社会保障審議会・介護給付費分科会(第110回) 出席のご報告

会長メッセージ 審議会

介護給付費分科会1015

 平成26年10月15日、「第110回社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。今回の分科会では、平成26年度介護事業経営実態調査の報告と、平成27年度診療報酬改定に向けた意見交換が行われました。

 はじめに厚労省より平成26年度介護事業経営実態調査の報告が行われました。調査の総括としては、「多くの介護保険サービスでは、職員一人当たり給与費及び職員一人当たり利用者数等の稼働率の上昇を伴いながら、収支差率が5%以上となっており、10%以上となっているものもある」、「通所系サービスの収支差率はいずれも5%以上となっている」などの報告がなされました。

 また、調査結果の取り扱いについては、「創設後まもなく稼働率が低調である等の課題も考えられるサービスや有効回答数が少ないサービスの調査結果については、それ以外のサービスとは同等に扱うべきではない」、「法人としての収支や経営の状況は必ずしも(当該調査による)サービス毎の収支差率等とは一致しない。また、本調査による介護サービス毎の収支差率と、法人単位で把握した他産業の収支差率を単純に比較すべきではない」などが留意するべき点として挙げられました。

 次に、「平成27年度診療報酬改定に向けた基本的な視点」の説明が行われました。視点の説明の前に、本資料が事業者団体のヒアリングを踏まえて、事務局にて作成された資料であることが説明されました。

 第1の視点は「地域包括ケアシステムの構築に向けた、在宅中重度者や認知症高齢者への対応の更なる強化」です。今般の制度改正では、在宅医療・介護連携の推進を地域支援事業に位置づけて取り組まれています。また、平成26年度診療報酬改定や今後の地域医療構想に基づく病院機能の分化など、医療機関から在宅復帰促進の流れによって、在宅要介護者の中重度化によって在宅医療・介護のニーズが高まることが見込まれ、在宅生活の限界点をさらに高めるための対応が必要であるとされています。

 第2の視点は「介護人材確保対策の推進」です。介護人材は地域包括ケアシステムの構築に不可欠な社会資源であり、将来的なマンパワー減少を見据えた対応が必要であるとされています。介護人材の確保に当たっては、事業者自らの雇用管理の改善等の意識改革のほかにも、国・都道府県・市町村のそれぞれが積極的に取り組むべき課題があり、事業者の取組がより促進される仕組みを構築していくことが必要であることが説明されました。

 第3の視点は「サービス評価の最適化と効率的なサービス提供体制の構築」です。介護保険制度は保険料と公費で支えられているため、地域包括ケアシステムの構築を図る一方で、制度の持続可能性を高めつつ限りある資源を有効に活用するために、より効果的で効率的なサービスを提供することが求められており、必要なサービス評価の体系化・適正化や規制緩和を進めていくことが必要だとされています。

 また、要介護認定に係る有効期間の見直しについて、改正案が説明されました。要介護認定の更新申請について、有効期間を一律で原則12ヵ月、上限24ヵ月とすることが説明されました。

 その後、東憲太郎氏(全国老人保健施設協会会長)と村上勝彦氏(全国老人福祉施設協議会副会長)より、それぞれの提出資料の説明が行われました。

 以上の資料の確認後、分科会長の田中滋氏(慶應義塾大学名誉教授)が委員から意見の発言を募りました。
 実態調査については、「現場の実態を本当に反映しているといえるか疑問である」という旨の発言が複数の委員からなされました。事務局は終始「この調査結果は、あくまで介護報酬改定を考える際の参考のひとつである」と回答しましたが、鈴木邦彦氏(日本医師会常任理事)は「財務省は実際にこの結果を用いて予算を組んできている。改定には用いない旨をここではっきり約束してほしい」と発言されました。

 平成27年度診療報酬改定に向けた基本的な視点については、視点1の「在宅中重度者」「認知症高齢者」がどの程度を想定しているのか、視点3の「規制緩和」が何を表しているのか、不明確であるといった指摘がされました。事務局からは、「この視点が全てではなく、今後行われる分科会にて具体的に話し合っていくためのものであり、本分科会で意見を出してほしい」と説明がありました。

 武久洋三会長は実態調査の結果について、収支差率の分布図の目盛が-50%から+50%まで設定されていることを指摘し、「プラスからマイナスまで幅広く分布している中で、平均だけに着目するとマイナスだった施設は潰れてしまう。どうしてプラスなのか、どうしてマイナスなのかという分析が十分でないまま議論を進めるのは横暴な論理であり、熱心で優秀な事業所を育てることも課題である」と発言されました。さらに、事務作業に費やす金額が多大であることを指摘し、「現状のままでは確実に介護保険制度の破綻を導く。要介護認定などのシステムの効率化を考えるのが先であり、先に介護報酬を下げるのは順番違いである」と発言されました。

 事務局は次回までに本分科会における発言を検討するとのことで、閉会となりました。
 次回の介護給付費分科会は、10月22日(水)に開催され、「平成24年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成26年度調査)の結果(速報値)」などについて議論される予定です。

○第110回社会保障審議会・介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000061286.html
 

この記事を印刷する この記事を印刷する

« »