようになりつつあるので、制度の流れをフォローできるよう検討の必要がある」(神野正博委員・社会医療法人財団薫仙会理事長)、「患者の重症度を測るのであれば、『医師による指示の見直し』ではなく、『医師の判断・診察・処置』の頻度を問うべきである。指示を変えなくてもよいというのも重要な判断であり、実際に患者に聴診器を当てなくても、看護師からの情報を判断するということもある」(石川広己委員・社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)などの意見がありました。
以上の意見を受けて、中谷祐貴子・医療課課長補佐は、「『特定行為に係る看護師の研修制度』の導入等により、包括的指示が増えるであろうことはもっともであるので、指示の見直しの頻度から見ると減っているが、実際の診察や状態の確認は増えているということがわかるよう納得感のある調査項目を設定したい」旨を述べています。
本日の分科会で出された委員の意見を反映した調査案は、10月19日に開催される中医協・診療報酬基本問題小委員会に報告され、本年11~12月の調査実施に向けてとりまとめられることになっています。
○平成28年度「第2回入院医療等の調査・評価分科会」の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000139143.html
2016年10月13日