多剤投与の適正化、「ノウハウの普及も必要」 ── 医療保険部会で池端副会長
多剤投与の適正化に向け、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「必要な薬を使っている場合もあるので、いかに減らすことができるか、そのノウハウも必要ではないか」と指摘し、ガイドラインの普及啓発などを進める必要性を指摘した。厚生労働省の担当者は関連部局と連携を図る意向を示した。
厚労省は11月17日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第158回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。
今回のテーマは前回に引き続き医療保険制度改革について。厚労省は同日の部会に「医療費適正化計画の見直しについて」と題する資料を提示。その中で、多剤投与の適正化などの各論点について「見直しのポイント(案)」を挙げ、委員の意見を聴いた。
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目標実現につながるスピード感を
多剤投与の適正化について厚労省の担当者は「第3期では15種類以上を基準としているが、調剤報酬等で6種類以上という基準が用いられていることを踏まえて、取り組みの対象を広げてはどうか」と提案した。
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質疑で、藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は「重複投与・多剤投与の適正化、特定健診・特定保健指導は医療費適正化計画の柱として取り組んでいくべき」とし、「見直しのポイント案を速やかに実施し、可能であれば現行計画の目標実現につながるスピード感が必要」と述べた。
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6種類を超える必要な投薬もある
これに対し、猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「一律に6種類という線を引くのは現実的ではないので考え直していただきたい」と主張した。猪口委員はその理由として、複数の医療機関を受診している高齢者が多いことを挙げ、「その場合には6種類を超えて必要な投薬がされていると考えられる」と説明した。
渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)も猪口委員の意見に賛同し、「どれも必要な薬で減らせないケースがあるので、15種類を6種類にしたから一律に多剤投与の(適正化の)効果が得られるわけではないことに留意すべきではないか」と述べた。
池端副会長は、医薬・生活衛生局の検討会がまとめたガイドラインを紹介し、その活用を広げていく取り組みも同時に進めていく必要性を指摘した。
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保険者協議会への医療関係者の参画を促進
保険者と医療関係者との連携についても意見があった。厚労省は第4期(2024~29年度)に向けた見直し案として、「保険者協議会への医療関係者の参画を促進し、都道府県・保険者・医療関係者が協力して医療費適正化に取り組む場とする」としている。
これにより、計画の策定・実施主体である都道府県が目標達成に向けて実効性のある取り組みを実施できるよう目指す。
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質疑で、猪口委員は「医師会をはじめ医療関係者は保険者協議会に積極的に参画したいと考えている」とし、現状の問題点を指摘。「約半数の都道府県では医療関係者はオブザーバーで半数が構成員。オブザーバーでは意見を述べることがなかなか難しいので、ぜひとも正式な構成員としての参画をお願いしたい」と要望した。
池端副会長も「医師会関係者を保険者協議会の正式な委員にすることは全く同感」とした上で、保険者の代表として参加している医師国保について「できれば医療提供者側の立場としての参加も検討するように指導していただきたい」と求めた。
■ 多剤投与の適正化について
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15種類を6種類に広げる提案について、取り組みの対象を広げることはやぶさかではないが、ただ広げたからといって多剤投与等が減るわけではない。本当に必要な薬を10種類、15種類と使っている場合もあるので、いかに6種類に減らすことができるか、そのノウハウも必要ではないか。
この点、私も構成員として参加している医薬・生活衛生局の「高齢者医薬品適正使用検討会」では、多剤投与に関して「高齢者の医薬品適正使用の指針」の総論編と各論編を作成している。かなりいいものができていると私自身も感じているが、現状では十分に活用されていない。このようなガイドラインも使いながら重複投薬・多剤投与の適正化の取り組みを広げていくことも大事ではないか。ガイドラインの普及啓発もあわせて進めるべきであり、15種類を6種類に広げたからうまくいくものではないと思う。
そこで質問だが、医薬・生活衛生局等の取り組みとあわせて一緒に進めているのか、または、そうでないなら今後は進めていく可能性があるのかどうか、お聞きかせいただきたい。
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【厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長】
多剤投与について、現在は15種類以上を対象としているところを6種類以上とする。これは取り組みの対象を広げるという観点で提案している。
実際に、個々の患者さんに対して、どれぐらいのお薬が必要か、それは当然、個別の事情によるところがあると思う。そうした配慮のもとで実際の処方、調剤が行われるべきであることは言うまでもない。
そうした中で、多剤投与の適正化の観点から、減らせる部分がないかと働きかけをする対象として6剤以上にしてはどうかという提案である。
ただ、池端委員がおっしゃったとおり、実際にそれを具体的にどう行っていくかについては当然、ノウハウが必要になる。私どもは今、医薬・生活衛生局の検討会で作られているガイドラインと、この医療費適正化計画の取り組みにおいて必ずしも十分な連携ができていない部分もあろうかと思うので、今回、取り組みの対象を広げるのにあわせて、きちんと連携を図りながら進めてまいりたいと考えている。
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■ 保険者・医療関係者の連携について
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保険者協議会に医師会関係者がオブザーバーで入っているが、先ほど猪口委員もおっしゃったように、医師会関係者を保険者協議会の正式な委員にすることは私も全く同感であるので、ぜひお願いしたい。
一方で、正式なメンバーとして入っている医師国保は保険者の代表として参加している。それに関しても、できれば別の立場で、医療提供者側の立場というステークホルダーとしての参加も検討するように、ご指導いただけるとありがたい。
(取材・執筆=新井裕充)
2022年11月18日