オンラインと対面は「補完し合う関係」 ── 公聴会で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2022年1月21日の中医協総会

 診療報酬改定について国民の意見を聴く「公聴会」で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、オンライン診療について「対面診療と補完し合う関係ではないか」と質問した。患者の立場で参加した意見発表者は「対面を基本としながらも必要時にはオンラインも織り交ぜてほしい」と答えた。

 厚労省は1月21日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第512回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の総会では、改定答申前に開催される公聴会が開かれ、支払側から6人、診療側から6人の計12人が意見を述べた。前回は静岡県内の会議場で開かれたが、今回はコロナの影響で初のオンライン開催となった。

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対面でなければ築けない信頼関係

 患者の立場から意見を述べた宿野部武志氏(一般社団法人ピーペック代表理事)は、同じ病気を抱える患者が支え合う「ピアサポート」の活動や海外の事例などを紹介。チーム医療に「ピアサポートワーカー」という職種を加えることや、療養・就労両立支援指導料の要件緩和を提案したほか、オンライン診療の普及促進などを要望した。

 質疑で、池端副会長はオンライン診療について質問。「対面診療と補完し合ったほうが、より信頼感が高まって良くなる」との認識を示した上で、オンライン診療と対面診療との関係を尋ねた。

 宿野部氏は「対面でなければ築けない信頼関係がある」との理解を示し、「その空間の雰囲気、間、顔色などを総合して医療者が得られる情報がより多い」とした一方、「病院での待ち時間などが体力的にダメージ」と指摘。「オンラインも織り交ぜて融通が利くとありがたい」と述べた。

 池端副会長はこのほか、重症度、医療・看護必要度や病院の介護職員をめぐる問題などについて質問した。詳しくは以下のとおり。

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2022年1月21日の中医協総会

■ オンライン診療と対面診療について
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 宿野部様には、ピアサポートの活動からチーム医療の向上につなげる取り組みなどをご紹介いただき、とても勉強になった。
 ご意見の中で、オンライン診療について非常に利便性が高いとおっしゃられた。宿野部様は多くの疾患を抱えて治療しながら就労されている。
 私は、オンライン診療だけではなく対面診療とお互いに補完し合ったほうがより信頼感が高まって良くなるのではないかという認識を持っている。オンライン診療が対面診療に完全に置き換わるのではなく、オンライン診療と対面診療はお互いに補完し合う関係ではないかという思いもある。これについて患者様の立場でどうお考えになられるか、お聞かせいただきたい。

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【宿野部武志氏(一般社団法人ピーペック代表理事)】
 オンライン診療と対面診療のバランスについての考えだが、基本はやはり対面診療。対面診療でないと築けない信頼関係がコミュニケーション上はあると思っている。患者と医師の話の空間での雰囲気、間、顔色など、さまざまなものは総合的には対面をすることで医療者が得られる情報がより多いと思う。 
 かたや、オンラインが必要だというのは、今の感染状況のほか、そもそも病気を持って体力がない中、通院だけで1日終わってしまうという病院での待ち時間を含めて、体力的なダメージを考えると、対面を基本としながらも、必要時にはオンラインも織り交ぜ、体調が悪くなった時には、病院に行く予定であってもオンラインにという融通が利くと、またそれはありがたいと思っている。

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■ 重症度、医療・看護必要度等について
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 松井様は200床クラスの急性期病院を経営する立場で、重症度、医療・看護必要度について、現在のシミュレーションが現場感覚と大きな差を感じるということをおっしゃった。もう少し具体的に、どの辺がその現場感覚とのずれとお感じになっているのか、教えていただきたい。
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【松井道宣氏(京都九条病院理事長)】
 中医協で重症度、医療・看護必要度の見直しに関する検討が行われている。今回、特にA項目、B項目で削除される項目が示されているが、現場感覚で言うと、「心電図モニターの管理」が削除されるのは、われわれにとっては理解しにくいと率直に考えている。
 実は、こういう必要度の評価をこういう項目で評価されることに対しても少し違和感がある。 
 今回、コロナウイルス感染症を経験して、大変多くの示唆を得た。感染者は、軽症者、無症状者から重症者まで大変広いバリエーションを持っており、重症度によって、それぞれトリアージが行われた。すなわち、軽症や中等症と判断し、それに対応する医療機関に入院した患者が重症化したときには、高度医療機関への「上り搬送」が行われた。
 患者さんの病状というのは経時的に変化していくのだが、その経時的変化に対応するためには、実は高度医療機関に送る側の医療機関にも、その高度医療機関へつなげるための医療技術、あるいは資源、人材がやっぱり必要である。「高度医療」と「それ以外の医療」というふうに明確に分けることはやはりできない。医療の継続を考えた場合、この連続的な医療機能の評価というものが必要であると考える。それぞれの医療機関にそれぞれ十分な余力があってこそ、今回のような想定外の事態にも対応することができる。

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■ 病院の介護職員の処遇改善等について
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 山田様は看護補助者の必要性、特にタスクシフティングを進める意味での重要性に言及された。その中で、スキルや知識などの教育、やりがいやモチベーションを持ってもらうことも重要だとおっしゃった。
 一方で、処遇改善に関して、特に看護補助者の中で身体介護を担う介護職員などは介護保険上の介護保険施設では処遇改善交付金はかなり前からあり、一定程度、処遇が改善されてきた。そうした中で、病院の介護職との差がどんどんついている印象を持っている。特に慢性期ではそういう印象があり、採用がなかなか困難になってきている現状がある。
山田様の急性期病院では、介護職員の確保について、処遇の差によって採用が困難になってきている現状があるか、教えていただきたい。

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【山田佐登美氏(川崎医科大学総合医療センター看護部長付参与)】
 私の周辺を見ても、看護補助者の確保は、もうほぼ、どの医療機関も非常に困難を極めているのが現実である。対人業務であるし、急性期の医療機関に限らず、地域包括の回復期であっても慢性期であっても、疾病を持っていらっしゃる患者さんということで、何らかの医療、ケアを伴いながら生活支援をしていくのは非常にストレスフルである。医療や看護そのものがヒューマンサービスなので、医師、看護師、それからメディカルスタッフなど、たくさんの人と、いろんなコミュニケーションをとりながらやっていくのは非常に困難感があるが、その割にはそれに見合った処遇をされていない。
 私の病院は岡山県にあるが、西日本で一と言われるイオンができてから、ざっとそちらに雇用が流れてしまって、看護補助者を希望してくださる方が非常に激減した。
 病院として補助加算等を取得するのは、看護師の業務を緩和してタスクシフティングしていくことが目的だが、派遣会社にお願いすると、非常に費用がかかってしまい、加算とは全然見合わない状況になっていくジレンマも抱えながらやっている。
何もなくて処遇を良くするのではなく、処遇のエビデンスとなる教育が非常に重要ではないかなと思う。実際に、ある程度、専門的と言うと語弊があるが、通常の、いわゆる介助とは違った知識、スキルは非常に必要になってくると思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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