スマホ搭載の保険証、「簡便な形で検討を」── 医療保険部会で池端副会長

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20240621_医療保険部会

 マイナ保険証の利用促進策などを話し合った厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長はスマホ搭載に伴う課題を指摘し、「できるだけ簡便な形で検討していただきたい」と述べた。

 厚労省は6月21日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第179回会合を開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に「マイナ保険証の利用促進等について」と題する資料を提示。最近の利用状況やアンケート調査の結果などを紹介した上で、さらなる利用促進を図るため、「診療所・薬局の一時金を最大20万円(病院は最大40万円)」とする方針などを示した。
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スピード感を持って検討を

 強い反対意見は出なかったが、保険者の代表から「ボトルネックの解消に向けてスピード感を持って検討してほしい」との要望があった。

 経済界の代表からは「利用がある施設をさらに伸ばすよりも、利用件数の少ない施設への対応が重要なのではないか」との意見もあった。
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01スライド_P7抜粋_【資料1】マイナ保険証の利用促進等_20240621

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 また、マイナ保険証の利用意向で「約3割が利用に消極的」との調査結果について、「もう少し具体的な理由を聞くべきではないか」という提案もあった。
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02スライド_P5抜粋_【資料1】マイナ保険証の利用促進等_20240621

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「マイナ救急」を5月から開始

 この日の会合でも、マイナ保険証の周知広報に関する発言が多かった。大杉和司委員(日本歯科医師会常務理事)は「わかりやすく丁寧にマイナ保険証の利点を周知し、国民の意識改革につながるよう、しっかりと取り組んでほしい」と求めた。

 長島公之参考人(日本医師会常任理事)は救急現場での活用例に言及。「マイナ保険証の一番明確なメリットが命と健康に直結する場面で役に立つことなので、こうしたメリットを整理して周知していただきたい」と提案した。
 
 厚労省によると、救急隊がマイナ保険証を活用して救急活動の迅速化・円滑化を図る実証事業(マイナ救急)を今年度から実施中で、 全国の67消防本部660隊で5月から順次開始している。
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03スライド_P13抜粋_【資料1】マイナ保険証の利用促進等_20240621

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具体的なメリットを知らせる

 高額療養費制度での活用を挙げる意見もあった。横尾俊彦委員(多久市長)は「高額な医療費がかかる場合に限度額適用認定証があるが、実はマイナ保険証であれば非常にスムーズにできる」と紹介し、「こうした具体的なメリットを知らせたほうがいい」と提案した。

 池端副会長も「高額医療費が便利に利用できる。マイナ保険証が非常に有用であることを強調していただくと、さらに良い」と賛同。窓口での声かけなどを通じて「これから一気に増えることを非常に期待したい」と述べた。

 一方、来春のスマホ搭載に向けて、顔認証付きカードリーダーの対応状況について質問。「できるだけ簡便な形で搭載できるように検討してほしい」と求めた。

【池端幸彦副会長】
 皆さんのご意見を聞いて本当にごもっともだと思う。長島先生からは、網羅的に医師会として取り組むことを全般的にお話しいただいた。私も大いに納得したところである。
 福井県は、マイナ保険証の利用率が非常に高い。先日、副大臣が福井までお越しになられて表彰していただいた。これを契機に広報をさらに進めなければいけないと思った。
 窓口で声をかけていただく先生方に聞き取り調査をさせていただいた。声をかけると、マイナ保険証を持っている患者さんがいる。一度利用したら、必ず次も利用することを実感している。いろいろな先生方にお聞きしても、そういう傾向が見られる。隣の患者さんがマイナ保険証を使っていると、「私も次回は持ってこよう」と、窓口でそういう話題になる。これから一気に増えることを非常に期待したいと思う。
 先ほど、横尾委員がおっしゃったメリットは私も強く感じる。高額医療費は本当に便利に利用できる。2カ月も3カ月もあとになって戻ってくるのではなく、その場で負担が大幅に減った支払いで済むので、これは非常に有用であることを強調していただくと、さらに良いと思った。 
 来年5月までにスマホに搭載するという話があるが、確認したいことがある。スマホに搭載したマイナ保険証について、現在の端末を変えずに、そのまま扱えるような立て付けでのスマホ搭載であると理解してよろしいか?

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【厚労省担当者】
 現在、Androidのスマートフォンには電子証明書が搭載されているが、それがiPhoneに電子証明書の搭載がなされる方向性について、総理あるいはデジタル大臣から発表があった。来春の実装を目指している。
 前回の医療保険部会においてもご質問いただいたところであるが、スマートフォンの電子証明書の機能をいかに医療現場において円滑な形で実装していくのかという観点での検討が重要であると考えている。今、顔認証付きカードリーダーをお使いいただき、95%以上の施設において、このカードリーダーの利用やオンライン資格確認の利用が進んでいる。こうした現実をしっかりと踏まえた上で、なるべく簡便な形でスマートフォンの電子証明書を読み取って、それをカードリーダーの操作と組み合わせるような形でやるような方法について現在、開発の検討をしているところである。その開発の検討の内容などが一定程度まとまってきたら、この医療保険部会においても、そのイメージ、方向性などについて、お諮りをしていきたいと考えている。

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【池端幸彦副会長】
 ということは、現時点ではまだ今の顔認証付き端末で読み取れることを想定しているとは言い切れない、何らかのもう一段の仕掛けが必要になる可能性もあるという理解でよろしいか。
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【厚労省担当者】
 今の顔認証付きカードリーダーにおいては、メーカーによってはその筐体、そのつくりから、スマートフォンのJPKIを、電子証明書をそのまま読み取ることがなかなか難しい形のものもあろうかと思う。
 そういったものについては、例えば市販の汎用カードリーダーなどとの組み合わせにより、スマートフォンの電子証明書のところを、例えば、ピッっていう形で簡便に読み取るようなことができないか。そういった組み合わせなどが、実際の実装にあたっては簡便な形として考えられるのではないかと思っている。そういったところの実現性について、しっかりと検討し、お示しをしていきたいと考えている。

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【池端幸彦副会長】
 補助金までいただいて各医療機関に端末を置いたが、それをまたもう一度、差し替えなければいけない、あるいは何か付属の設備を付けなければいけないとなると、これもまた1つのハードルになってしまう。技術的な問題もあるとは思うが、できるだけ何か簡便な方法でできればいい。病院などでは、1台、2台、3台ではなくて、各診療科に置かなければいけないことがあるので、ここが自己負担になってしまう。その辺も含めて、できるだけ簡便な形で搭載できるようなことをご検討いただけるといいかと思う。

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生涯医療費も上がっている

 この日の部会では、NDBデータの提供体制や医療費の見える化など4件の報告事項があった。
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 この中で医療費(令和3年度)の動向が示され、池端副会長が「生涯医療費について経年的な変化がわかれば教えてほしい」と質問。厚労省の担当者は「令和2年度に比べると若干、上がっている」と答えた。
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05スライド_P10抜粋

【池端幸彦副会長】
 令和3年度の生涯医療費について、経年的にどのように変わってきたのか、そういう傾向がわかれば参考までに教えていただきたい。
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【厚労省担当者】
 生涯医療費は基本的に、その年の年齢階級別の1人当たりの医療費と死亡率をもとに計算している。死亡率はだんだん下がって寿命が長くなっているが、医療費は毎年少しずつ上がっていく形になっている。基本的には、生涯医療費も毎年少しずつ上がっていく傾向になっている。令和3年度も令和2年度の生涯医療費と比べると若干、上がっている形になっている。

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