社会保障審議会・介護給付費分科会(第100回) 出席のご報告

会長メッセージ 審議会

介護給付費分科会0428-1

 平成26年4月28日、「第100回社会保障審議会介護給付費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。
 今回の分科会では、平成27年度介護報酬改定に向けた検討スケジュールについて確認された後、各団体の出席委員から意見・要望を述べるフリートーキングに多くの時間が割かれました。その中で、武久洋三会長は、以下の意見を述べています。
 

◇武久洋三会長の発言
 
介護給付費分科会0428-2*一般病床の特定除外制度が廃止され、在宅復帰率の考え方が至る所に導入された平成26年度診療報酬改定について、介護保険施設ではどのように受けとめていくのか。平成12年に介護保険法がスタートした当初は、特養においても利用者の状態がよくなれば在宅に帰すこととされていたように記憶しているが、今では、「終の棲家」のイメージが強くなってしまっている。老健に在宅強化型が設置されていることからすれば、特養においても、要介護度3~4の利用者が2ないし1になった場合には在宅復帰を進め、在宅復帰が評価の対象となるようにされるべきである。そうでなければ、52万人とも言われている待機者はますます渋滞し、いつまでたっても解消されない。

*在宅復帰と一口にいっても、独居者の場合は自宅に帰ることはできないため、サ高住への入居や特養への入所が想定されることになる。しかし、サ高住の居室は原則25㎡以上とされているため、一般的にその入居費は高額であり、特養についてもユニットケアであれば利用者の負担はかなり重く、低所得者はなかなか利用できないのが現状である。在宅復帰を希望する低所得者は一体どこに行けばよいのか。今後は、この点にも十分目を配りながら計画を立てていく必要がある。

*認知症への対応として、様々な資格者を配置して重層的にサポートしていくのはよいのだが、「ケアマネジメントリーダー」と「主任介護支援専門員」の位置付けがいま一つ不明確である。ケアマネジメントリーダーの養成は人材の育成につながったのか。ケアマネジメントリーダーは現在、介護保険法上どのように位置付けられているのか。

  ⇒この点については、朝川知昭・振興課長より、平成18年に主任介護支援専門員を新設した際に、ほとんどのケアマネジメントリーダーは主任介護支援専門員になっていると思われる、との回答がありました。

*現在約9兆円の介護費用が2025年には約20兆円になるという見通しが資料として示されているが、これまでの体制で果たして乗り切ることができるのか。今後、介護保険の申請件数が急激に増えていくことが明らかな中で、具体的な対策を示すことなく数字のみを示すのでは、その見識を疑われかねない。2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる年であるため象徴的に問題視されているが、男女の平均寿命が約83歳であることからすれば、高齢者層は2040年くらいまで増え続けると思われる。このままでは介護費用はいくらあっても足りない。私は介護保険法が施行されて以来、徳島市の「介護認定審査会」の委員を務めているが、そろそろ認定審査にかかる莫大な事務費を抑えるべき時期に来ているのだと思う。例えば、1次判定ソフトの精度が年々上がってきていることから、現在、「介護認定審査会」で行われている市町村の審査をコンピュータソフトによる審査に一本化し、それでもなお認定に不服がある場合にはじめて「介護認定審査会」に審査請求をすることができるようにすれば、審査会の数を10分の1にすることができ、認定審査にかかる人件費等を大幅に抑えることができるものと考える。
 
【資料】 介護費用の見通し  第100回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2「介護保険制度を取り巻く状況」より

 
 他の委員からの主な意見としては、「特養においても看取りはできると考えるが、利用者が特養で納得できる死を迎えることができるようにするためには、特養と医師が適切なチームを組むことが基本となる」「認知症で徘徊中、列車事故を起こした男性の遺族に損害賠償責任を問う控訴審判決が出たが、地域で認知症を支援するという流れに逆行しているのではないか」(高杉敬久委員・日本医師会常任理事)、「在宅復帰率が導入された平成26年度診療報酬改定を受けて、介護保険施設においても、急性期における治療後の患者や利用者を支えていけるような効率的な人員配置基準を考えていかなければならない」(齋藤訓子委員・日本看護協会常任理事)、「特養は地域密着型サービスであると理解しているので、状態がよくなった利用者を地域に戻していくという考え方には賛成である」(村上勝彦委員・全国老人福祉施設協議会副会長)などがありました。

 介護給付費分科会は、政府の予算編成に間に合わせるよう月2回のペースで開催され、12月中旬までに報酬・基準に関する基本的な考え方を取りまとめる予定で進められます。次回の分科会では、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービス等について議論されます。

○第100回社会保障審議会介護給付費分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
  ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044891.html
 

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